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リクエストー王太子のざまぁ
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※こちらは読者様のリクエストによる王太子のざまぁになります。
•───⋅⋆⁺‧₊☽⛦☾₊‧⁺⋆⋅───•
僕が連れてこられたのは、王都から遠く離れた山奥にぽつんと建つ修道院だった。
重たく黒ずんだ石造りの建物は、まるで何百年も前から誰にも手入れされていないかのように、壁一面に蔦が絡みついている。屋根はところどころ崩れかけ、塔の先端はひび割れ、窓という窓はすべて鉄格子。もはや修道院というより、ちょっとしたお化け屋敷である。
鉄の門には、かすかに王家の紋章が刻まれていたが、錆と汚れで判別不能。これが“王族の更生施設”とは誰が信じるだろうか。
風が吹けば扉がきぃ……と軋み、塔の上からはカラスの鳴き声が響く始末。どう考えても、反省する前に心が折れそうだ。
ここは“悔悟の修道院”。王家の中でも、とびきりの問題児だけが送り込まれるという、名ばかりの神聖な施設である。
そして僕――元・王太子リックが、今まさにその仲間入りを果たしたわけだ。
◆◇◆
靴を磨くなんて、生まれてこのかた一度もしたことがなかった。
けれど今では、修道士たちの泥まみれの靴を、朝もやの中でせっせと磨いている。
「リック坊、こっちも頼むぞ」
そんなふうに呼ばれるたび、奥歯をぎゅっと噛みしめる。
かつて“殿下”と呼ばれていた僕が、今は“坊”呼ばわりである。
この落差、もはや笑うしかない。いや、笑えないけど。
洗濯桶に手を突っ込み、皆の汗まみれのローブを一枚ずつ洗う。ブラシでこすり、泡だてて、すすいで、絞る。……指先はもう感覚がない。
浴室の床だって僕が磨く。どれだけこすっても、石の目地にこびりついた汚れはなかなか落ちてくれない。
かつてメイドたちに「そこ残ってるぞ」なんて偉そうに言っていた自分を、三回ぐらいしばきたい。
ちなみにこの修道院では、贖罪と労働は直に身をもって行うべきだとして、魔道具の使用は固く禁じられている。
食事は、全員が終わった後。
ぬるくなったスープに、固くなった黒パン。
椅子なんてもちろんない。石の床に座って、音を立てずに噛みしめる。
……味? そんなもの、最初からない。
そして何より、僕の首には銀の首飾りがある。
“悔恨の首輪”とかいう名前らしい。初めて聞いたときは笑った。
でも今は、笑えない。
誰もそのことを口にしない。でも、誰もが見ている。
まるで「ほら、この人がやらかした王太子ですよ~」とでも言うように。
これのせいで、生活魔法も使えないんだよ!
月に一度、叔父上に反省文を送る義務がある。
定型文にそって、誠意を込めた文をしたためる。
もちろん修道長のチェック入り。語尾ひとつ間違えれば書き直しだ。
筆を持つ手が震えるのは、字が下手だからじゃない。メンタルが死んでるからである。
……ほんとうに、ほんとうに、知らなかったんだ。
ブロッサムが、叔父上の思い人だったなんて。
まさか、あの冷血公爵と“毒仲間”として親交を深めていたとは。
ほんの軽い気持ちで、国外追放を言っただけだったのに――。
あの舞踏会の後、僕は父上にさんざん怒鳴られた。
今でも思い出すたび、胃が痛くなる。
「愚か者! ブランデン公爵を怒らせるとは! お前は死にたいのか? あいつはわしより身分が上、母親の身分がまるで違うのだ。本来なら、あいつが王位を継いでいた。しかし、王位はいらぬと、さっさと母方の生家を継いだ。つまりだ、その気になれば今すぐにでも、王位に就ける立場なのだぞ」
「え? 僕が王位継承権第一位ですよね?」
「そんなわけあるか! ブランデン公爵がお前より上だ」
……結果、王位継承権をはく奪された。あっさりと。
叔父上の婚約者に濡れ衣を着せようとした女を庇っただけで、まさか人生が詰むとは思わなかった。
しかも、あの場で急に婚約したばかりの“にわか婚約者”なのに、誰もそれを指摘しない。
今はもう、反省しかしていない。
誰もいない廊下で雑巾をしぼりながら、僕は激しく泣きじゃくっていた。
ちなみに、叔父上には「一生許さない」と言われている。
なんでも、ブロッサムは叔父上にとって“最愛”なんだそうだ。
「処刑されなかっただけ、ありがたいと思え」
修道院に送られる前、そう真顔で言われたときの恐怖は、今も忘れられない。
――誰か、夢だと言ってくれ。
僕は……生きているのが、つらいよぉ……。
•───⋅⋆⁺‧₊☽⛦☾₊‧⁺⋆⋅───•
ここまでお付き合いありがとうございました!
リック王太子には今後も、毎朝しっかり雑巾がけしてもらおうと思います(^^)
•───⋅⋆⁺‧₊☽⛦☾₊‧⁺⋆⋅───•
僕が連れてこられたのは、王都から遠く離れた山奥にぽつんと建つ修道院だった。
重たく黒ずんだ石造りの建物は、まるで何百年も前から誰にも手入れされていないかのように、壁一面に蔦が絡みついている。屋根はところどころ崩れかけ、塔の先端はひび割れ、窓という窓はすべて鉄格子。もはや修道院というより、ちょっとしたお化け屋敷である。
鉄の門には、かすかに王家の紋章が刻まれていたが、錆と汚れで判別不能。これが“王族の更生施設”とは誰が信じるだろうか。
風が吹けば扉がきぃ……と軋み、塔の上からはカラスの鳴き声が響く始末。どう考えても、反省する前に心が折れそうだ。
ここは“悔悟の修道院”。王家の中でも、とびきりの問題児だけが送り込まれるという、名ばかりの神聖な施設である。
そして僕――元・王太子リックが、今まさにその仲間入りを果たしたわけだ。
◆◇◆
靴を磨くなんて、生まれてこのかた一度もしたことがなかった。
けれど今では、修道士たちの泥まみれの靴を、朝もやの中でせっせと磨いている。
「リック坊、こっちも頼むぞ」
そんなふうに呼ばれるたび、奥歯をぎゅっと噛みしめる。
かつて“殿下”と呼ばれていた僕が、今は“坊”呼ばわりである。
この落差、もはや笑うしかない。いや、笑えないけど。
洗濯桶に手を突っ込み、皆の汗まみれのローブを一枚ずつ洗う。ブラシでこすり、泡だてて、すすいで、絞る。……指先はもう感覚がない。
浴室の床だって僕が磨く。どれだけこすっても、石の目地にこびりついた汚れはなかなか落ちてくれない。
かつてメイドたちに「そこ残ってるぞ」なんて偉そうに言っていた自分を、三回ぐらいしばきたい。
ちなみにこの修道院では、贖罪と労働は直に身をもって行うべきだとして、魔道具の使用は固く禁じられている。
食事は、全員が終わった後。
ぬるくなったスープに、固くなった黒パン。
椅子なんてもちろんない。石の床に座って、音を立てずに噛みしめる。
……味? そんなもの、最初からない。
そして何より、僕の首には銀の首飾りがある。
“悔恨の首輪”とかいう名前らしい。初めて聞いたときは笑った。
でも今は、笑えない。
誰もそのことを口にしない。でも、誰もが見ている。
まるで「ほら、この人がやらかした王太子ですよ~」とでも言うように。
これのせいで、生活魔法も使えないんだよ!
月に一度、叔父上に反省文を送る義務がある。
定型文にそって、誠意を込めた文をしたためる。
もちろん修道長のチェック入り。語尾ひとつ間違えれば書き直しだ。
筆を持つ手が震えるのは、字が下手だからじゃない。メンタルが死んでるからである。
……ほんとうに、ほんとうに、知らなかったんだ。
ブロッサムが、叔父上の思い人だったなんて。
まさか、あの冷血公爵と“毒仲間”として親交を深めていたとは。
ほんの軽い気持ちで、国外追放を言っただけだったのに――。
あの舞踏会の後、僕は父上にさんざん怒鳴られた。
今でも思い出すたび、胃が痛くなる。
「愚か者! ブランデン公爵を怒らせるとは! お前は死にたいのか? あいつはわしより身分が上、母親の身分がまるで違うのだ。本来なら、あいつが王位を継いでいた。しかし、王位はいらぬと、さっさと母方の生家を継いだ。つまりだ、その気になれば今すぐにでも、王位に就ける立場なのだぞ」
「え? 僕が王位継承権第一位ですよね?」
「そんなわけあるか! ブランデン公爵がお前より上だ」
……結果、王位継承権をはく奪された。あっさりと。
叔父上の婚約者に濡れ衣を着せようとした女を庇っただけで、まさか人生が詰むとは思わなかった。
しかも、あの場で急に婚約したばかりの“にわか婚約者”なのに、誰もそれを指摘しない。
今はもう、反省しかしていない。
誰もいない廊下で雑巾をしぼりながら、僕は激しく泣きじゃくっていた。
ちなみに、叔父上には「一生許さない」と言われている。
なんでも、ブロッサムは叔父上にとって“最愛”なんだそうだ。
「処刑されなかっただけ、ありがたいと思え」
修道院に送られる前、そう真顔で言われたときの恐怖は、今も忘れられない。
――誰か、夢だと言ってくれ。
僕は……生きているのが、つらいよぉ……。
•───⋅⋆⁺‧₊☽⛦☾₊‧⁺⋆⋅───•
ここまでお付き合いありがとうございました!
リック王太子には今後も、毎朝しっかり雑巾がけしてもらおうと思います(^^)
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