（完結）「君を愛することはない」と言われて……

10 待ち合わせ場所に来ないクロエ（ハミルトン視点）

　クロエとのデートの際に、よく待ち合わせをしていた王宮近くの庭園の花々は、今を盛りに咲き乱れていた。空を見上げると、雲が薔薇色のぼかし模様になって空を染めていった。

　吸い寄せられるように、私は待ち合わせの目立たない場所に設置されたベンチに向かう。はやる気持ちを抑えるため、しばらくベンチにも座らずに立ったまま待っていた。

　すぐにでも、クロエがこの胸に飛び込んできそうな予感がしていた。だが、彼女はなかなか来ない。今日は来ないのかもしれない。明日なら来てくれるのだろうか？　なんて、もどかしいんだ。

（なぜ、クロエはこんなにも私をもてあそぶのだろう？）

　美しい女性の特権だな。男を振り回すことが許されるのは、クロエのような女性だけなのだ。二時間ほど待ってみたが、彼女は来なかった。私が結婚したことを怒っているのかもしれない。

　わかった！　こうして焦らして私の愛を試しているのかもしれない。なんて、可愛い女性だ。いいさ、私は貴女の望むように、また明日も明後日も毎日ここに来るよ！