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25 レティシアの幸せ-2
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※ビッキー視点
「まだレティシア会長はいらっしゃっていません。お急ぎなら、お屋敷のほうをお訪ねになってはいかがです? ここから歩いてもそれほど時間はかかりませんわ」
私はオックスリー商会の豪華な応接室で、異国から訪れた貴族の応対をしていた。
ただ者じゃないオーラに、やたら眩しいキラキラ顔面。ユリウス副会長と良い勝負ってところ。
「いや、ここで待たせてもらおう。私の名はエドワルドだ。レティシアなら知っている」
「エドワルド? ……それはまた、嫌な名前ですね」
思わず口走ってしまい、慌てて取り繕う。――ボスの最低前夫の名前が、オズワルドだったのよね。けれど、時すでに遅し。ばっちり聞こえていた。
「え? あぁ、確かにそうだな。なぜ、最低な奴と名前が似ているのだろうか? 私の正式な名はエドワルド・アルセイン・ド・ノルディアン。ミドルネームで呼んでくれないか?」
「は、はい。かしこまりました、エドワルド・アルセイン・ド・ノルディアン……ノルディアン? もしかして、ノルディアン国の大公でいらっしゃいますか?」
「あぁ、そうだ」
「失礼いたしました。すぐにレティシア会長を呼びに行かせますわ。あの方は私のすぐ隣のお屋敷に住んでいらっしゃって……あっ、いえ、余計なことでしたね。えぇっと、しばらくお待ちください!」
私は慌てて部下のひとりを秘書室から呼び寄せ、レティシア会長を迎えに向かわせた。
私はオックスリー大商会の秘書室長、ビッキー。最近、天使のような子を養子に迎えて、念願だった“お母さん”になったばかりだ。
その子――ルーファスはとっても賢いけど、好奇心の塊。少し前までは、緊張していたのか、それとも萎縮していたのか……子供らしい遊びもほとんどしなかった。
あんな最悪な環境で育てば、無理もないわよね。でも今は、私たちのたっぷりの愛を受け取って、すっかり子どもらしい無邪気さを取り戻してるのよ。
今も応接室に面した庭園で、地面をせっせと掘り返していた。
――もぐらでも見つけたのかしら? まさか蛇? いやいや、都会のど真ん中にそんなもの、いるはずがないんだけど。
「おや、こんなところに、幼い子供が……どこから紛れ込んできたんだろう? 母親はどうしたんだ?」
「母親は私ですわ! 最近養子に迎えたんです、天使のような子でして。レティシア様のご命令で一緒に連れてきているんです。毎日顔が見たいそうで……それに、社交性も育ててあげたいって。専属のお世話係もいるんですが、どこに行ったのかしら?」
「レティシアが可愛がっているのか? 親戚か何かか?」
「……前の夫のお子様です。オズワルド卿の……」
「……そうか。レティシアは強いな」
彼は静かにそう言い、感慨深げにルーファスを見つめた。ほんのり濡れたその瞳――まさか、ボスのことを案じて涙ぐんでいらっしゃる……?
ちょっと、待って。ちょっと待ってよ。
これって、最高かも!
ユリウス副会長は、ボスが大好き。でも、自分が8歳も年下ってだけで、ずっと悩んでて、告白できないでいるのよ。
あんなに素敵なんだから、自信持って当たってみればいいのに!
ボスはこの5年、本当によく頑張ったんだから。
そろそろ、幸せを掴んでもいいと思う。
女としての幸せを、ね!
よーし、この二人を張り合わせてみましょう!
どちらがボスに相応しいか、私がしっかり見極めてあげるんだから!
それからノルディアン大公がルーファスと会いたいと言うので、目の前にはなんとも素晴らしい光景が広がった。天使を抱っこする大天使様……って、なにこの絵面。
あぁもう、抱きしめ方まで完璧とか、反則すぎるでしょ……って感動してたその瞬間――
オックスリー大商会が誇る、我らがボス、レティシア会長のご登場よ。今日もほんと、ため息が出るほど麗しい……!
「まだレティシア会長はいらっしゃっていません。お急ぎなら、お屋敷のほうをお訪ねになってはいかがです? ここから歩いてもそれほど時間はかかりませんわ」
私はオックスリー商会の豪華な応接室で、異国から訪れた貴族の応対をしていた。
ただ者じゃないオーラに、やたら眩しいキラキラ顔面。ユリウス副会長と良い勝負ってところ。
「いや、ここで待たせてもらおう。私の名はエドワルドだ。レティシアなら知っている」
「エドワルド? ……それはまた、嫌な名前ですね」
思わず口走ってしまい、慌てて取り繕う。――ボスの最低前夫の名前が、オズワルドだったのよね。けれど、時すでに遅し。ばっちり聞こえていた。
「え? あぁ、確かにそうだな。なぜ、最低な奴と名前が似ているのだろうか? 私の正式な名はエドワルド・アルセイン・ド・ノルディアン。ミドルネームで呼んでくれないか?」
「は、はい。かしこまりました、エドワルド・アルセイン・ド・ノルディアン……ノルディアン? もしかして、ノルディアン国の大公でいらっしゃいますか?」
「あぁ、そうだ」
「失礼いたしました。すぐにレティシア会長を呼びに行かせますわ。あの方は私のすぐ隣のお屋敷に住んでいらっしゃって……あっ、いえ、余計なことでしたね。えぇっと、しばらくお待ちください!」
私は慌てて部下のひとりを秘書室から呼び寄せ、レティシア会長を迎えに向かわせた。
私はオックスリー大商会の秘書室長、ビッキー。最近、天使のような子を養子に迎えて、念願だった“お母さん”になったばかりだ。
その子――ルーファスはとっても賢いけど、好奇心の塊。少し前までは、緊張していたのか、それとも萎縮していたのか……子供らしい遊びもほとんどしなかった。
あんな最悪な環境で育てば、無理もないわよね。でも今は、私たちのたっぷりの愛を受け取って、すっかり子どもらしい無邪気さを取り戻してるのよ。
今も応接室に面した庭園で、地面をせっせと掘り返していた。
――もぐらでも見つけたのかしら? まさか蛇? いやいや、都会のど真ん中にそんなもの、いるはずがないんだけど。
「おや、こんなところに、幼い子供が……どこから紛れ込んできたんだろう? 母親はどうしたんだ?」
「母親は私ですわ! 最近養子に迎えたんです、天使のような子でして。レティシア様のご命令で一緒に連れてきているんです。毎日顔が見たいそうで……それに、社交性も育ててあげたいって。専属のお世話係もいるんですが、どこに行ったのかしら?」
「レティシアが可愛がっているのか? 親戚か何かか?」
「……前の夫のお子様です。オズワルド卿の……」
「……そうか。レティシアは強いな」
彼は静かにそう言い、感慨深げにルーファスを見つめた。ほんのり濡れたその瞳――まさか、ボスのことを案じて涙ぐんでいらっしゃる……?
ちょっと、待って。ちょっと待ってよ。
これって、最高かも!
ユリウス副会長は、ボスが大好き。でも、自分が8歳も年下ってだけで、ずっと悩んでて、告白できないでいるのよ。
あんなに素敵なんだから、自信持って当たってみればいいのに!
ボスはこの5年、本当によく頑張ったんだから。
そろそろ、幸せを掴んでもいいと思う。
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よーし、この二人を張り合わせてみましょう!
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それからノルディアン大公がルーファスと会いたいと言うので、目の前にはなんとも素晴らしい光景が広がった。天使を抱っこする大天使様……って、なにこの絵面。
あぁもう、抱きしめ方まで完璧とか、反則すぎるでしょ……って感動してたその瞬間――
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