(完結)「君を愛することはない」と言われて……

青空一夏

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22 オリビアの専属侍女がいた (ハミルトン視点)

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 パリノ公爵家にもプレイデン侯爵家の息のかかった者が差し向けられた。そもそも、なぜこのようなことになっているのかが、納得いかない。魔法をかけて騙そうとしたのはクロエのほうで、恨んでいるのは私のほうだ。オリビアだってクロエの魔法の被害者なのに、なぜ攻撃してくるのだろう?

 クロエの思考回路が怖すぎるし、プレイデン侯爵も野放しにはしておけない。アレクサンダーは国王陛下にまず話をして法律にのっとれと言った。どこまでも冷静で常識人なアレクサンダーには、融通のきかない頑固なところがあって困る。こんな時は一刻も早く手を打つべきなのに。
 
 所詮、あいつは他人事だから、そんな悠長なことを言っていられるんだと思う。自分の家族を襲われたりすれば、また違った結論になるはずさ。

 夜中にこっそり、騎士を数人引き連れてプレイデン侯爵家に向かった。門番を倒して忍び込めば、クロエの一人くらいは捕らえられると思っていた。だが、それは甘すぎる考えだったようだ。

 プレイデン侯爵邸は予想していたよりも遙かに厳重に守られていた。門には松明が灯され、十人以上のプレイデン侯爵家の騎士が武器を持って守っていた。相手が戦闘態勢のこの状況で数人の騎士しか伴っていない私は、生きて帰れるかもわからない。しかし、私は男だ。ここで引き返すわけにはいかない。

「さぁ、一気に切り込むぞ!!」
 私は連れてきた騎士たちに向かって号令をかけた。しかし、その号令に答えたのは、背後から響いた甘ったるい女性の声だった。

「あらぁ、なんで、ここに木偶の坊ちゃんがいるのかしらぁ?」

 ピンクの髪と瞳のオリビアの侍女ラナだった。エプロンドレスの腰に、びっしりスローイングナイフを収めた腰ベルトを巻いている。さらに、腹や背中にも大きめのナイフを収納したナイフホルダーを身につけていた。

 エマは騎士が使うより長めな2本の剣を両手に握りしめ、こちらは剣ナタを腰ベルトに何本もさげている。そして、その横にはゾーイが爆弾球を無数に詰めたチョッキを着て立っていた。こちらも、腰ベルトにはサバイバルナイフが、ぐるりと下がっている。

「なんだ、お前のその格好は? ここからは、戦場だぞ!」

 3人はニンマリしながら私に叫んだのだった。
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