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バイオレット女王とノーラン・カルロス王太子の結婚式

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 空が抜けるような青さに澄み切り、空気すら清浄に感じられる日だった。私は、あのお婆様に仕立てていただいた淡い藤色のドレスをまとった。胸元と裾には縫い付けられた真珠が輝き、ティアラは亡くなったトリスタン王様の王妃様の形見のものにした。

 このドレスとティアラを身につけた時に、私にはお婆様の声が聞こえた気がした。

「最高の花嫁姿ですよ。バイオレットは、いつだって私の愛すべき大事な子です」  

 その言葉は、いつも言われていた言葉だ。『愛すべき大事な子』と言われて賢女王に育てられた私は幸せだ。

 各国から多くの王族達が集まり、私とノーラン様に敬意を払うなか、大聖堂をゆっくりと歩んでいく。この一歩、一歩に、私は大きな意味を感じた。

 必ず、自国のブロンディ王国を繁栄に導くこと。更に、カルロス王国の王太子妃としてすでに繁栄しているこの国をさらなる高みへと、ノーラン様と共に導いてみせると決意をするのだった。


「ここに、ブロンディ王国のバイオレット女王とカルロス王国の王太子の縁を結ぶものとする。永遠の繁栄と祝福を!」

「「「カルロス王国の太陽と月に忠誠を!!」」」  

「「「ブロンディ王国とカルロス王国に繁栄と祝福を!」」」

 多くの祝福の声が、大聖堂にこだまし、大聖堂の外では、民達が婚礼のパレードを見るために沿道に立っていた。

 私とノーラン様が、大聖堂から外に出てきたのをみとめると、民達が興奮して大合唱する。

「「「バイオレット女王様、万歳!!」」」


「「「ノーラン王太子様、万歳!!」」」


 私とノーラン様は、その民衆の前で、キスを軽くすると手を振ってその声援に答えた。


 けれど、その時に一つだけ思い出したことがあった。


「ねぇ、ノーラン様。そういえば、ジェイデン様ってどうなったのですか?」


「あぁ、ジェイデン・アドラーかい? 悪い子だ。あんな男のことをこんな時に思い出すなんて。バイオレットは知らなくていい。あいつは、きっと幸せになっているはずさ。さぁ、パレードを早く終わらせてしまおう。私のことしか考えられないように早く抱くとしよう」

 からかうようにおっしゃるノーラン様は、とても愛おしそうに私を見つめた。私は、朗らかに笑いながらノーラン様の腕にしっかりと抱きかかえられて、パレードの馬車に乗るのだった。




*:.。 。.:*・゚✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*

次回の更新では、バイオレットを裏切って、アリッサ王女を選んだジェイデン・アドラーがどうなったかがわかります。
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