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24 レティシアの幸せ-1
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離婚から5年。恋愛はもうこりごりだと感じ、私は商会の仕事に没頭してきた。おかげで業績は右肩上がり、新たな屋敷も構え、順風満帆の日々を送っている。
そんなある日、新たな取引先との交渉のため、温泉地として名高いエルダール温泉郷を訪れることになった。この地は近年、貴族や富裕層の間で人気が高まり、商会としても新たなビジネスチャンスを模索していた。
商談を終え、夕暮れの温泉街を一人で歩いていると、ふと目を引く存在があった。淡い水色の髪、左右で異なる瞳の色――片方が青、もう片方が金色。その特徴的な容姿は、私の幼少期の記憶を呼び起こした。
7歳の頃、あるパーティーで優しく接してくれた憧れの人、エドワルド様。家名は思い出せないが、確か遠い国の高位貴族だったはず。懐かしさと驚きが入り混じる中、私は思わず彼に声をかけた。
「エドワルド様……ですよね? お久しぶりです」
彼は一瞬驚いた様子を見せたが、すぐに微笑んだ。
「……レティシア嬢? まさかこんな場所で再会するとは」
私の銀髪とアメジスト色の瞳という特徴が、彼の記憶に残っていたのだろう。さらに、私の名前を覚えていてくれたことに、胸が温かくなった。
互いの近況を語り合ううち、エドワルド様が提案してくれた。
「もしお時間があれば、一緒に食事でもいかがですか?」
私は一瞬戸惑ったが、笑顔で応じた。
「えぇ、ぜひ」
夜、静かなエルダール亭で再会を祝う杯を交わした。柔らかな灯りがエドワルド様のオッドアイを美しく映し出し、思わずその神秘的な美しさに見惚れた。会話は弾み、過去の思い出や現在の仕事の話題で盛り上がる。
ふと、彼が優しい声で尋ねた。
「レティシア嬢は、確かルーベルト公爵と離婚されたんですよね? 当時の社交界はその話題で持ちきりでした。大変だったでしょう。そろそろ再婚はお考えにはならないのですか?」
私は少し驚きながらも、笑みを浮かべて答える。
「ええ、まぁ、懲りましたから。男性より帳簿の方が素直でいいんですの」
「そうでしたか……。私は良い縁がなくて、未だに独身なんです」
食事の終盤、エドワルド様が真剣な眼差しで私を見つめ、静かに言った。
「またお会いできるといいですね」
私は一瞬言葉を失ったが、微笑んで答える。
「そうですね……機会があれば」
途端にエドワルド様がシュンとなる。
――なにかいけないことでも言ったかしら?
だって、この方はこの国の人ではないもの。
滅多に会える方ではないと思ったのだけれど……
※エドワルドside(俯瞰視点)
静寂に包まれた書斎で、エドワルドは窓の外に広がる夜空を見上げていた。星々が瞬くその光景は、彼の心にある一人の女性の面影を鮮明に映し出す。彼女の名はレティシア。初めて出会ったあの日から、彼の心は彼女に囚われ続けていた。
「大公閣下、ついにレティシア様にお会いに行かれるのですね?」
背後から近侍の声が静かに響く。エドワルドは微かに頷き、窓辺から視線を外さずに答える。
「ああ、初めて彼女を見た瞬間、一目惚れした。父に婚約の申し入れを頼もうとしたが、彼女の幼馴染であるルーベルト公爵に先を越されてしまった」
その言葉には、過去の悔恨と未練が滲んでいた。
「まったく、不運でございましたね。大公閣下はその初恋を胸に秘めたまま、今も独身でいらっしゃる。そして、レティシア様は……」
近侍の言葉が途切れる。エドワルドは静かに手を挙げ、彼を制した。彼女が夫と姪の不倫により深く傷ついたことは、すでに知っている。だからこそ、彼女が立ち直るまでの時間を尊重し、5年もの間、距離を保ってきたのだ。
エドワルドは深く息を吸い込み、決意を新たにする。今こそ、彼女のもとへ向かう時だ。彼女の心が再び愛を受け入れる準備ができていることを願いながら。
「準備を整えてくれ。レティシアのいる国へ向かう。」
彼の声には、揺るぎない決意と希望が込められていた。
そんなある日、新たな取引先との交渉のため、温泉地として名高いエルダール温泉郷を訪れることになった。この地は近年、貴族や富裕層の間で人気が高まり、商会としても新たなビジネスチャンスを模索していた。
商談を終え、夕暮れの温泉街を一人で歩いていると、ふと目を引く存在があった。淡い水色の髪、左右で異なる瞳の色――片方が青、もう片方が金色。その特徴的な容姿は、私の幼少期の記憶を呼び起こした。
7歳の頃、あるパーティーで優しく接してくれた憧れの人、エドワルド様。家名は思い出せないが、確か遠い国の高位貴族だったはず。懐かしさと驚きが入り混じる中、私は思わず彼に声をかけた。
「エドワルド様……ですよね? お久しぶりです」
彼は一瞬驚いた様子を見せたが、すぐに微笑んだ。
「……レティシア嬢? まさかこんな場所で再会するとは」
私の銀髪とアメジスト色の瞳という特徴が、彼の記憶に残っていたのだろう。さらに、私の名前を覚えていてくれたことに、胸が温かくなった。
互いの近況を語り合ううち、エドワルド様が提案してくれた。
「もしお時間があれば、一緒に食事でもいかがですか?」
私は一瞬戸惑ったが、笑顔で応じた。
「えぇ、ぜひ」
夜、静かなエルダール亭で再会を祝う杯を交わした。柔らかな灯りがエドワルド様のオッドアイを美しく映し出し、思わずその神秘的な美しさに見惚れた。会話は弾み、過去の思い出や現在の仕事の話題で盛り上がる。
ふと、彼が優しい声で尋ねた。
「レティシア嬢は、確かルーベルト公爵と離婚されたんですよね? 当時の社交界はその話題で持ちきりでした。大変だったでしょう。そろそろ再婚はお考えにはならないのですか?」
私は少し驚きながらも、笑みを浮かべて答える。
「ええ、まぁ、懲りましたから。男性より帳簿の方が素直でいいんですの」
「そうでしたか……。私は良い縁がなくて、未だに独身なんです」
食事の終盤、エドワルド様が真剣な眼差しで私を見つめ、静かに言った。
「またお会いできるといいですね」
私は一瞬言葉を失ったが、微笑んで答える。
「そうですね……機会があれば」
途端にエドワルド様がシュンとなる。
――なにかいけないことでも言ったかしら?
だって、この方はこの国の人ではないもの。
滅多に会える方ではないと思ったのだけれど……
※エドワルドside(俯瞰視点)
静寂に包まれた書斎で、エドワルドは窓の外に広がる夜空を見上げていた。星々が瞬くその光景は、彼の心にある一人の女性の面影を鮮明に映し出す。彼女の名はレティシア。初めて出会ったあの日から、彼の心は彼女に囚われ続けていた。
「大公閣下、ついにレティシア様にお会いに行かれるのですね?」
背後から近侍の声が静かに響く。エドワルドは微かに頷き、窓辺から視線を外さずに答える。
「ああ、初めて彼女を見た瞬間、一目惚れした。父に婚約の申し入れを頼もうとしたが、彼女の幼馴染であるルーベルト公爵に先を越されてしまった」
その言葉には、過去の悔恨と未練が滲んでいた。
「まったく、不運でございましたね。大公閣下はその初恋を胸に秘めたまま、今も独身でいらっしゃる。そして、レティシア様は……」
近侍の言葉が途切れる。エドワルドは静かに手を挙げ、彼を制した。彼女が夫と姪の不倫により深く傷ついたことは、すでに知っている。だからこそ、彼女が立ち直るまでの時間を尊重し、5年もの間、距離を保ってきたのだ。
エドワルドは深く息を吸い込み、決意を新たにする。今こそ、彼女のもとへ向かう時だ。彼女の心が再び愛を受け入れる準備ができていることを願いながら。
「準備を整えてくれ。レティシアのいる国へ向かう。」
彼の声には、揺るぎない決意と希望が込められていた。
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