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21 あのばかめっ!(アレクサンダー視点)
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久しぶりにカリブ王国にやって来た。王宮で行われる行事に参加するために来たが、その前にハミルトンの様子でも見に行こうと思いたった。奥方を迎えたとは聞いていたが、まだ会ったことはなかった。
パリノ家に着くと、屋敷の方から女性たちが歩いて来た。淡いピンクのドレス姿の女性を守るように、三人の侍女たちがいた。
「失礼ですが、パリノ家の奥方ですか?」
「いいえ、奥方だったことは一度もありませんよ」
その美しい容姿よりも不思議な返答に驚いていると、彼女はさっさと馬車に乗って去って行った。顔に憂愁の影がさしていた女性。意味深な言葉とともに、なぜか俺の心に深く刻まれた。
会ったばかりの女性なのに。そして、もう二度と会うこともないかもしれないのに。
走り去った馬車の後に残された薄い生地を手に取ると、光沢のある滑らかなストールだった。俺は、そのストールをそっと手に取ったのだった。
サロンでハミルトンの顔を見たときに、おかしな魔法にかけられているとピンときた。義姉上もいらっしゃって、ハミルトンは別人だと取り乱していた。
まぁ、それはそうさ。人格も変わるし、言動もかなり変わってしまうことが多い魔法の一種。『魅了の魔法』によく似ているが、もう少し弱めだと思う。
魔法を解いてやると、王宮での儀式に参加するためにその場を後にした。うっかりしたことに、ストールまで自分の馬車に無意識に持ち込んでしまう。
王宮でもランドン公爵とそのご子息がハミルトンと同じような魔法にかかっていた。もちろん魔法は解いてやった。
☆彡 ★彡
翌日、ハミルトンの屋敷に行ってみると、パリノ家の騎士たちが賊5人を相手に戦っているところだった。急いで加勢したが、5人の賊達はなかなかの剣の使い手だった。おそらく、貴族が抱える騎士達でかなり訓練されている。
「アレクサンダー。こいつらは、アンドリュー・プレイデン侯爵に雇われた騎士だと思う。昨夜、私の妻の実家が襲われた」
5人の男達を捕らえ縄できつく縛り上げたところで、ハミルトンに事情を聞いていった。クロエ・ランドン公爵令嬢に操られていたハミルトンの愚かしい言動は聞くに堪えないものだった。俺は夫から数々の冷たい仕打ちを受けていたオリビアという女性に、同情以上のものを感じたのだった。
「ランドン公爵令嬢がアンドリューを操っているとしたら、彼女を捕らえて魔法を無効化し、裁判にかけよう。明日、王に直訴しプレイデン侯爵家に王立騎士団をおくるよう要請するよ。」
「いや、それだと時間がかかりすぎる。そのあいだに、クロエがカリブ王国から脱出してしまう可能性もある。それにプレイデン家はダイヤモンド鉱山も所有する金持ちだ。金にものをいわせて、今回の事件も握りつぶせるかもしれない」
「ハミルトン。君の気持ちもわかるが、王に報告するほうが先だ。カリブ王国には法律がある。それに、私がこの事件を握りつぶそうとする奴を許すと思うかい? 明日、一緒に陛下に会いに行こう」
ハミルトンにそう提案すると、パリノ家に泊まることにした。
☆
翌早朝、王宮に向かおうとハミルトンの部屋をノックしたが、返答はなかった。ドアを開けるとそこに、ハミルトンの姿はない。机には手紙が置かれていた。嫌な予感がする。
すまない。やはり、私はクロエをすぐにでも捕らえて、二度とオリビアに危害を加えることができないようにしたい。これが、オリビアの心を散々傷つけた私ができる唯一のことだと思うのだ。オリビアを襲わせたあの女は、私がこの手で捕らえなければならない。
こんな文面を残していたんだ。あのばかめっ!
パリノ家に着くと、屋敷の方から女性たちが歩いて来た。淡いピンクのドレス姿の女性を守るように、三人の侍女たちがいた。
「失礼ですが、パリノ家の奥方ですか?」
「いいえ、奥方だったことは一度もありませんよ」
その美しい容姿よりも不思議な返答に驚いていると、彼女はさっさと馬車に乗って去って行った。顔に憂愁の影がさしていた女性。意味深な言葉とともに、なぜか俺の心に深く刻まれた。
会ったばかりの女性なのに。そして、もう二度と会うこともないかもしれないのに。
走り去った馬車の後に残された薄い生地を手に取ると、光沢のある滑らかなストールだった。俺は、そのストールをそっと手に取ったのだった。
サロンでハミルトンの顔を見たときに、おかしな魔法にかけられているとピンときた。義姉上もいらっしゃって、ハミルトンは別人だと取り乱していた。
まぁ、それはそうさ。人格も変わるし、言動もかなり変わってしまうことが多い魔法の一種。『魅了の魔法』によく似ているが、もう少し弱めだと思う。
魔法を解いてやると、王宮での儀式に参加するためにその場を後にした。うっかりしたことに、ストールまで自分の馬車に無意識に持ち込んでしまう。
王宮でもランドン公爵とそのご子息がハミルトンと同じような魔法にかかっていた。もちろん魔法は解いてやった。
☆彡 ★彡
翌日、ハミルトンの屋敷に行ってみると、パリノ家の騎士たちが賊5人を相手に戦っているところだった。急いで加勢したが、5人の賊達はなかなかの剣の使い手だった。おそらく、貴族が抱える騎士達でかなり訓練されている。
「アレクサンダー。こいつらは、アンドリュー・プレイデン侯爵に雇われた騎士だと思う。昨夜、私の妻の実家が襲われた」
5人の男達を捕らえ縄できつく縛り上げたところで、ハミルトンに事情を聞いていった。クロエ・ランドン公爵令嬢に操られていたハミルトンの愚かしい言動は聞くに堪えないものだった。俺は夫から数々の冷たい仕打ちを受けていたオリビアという女性に、同情以上のものを感じたのだった。
「ランドン公爵令嬢がアンドリューを操っているとしたら、彼女を捕らえて魔法を無効化し、裁判にかけよう。明日、王に直訴しプレイデン侯爵家に王立騎士団をおくるよう要請するよ。」
「いや、それだと時間がかかりすぎる。そのあいだに、クロエがカリブ王国から脱出してしまう可能性もある。それにプレイデン家はダイヤモンド鉱山も所有する金持ちだ。金にものをいわせて、今回の事件も握りつぶせるかもしれない」
「ハミルトン。君の気持ちもわかるが、王に報告するほうが先だ。カリブ王国には法律がある。それに、私がこの事件を握りつぶそうとする奴を許すと思うかい? 明日、一緒に陛下に会いに行こう」
ハミルトンにそう提案すると、パリノ家に泊まることにした。
☆
翌早朝、王宮に向かおうとハミルトンの部屋をノックしたが、返答はなかった。ドアを開けるとそこに、ハミルトンの姿はない。机には手紙が置かれていた。嫌な予感がする。
すまない。やはり、私はクロエをすぐにでも捕らえて、二度とオリビアに危害を加えることができないようにしたい。これが、オリビアの心を散々傷つけた私ができる唯一のことだと思うのだ。オリビアを襲わせたあの女は、私がこの手で捕らえなければならない。
こんな文面を残していたんだ。あのばかめっ!
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お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。
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