(完結)「君を愛することはない」と言われて……

青空一夏

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20 オリビア様に害をなす者は許さない! (ラナ視点)

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 オリビアお嬢様とベンジャミン家に戻ったその夜のことだ。最初の門を守る門番の連絡が途絶えた。オリビア様を誘拐目的で賊がさらおうとすることは珍しくない。私達は戦うことに慣れている。

「ラナ、戦う準備はいい? ゾーイはオリビア様の側で待機して!」

 ベンジャミン家の騎士たちは当主夫妻とオリビア様を守るために周りを囲んでいる。でも、私とエマはこの部屋への侵入を賊に許すつもりはない。

(久しぶりの戦闘はわくわくするわぁーー)

 父さんはナイフ投げの名人だった。私も幼い頃からナイフを投げて遊んでいた。初めは練習用のナイフを木や壁に、ひたすら投げつけていた。やがて、それでは飽き足らなくなって、森に行くとウサギや鹿を狙ってナイフで仕留めるようになった。もちろん、ウサギや鹿は私達家族の夕食になったし、きちんとお祈りをして感謝しながら食べた。父さんはいろいろな芸をする者達を引き連れて、各地を移動する移動演芸団長だったのだ。

 ある日、近道をしようと暗い山に足を踏み入れた途端、山賊に襲われ私の両親と仲間たちは命を落とした。父や母と仲間たちが盾になってくれ、奇跡的に私だけが逃げられた。

 家族や仲間を失った私は深い悲しみと怒りに包まれた。家族としての暖かい時間が一瞬で奪われ、私の心は復讐に燃えた。それから、傭兵団への加入を決意し厳しい訓練を受ける。生きるためと復讐のためにナイフの腕と格闘技を、血を吐くほど練習した。

 やがて、私の名前を傭兵界では知らない者がいなくなるほど活躍し、ベンジャミン家にオリビア様の護衛として雇われた。侍女の服を着て、大事なオリビアお嬢様をお守りすることが私の仕事になった。

 オリビア様のいる場所が私の居場所になった。ベンジャミン当主夫妻もお嬢様も家族のように接してくれるこの居場所は温かく心地良い。
 だから、この場所を汚す者、そしてオリビア様に危害を加える者は、誰であろうと許さない。



 第2の門のあたりには、既に4人の騎士が気絶させられていた。後ろから男が襲ってくる気配に素早く蹴りをいれると、私は相手の喉仏に向かって鋭い突きをかます。賊はたった3人だった。エマはもう一人をあっという間に気絶させる。さすが、リーダー。あとの一人は情けないことに逃げようとしていた。

(このベンジャミン家に侵入しておいて、無傷で帰れると思わないでよぉーーー)

 私はスローイングナイフを、そいつの足を狙って投げた。男はあっけなく前のめりに倒れこむ。あのナイフにはゾーイが調合した痺れ薬がたっぷり塗ってあるのだ。

「お見事!」

 エマが褒めてくれて、私はちょっと得意げに微笑んだ。

「さぁ、この3人はゾーイに引き渡しましょう。誰の指図か吐かせないとね」

「了解」


 大元を絶たなければ、必ず次の侵入者が現れる。法で裁く方法もあるけれど抜け道が多すぎて、所詮トカゲの尻尾切りになってしまう。私達3人はオリビアお嬢様のためなら、いくらでも命を懸けられる。襲撃を指示した黒幕を倒しに行くわよ!
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