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23 私を置いていかないでくれ(ハミルトン視点)

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「君たちの格好こそおかしいぞ! ナイフをびっしり身体に巻き付けたり、爆弾球をたくさん服に詰め込んだり、正気の沙汰じゃない。しかも、君たちは女性じゃないか」

「これが激しい戦闘になっても生き残るための正しい格好ですよ。実際は滅多に殺しませんよ。まずは、ゾーイが作った眠り玉を投げて眠らせますから。あの兵士達にも家族がいるでしょうからね。無駄な殺生はしない主義で、急所ははずします」

 エマが自分たちのポリシーを落ち着いた表情で語ると、ゾーイは慣れた手つきでチョッキに詰めた爆弾球を門に向かって転がした。一斉に門の兵士たちが倒れ、ここにまで睡眠を誘うようなラベンダーの優雅な香りが漂ってくる。

「あの小さい球は爆弾球じゃないのか? どう見ても手榴弾のような小さな爆弾球のようだが」

「ゾーイはおかしな物を作る天才だからねぇ。あれもゾーイ自慢の手作り武器なのよぉーー」

 ラナがナイフをもてあそびながらゾーイの自慢をした。可愛らしい顔だちのラナがナイフを持って笑っていると、屈強な男より恐怖が増すのはなぜだ? 威圧感が凄すぎる。

「さっき門に向かって転がしたのは強力な眠り玉だよ。いろいろな効きめがある玉をたくさん作ったさ。涙とくしゃみがとまらなくなる玉とか、思っていることを洗いざらい話してしまう玉とか、呼吸を三分間だけできなくする玉とかな。うふふ、私は基本的には平和主義なんだ」

 ゾーイが冗談みたいな玉の説明をするが、とても平和主義には聞こえない。ラナが言うように、おかしな物を作る天才なのはわかったが。

「私も、参加させてくれ。兵士達を引きつける」

「ダメですね。足手まといです。ゾーイ、ハミルトン様とその部下たちの手足を縛って」

「あいよ」

 ゾーイは腰に提げていたきんちゃく袋から、太い縄を何本も取り出し私たちを縛り始めた。

「頼むよ。私にも名誉挽回の機会をくれ。オリビアに私が反省している気持ちをわかってほしいんだ」

「ダメです! ここで怪我をしたり死なれたら、オリビア様の心が無駄に動揺します。もう、ハミルトン様はオリビア様の人生から退場した人なんですよ。今更、復活しようとしないでください!」

 エマはさも迷惑そうに顔を歪めた。

「その通りよぉ。オリビア様の同情を引くように、ここで怪我でもされたら迷惑ですよぉーー。オリビア様には新たな恋をして幸せになってもらうのですからぁ。」

「そうそう。だから、この香りを思いっきり吸い込め。ゆっくり寝てろよ」

 ゾーイが笑いながら、眠り玉を私の目の前にかざした。ゆっくりと意識が遠のき、身体が後ろに倒れていくのがわかる。エマがそんな私の身体を受け止め、ラナが膝掛けのようなものを上にかけてくれた。

 待って、待ってくれよ。こんな所で眠るためにアレクサンダーの意見を無視したんじゃないんだぞ。つっ、だめだ。眠い・・・・・・

 
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