14 / 19
追い詰められていくクリント-1
※クリントside
裁判は王宮内の「王家の裁定室」で厳粛に行われていた。大理石の床には深紅の絨毯が敷かれ、中央には玉座が据えられている。壁には王国の紋章が誇らしげに掲げられ、天井には正義の女神が天秤を掲げる姿が見事に描かれていた。その荘厳な空間には、どこか息を呑むような静寂が支配している。
傍聴席には貴族や重臣たちが厳しい表情を浮かべ、裁きの行方を見守っていた。列席者の間には緊張感が漂い、話し声一つ漏れない。時折、窓から差し込む陽光がきらめき、裁定室全体に厳かな雰囲気を与えている。
玉座に座する王が静かに口を開いた。
「さて、プリムローズ嬢の訴えによれば、クリント卿がレストン伯爵家の財産を横領したとのことだが、間違いないか?」
その声は威厳に満ち、空間全体に響き渡る。傍聴席の視線が一斉にクリントに注がれた。
クリントは背筋を伸ばし、冷静を装ったまま答える。
「とんでもない誤解です。金庫の中身や家財道具を持ち去ったのは家令ラリーとその仲間たちです。彼らが共謀し、すべてを奪い去ったのです。実際、彼らはすでに行方をくらましています」
その言葉には一切の迷いも見えず、むしろ余裕すら漂っていた。だが、傍らのプリムローズは毅然とした態度を崩さない。琥珀色の瞳に宿る強い決意が、彼女の口から紡がれる言葉に力を与えていた。
「伯父様は金庫の財産を盗み、家財を売却して私物化しました。そして、父には借金があったなどと嘘をつき、私から爵位を奪ったのです。これは父に対する侮辱罪であり詐欺に値しますわ」
クリント卿は嘲笑混じりに反論する。
「その証拠はどこにあるんだね? 盗みを働いたのはラリーたちだ。それに、弟に借金があったのは事実で、それを私が肩代わりしてやった。だが、プリムローズはその恩を忘れ、こうして私を貶めようとしている。まったく恩知らずとはこのことだ」
その言葉に一部の傍聴者たちが囁き始めるが、次の瞬間、プリムローズの隣に座っていた男が静かに笑みを浮かべた。
「恩知らず、とは自分のことを言っているのではないか?」
そう言ったのはアルバータスだった。プリムローズを助けるために、彼は一緒にこの裁定室に出向いたのだった。
「陛下、この男は明らかに嘘をついています。借金があったのは亡きレストン伯爵ではなく、クリント卿本人です。弟に借金を清算してもらった記録も残っていますし、証人もいます」
その言葉にクリントの顔色が変わる。だが、アルバータスは追い打ちをかけるように扉の方を見やり、毅然とした声で言い放った。
「証人を呼びます」
扉がゆっくりと開き、三人の男たちが堂々と入ってきた。彼らの姿を目にした瞬間、クリントの表情は蒼白になった。
「なぜ、今さらお前たちが……金は返したはずだ」
彼は震える声で呟いた。
証人たちは一様にクリントを見据え、事実を語り始めた。
「間違いなくクリント卿に金を貸しましたが、前レストン伯爵から返済を受けました」
「私も同様です。借金の返済はすべて前伯爵からいただきました」
「私はこの男から骨董品や家具を買い取りました。どれも高価なものばかりで、こちらに取引記録がございます」
証人たちはそれぞれの証拠書類を取り出し、国王に提出する。その光景を見たクリントは怒りに任せて声を荒げた。
「なぜ金を返したのに、こんな場に出てくるんだ! 骨董商のお前も、訳あり品だと知っていたはずだ!」
骨董商は冷静な表情で答えた。
「私は今日をもってこの仕事を辞めますし、共謀していたわけではありません。詳細を知らなかったと言えば、それで済む話です」
他の二人も淡々と続ける。
「俺たちも金貸し家業を辞める。だから、知っていることはすべて話すつもりだ」
アルバータスは冷たく言い放つ。
「弟に借金を肩代わりしてもらいながら、それだけでは飽き足らず地位と財産まで奪おうとするとは、浅ましい男だ」
クリントは言葉を失い、次の瞬間には声を荒げた。
「うるさい! 私の借金なんて関係ないだろう! 今は弟の借金の話をしているんだ!」
だが、その叫びを遮るように証人席から声が響いた。
「債権者のいない借金など、この世には存在しません」
その声の主は、クリントが闇に葬ったはずの家令ラリーだった。
ラリーの登場により、裁定室の空気は一気に張り詰め、クリントはその場に立ち尽くすほかなかった。
裁判は王宮内の「王家の裁定室」で厳粛に行われていた。大理石の床には深紅の絨毯が敷かれ、中央には玉座が据えられている。壁には王国の紋章が誇らしげに掲げられ、天井には正義の女神が天秤を掲げる姿が見事に描かれていた。その荘厳な空間には、どこか息を呑むような静寂が支配している。
傍聴席には貴族や重臣たちが厳しい表情を浮かべ、裁きの行方を見守っていた。列席者の間には緊張感が漂い、話し声一つ漏れない。時折、窓から差し込む陽光がきらめき、裁定室全体に厳かな雰囲気を与えている。
玉座に座する王が静かに口を開いた。
「さて、プリムローズ嬢の訴えによれば、クリント卿がレストン伯爵家の財産を横領したとのことだが、間違いないか?」
その声は威厳に満ち、空間全体に響き渡る。傍聴席の視線が一斉にクリントに注がれた。
クリントは背筋を伸ばし、冷静を装ったまま答える。
「とんでもない誤解です。金庫の中身や家財道具を持ち去ったのは家令ラリーとその仲間たちです。彼らが共謀し、すべてを奪い去ったのです。実際、彼らはすでに行方をくらましています」
その言葉には一切の迷いも見えず、むしろ余裕すら漂っていた。だが、傍らのプリムローズは毅然とした態度を崩さない。琥珀色の瞳に宿る強い決意が、彼女の口から紡がれる言葉に力を与えていた。
「伯父様は金庫の財産を盗み、家財を売却して私物化しました。そして、父には借金があったなどと嘘をつき、私から爵位を奪ったのです。これは父に対する侮辱罪であり詐欺に値しますわ」
クリント卿は嘲笑混じりに反論する。
「その証拠はどこにあるんだね? 盗みを働いたのはラリーたちだ。それに、弟に借金があったのは事実で、それを私が肩代わりしてやった。だが、プリムローズはその恩を忘れ、こうして私を貶めようとしている。まったく恩知らずとはこのことだ」
その言葉に一部の傍聴者たちが囁き始めるが、次の瞬間、プリムローズの隣に座っていた男が静かに笑みを浮かべた。
「恩知らず、とは自分のことを言っているのではないか?」
そう言ったのはアルバータスだった。プリムローズを助けるために、彼は一緒にこの裁定室に出向いたのだった。
「陛下、この男は明らかに嘘をついています。借金があったのは亡きレストン伯爵ではなく、クリント卿本人です。弟に借金を清算してもらった記録も残っていますし、証人もいます」
その言葉にクリントの顔色が変わる。だが、アルバータスは追い打ちをかけるように扉の方を見やり、毅然とした声で言い放った。
「証人を呼びます」
扉がゆっくりと開き、三人の男たちが堂々と入ってきた。彼らの姿を目にした瞬間、クリントの表情は蒼白になった。
「なぜ、今さらお前たちが……金は返したはずだ」
彼は震える声で呟いた。
証人たちは一様にクリントを見据え、事実を語り始めた。
「間違いなくクリント卿に金を貸しましたが、前レストン伯爵から返済を受けました」
「私も同様です。借金の返済はすべて前伯爵からいただきました」
「私はこの男から骨董品や家具を買い取りました。どれも高価なものばかりで、こちらに取引記録がございます」
証人たちはそれぞれの証拠書類を取り出し、国王に提出する。その光景を見たクリントは怒りに任せて声を荒げた。
「なぜ金を返したのに、こんな場に出てくるんだ! 骨董商のお前も、訳あり品だと知っていたはずだ!」
骨董商は冷静な表情で答えた。
「私は今日をもってこの仕事を辞めますし、共謀していたわけではありません。詳細を知らなかったと言えば、それで済む話です」
他の二人も淡々と続ける。
「俺たちも金貸し家業を辞める。だから、知っていることはすべて話すつもりだ」
アルバータスは冷たく言い放つ。
「弟に借金を肩代わりしてもらいながら、それだけでは飽き足らず地位と財産まで奪おうとするとは、浅ましい男だ」
クリントは言葉を失い、次の瞬間には声を荒げた。
「うるさい! 私の借金なんて関係ないだろう! 今は弟の借金の話をしているんだ!」
だが、その叫びを遮るように証人席から声が響いた。
「債権者のいない借金など、この世には存在しません」
その声の主は、クリントが闇に葬ったはずの家令ラリーだった。
ラリーの登場により、裁定室の空気は一気に張り詰め、クリントはその場に立ち尽くすほかなかった。
あなたにおすすめの小説
🥕おしどり夫婦として12年間の結婚生活を過ごしてきたが一波乱あり、妻は夫を誰かに譲りたくなるのだった。
設楽理沙
ライト文芸
2026.1.4 73話見直した際、瑛士の台詞《本音/懺悔》を加筆しました。😇
☘ 累計ポイント/ 200万pt 超えました。ありがとうございます。
―― 備忘録 ――
第8回ライト文芸大賞では大賞2位ではじまり2位で終了。 最高 57,392 pt
〃 24h/pt-1位ではじまり2位で終了。 最高 89,034 pt
◇ ◇ ◇ ◇
紳士的でいつだって私や私の両親にやさしくしてくれる
素敵な旦那さま・・だと思ってきたのに。
隠された夫の一面を知った日から、眞奈の苦悩が
始まる。
苦しくて、悲しくてもののすごく惨めで・・
消えてしまいたいと思う眞奈は小さな子供のように
大きな声で泣いた。
泣きながらも、よろけながらも、気がつけば
大地をしっかりと踏みしめていた。
そう、立ち止まってなんていられない。
☆-★-☆-★+☆-★-☆-★+☆-★-☆-★
2025.4.19☑~
こうして私は悪魔の誘惑に手を伸ばした
綴つづか
恋愛
何もかも病弱な妹に奪われる。両親の愛も、私がもらった宝物もーー婚約者ですらも。
伯爵家の嫡女であるルリアナは、婚約者の侯爵家次男ゼファーから婚約破棄を告げられる。病弱で天使のような妹のカリスタを抱き寄せながら、真実の愛を貫きたいというのだ。
ルリアナは、それを粛々と受け入れるほかなかった。
ゼファーとカリスタは、侯爵家より譲り受けた子爵領へと移り住み、幸せに暮らしていたらしいのだが。2年後、『病弱』な妹は、出産の際に命を落とす。
……その訃報にルリアナはひっそりと笑みを溢した。
妹に奪われてきた姉が巻き込まれた企みのお話。
他サイトにも掲載しています。※ジャンルに悩んで恋愛にしていますが、主人公に恋愛要素はありません。
〈完結〉前世と今世、合わせて2度目の白い結婚ですもの。場馴れしておりますわ。
ごろごろみかん。
ファンタジー
「これは白い結婚だ」
夫となったばかりの彼がそう言った瞬間、私は前世の記憶を取り戻した──。
元華族の令嬢、高階花恋は前世で白い結婚を言い渡され、失意のうちに死んでしまった。それを、思い出したのだ。前世の記憶を持つ今のカレンは、強かだ。
"カーター家の出戻り娘カレンは、貴族でありながら離婚歴がある。よっぽど性格に難がある、厄介な女に違いない"
「……なーんて言われているのは知っているけど、もういいわ!だって、私のこれからの人生には関係ないもの」
白魔術師カレンとして、お仕事頑張って、愛猫とハッピーライフを楽しみます!
☆恋愛→ファンタジーに変更しました
〈完結〉だってあなたは彼女が好きでしょう?
ごろごろみかん。
恋愛
「だってあなたは彼女が好きでしょう?」
その言葉に、私の婚約者は頷いて答えた。
「うん。僕は彼女を愛している。もちろん、きみのことも」
偽りの愛の終焉〜サレ妻アイナの冷徹な断罪〜
紅葉山参
恋愛
貧しいけれど、愛と笑顔に満ちた生活。それが、私(アイナ)が夫と築き上げた全てだと思っていた。築40年のボロアパートの一室。安いスーパーの食材。それでも、あの人の「愛してる」の言葉一つで、アイナは満たされていた。
しかし、些細な変化が、穏やかな日々にヒビを入れる。
私の配偶者の帰宅時間が遅くなった。仕事のメールだと誤魔化す、頻繁に確認されるスマートフォン。その違和感の正体が、アイナのすぐそばにいた。
近所に住むシンママのユリエ。彼女の愛らしい笑顔の裏に、私の全てを奪う魔女の顔が隠されていた。夫とユリエの、不貞の証拠を握ったアイナの心は、凍てつく怒りに支配される。
泣き崩れるだけの弱々しい妻は、もういない。
私は、彼と彼女が築いた「偽りの愛」を、社会的な地獄へと突き落とす、冷徹な復讐を誓う。一歩ずつ、緻密に、二人からすべてを奪い尽くす、断罪の物語。
報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を
さくたろう
恋愛
その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。
少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。
20話です。小説家になろう様でも公開中です。