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4 これはミラクルですわ(女性客視点)/ 売り上げが落ちたのはなぜ?(オリバー・ウィンザー侯爵視点)
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ꕤ୭*女性客視点
まずはふっくらとしたお米に乗せられた鰻が一口大に切られていることに驚いた!
タレがつやつやと輝いて少し焦げ目のある鰻に香味野菜(白ネギ)をカリッと焦がしたものが乗せられていた。小皿には緑の塊と細かく刻んだ生の香味野菜(青ネギ)と茶色っぽい塊。そして小さなポットとスープ皿のような深い茶碗が添えられている。
「これってどうやって食べるのかしら?」
戸惑う私達に店員が丁寧に説明してくれた。
「はい、こちらはこのおしゃもじでこのお茶碗によそおって食べてくださいね。その際小皿の調味料をお好みで上に載せてお食べくださいませ。そしてこのポットにはお出汁がはいっておりますので、この刻んだ香味野菜と一緒にそそぎ上にこの緑の塊を乗せます。そしてこのスプーンでお召し上がりくださいませ」
「えぇ~~!! つまり、最初はこのお出汁を入れないでそのまま食べる。飽きたらいろいろ乗せて味変! さらにはお出汁をかけて形状自体を激変させる高等ワザでございますわね?」
「はい! その通りです。お客様のお好きなようにお味を変えて、この鰻ご飯をプロデュースするのです!」
「んまぁ! これこそミラクル! スーパーミラクルですわ! ところでミラクルって意味はなんだったかしらぁ? あぁ、奇跡だった。まさにぴったりね! さぁ、皆様頂きましょう!」
そして、一口ぱくり。うん、一口大にきった鰻はとても食べやすいし、焦げた部分がカリッと香ばしい。さらにはこの香味野菜(白ネギ)は油で揚げてあるわね? これがとても良いアクセント! なんて鰻に合うのかしら!
このパラパラしたピリっとくる粉末(山椒)もかけてみて、その舌にピリピリくる感覚を楽しんだ。さらにこの茶色の塊(柚胡椒)も少し乗せると柑橘系の爽やかな風味とピリッと感がこれまた、たまらない。
私は半分ほど夢中で食べると、今度は神妙な顔をして儀式に挑む。
「さぁ、皆様! いざ、このお出汁をうなちゃんご飯にかけましょうぞ!!」
「はぁーーい!!」
湯気が立つあつあつのお出汁をかけて緑の塊(わさび)を少しのせて香味野菜(青ネギ)を追加。スプーンですくって食べるとそこには、さきほどまでのカリッとした鰻様はいなくなったけれどそれ以上に新たな新境地に私を誘った。
「これはぁああああああ~~!! こうしてお出汁をかけても、少しも生臭くなくさらに別な食べ物に進化を遂げているわ!!」
私達はそのお出汁を余すところなくすすり、お漬物というものもたいらげ、満足感に浸っていた。ひと仕事終えた匠のように、私達は達成感に幸せの溜息をつくのだった。
なんの達成感って? それはこの極上の神からの贈り物である鰻様を最大限に美味しく食べられたという達成感に決まっているじゃない?
あぁ、神様、ここの元奥方エリザベート様に幸あれ!
「私はここに宣言しますわ! 皆様、エリザベート様特製ひつまぶしファンクラブを今から結成いたしますわ! この美味しい食べ物を全国に広めますわよ!」
こんな素晴らしく美味しいものは皆に教えて差し上げなくっちゃね! あぁ、早速私の娘にも教えなくては。私の娘はグルメ雑誌の編集長ですの。
☆彡★彡☆彡オリバー・ウィンザー侯爵視点
僕は若くて綺麗な新妻と可愛い赤子と莫大な利益を生む鰻店を手に入れた。前妻のエリザベートには悪いが仕方ないだろう?
僕達は結婚して2年も経つのに子供がなかったし、あんなに出しゃばりな女は嫌いだ。
しかし、不思議なことに順風満帆と思われた鰻屋だけれど、最近めっきり売り上げが落ちていた。なぜなんだ? 客のクレームもとても増えた。
「魚の骨、前は気にならなかったのに・・・・・・」
「客への接客態度が最悪」
「タレの味変わったよね?」
「焼き方が違う」
等など、たくさんの文句を客が言っては帰っていくとか。
エリザベートがマニュアル化したものは伝えてあるし、皆守っているはずなんだがなぜこんなクレームが来るんだろう?
僕はまだ元妻が鰻店を開店したことを知らなかったし、エリザベートがいかに優秀な鰻職人だったのかを知らなかったのだった。
そして起こった『小骨事件』はウィンザー侯爵家が経営する鰻店を追い詰めていった。
まずはふっくらとしたお米に乗せられた鰻が一口大に切られていることに驚いた!
タレがつやつやと輝いて少し焦げ目のある鰻に香味野菜(白ネギ)をカリッと焦がしたものが乗せられていた。小皿には緑の塊と細かく刻んだ生の香味野菜(青ネギ)と茶色っぽい塊。そして小さなポットとスープ皿のような深い茶碗が添えられている。
「これってどうやって食べるのかしら?」
戸惑う私達に店員が丁寧に説明してくれた。
「はい、こちらはこのおしゃもじでこのお茶碗によそおって食べてくださいね。その際小皿の調味料をお好みで上に載せてお食べくださいませ。そしてこのポットにはお出汁がはいっておりますので、この刻んだ香味野菜と一緒にそそぎ上にこの緑の塊を乗せます。そしてこのスプーンでお召し上がりくださいませ」
「えぇ~~!! つまり、最初はこのお出汁を入れないでそのまま食べる。飽きたらいろいろ乗せて味変! さらにはお出汁をかけて形状自体を激変させる高等ワザでございますわね?」
「はい! その通りです。お客様のお好きなようにお味を変えて、この鰻ご飯をプロデュースするのです!」
「んまぁ! これこそミラクル! スーパーミラクルですわ! ところでミラクルって意味はなんだったかしらぁ? あぁ、奇跡だった。まさにぴったりね! さぁ、皆様頂きましょう!」
そして、一口ぱくり。うん、一口大にきった鰻はとても食べやすいし、焦げた部分がカリッと香ばしい。さらにはこの香味野菜(白ネギ)は油で揚げてあるわね? これがとても良いアクセント! なんて鰻に合うのかしら!
このパラパラしたピリっとくる粉末(山椒)もかけてみて、その舌にピリピリくる感覚を楽しんだ。さらにこの茶色の塊(柚胡椒)も少し乗せると柑橘系の爽やかな風味とピリッと感がこれまた、たまらない。
私は半分ほど夢中で食べると、今度は神妙な顔をして儀式に挑む。
「さぁ、皆様! いざ、このお出汁をうなちゃんご飯にかけましょうぞ!!」
「はぁーーい!!」
湯気が立つあつあつのお出汁をかけて緑の塊(わさび)を少しのせて香味野菜(青ネギ)を追加。スプーンですくって食べるとそこには、さきほどまでのカリッとした鰻様はいなくなったけれどそれ以上に新たな新境地に私を誘った。
「これはぁああああああ~~!! こうしてお出汁をかけても、少しも生臭くなくさらに別な食べ物に進化を遂げているわ!!」
私達はそのお出汁を余すところなくすすり、お漬物というものもたいらげ、満足感に浸っていた。ひと仕事終えた匠のように、私達は達成感に幸せの溜息をつくのだった。
なんの達成感って? それはこの極上の神からの贈り物である鰻様を最大限に美味しく食べられたという達成感に決まっているじゃない?
あぁ、神様、ここの元奥方エリザベート様に幸あれ!
「私はここに宣言しますわ! 皆様、エリザベート様特製ひつまぶしファンクラブを今から結成いたしますわ! この美味しい食べ物を全国に広めますわよ!」
こんな素晴らしく美味しいものは皆に教えて差し上げなくっちゃね! あぁ、早速私の娘にも教えなくては。私の娘はグルメ雑誌の編集長ですの。
☆彡★彡☆彡オリバー・ウィンザー侯爵視点
僕は若くて綺麗な新妻と可愛い赤子と莫大な利益を生む鰻店を手に入れた。前妻のエリザベートには悪いが仕方ないだろう?
僕達は結婚して2年も経つのに子供がなかったし、あんなに出しゃばりな女は嫌いだ。
しかし、不思議なことに順風満帆と思われた鰻屋だけれど、最近めっきり売り上げが落ちていた。なぜなんだ? 客のクレームもとても増えた。
「魚の骨、前は気にならなかったのに・・・・・・」
「客への接客態度が最悪」
「タレの味変わったよね?」
「焼き方が違う」
等など、たくさんの文句を客が言っては帰っていくとか。
エリザベートがマニュアル化したものは伝えてあるし、皆守っているはずなんだがなぜこんなクレームが来るんだろう?
僕はまだ元妻が鰻店を開店したことを知らなかったし、エリザベートがいかに優秀な鰻職人だったのかを知らなかったのだった。
そして起こった『小骨事件』はウィンザー侯爵家が経営する鰻店を追い詰めていった。
応援ありがとうございます!
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