(完結)「君を愛することはない」と言われて……

青空一夏

文字の大きさ
28 / 37

28 ハミルトンは女難なのか?(アレクサンダー視点)

しおりを挟む
「はっ? 弱みってどういう意味だい?」

「グレース姉上がアレクサンダーの兄上に肩身の狭い思いをするじゃないか。私はグレース姉上がイザリヤ侯爵家で居心地の悪い立場になるのは嫌なんだよ」

「ぶはっ。グレース義姉上が肩身の狭い思いをするだって? 冗談がきつすぎる。使用人からも慕われ、母には娘のように可愛がられ、兄上からは溺愛されているのだぞ。そんな心配はしなくていいから、自分の心配をしてくれよ。ハミルトンにもしものことがあったら、一番悲しむのはグレース義姉上だろう?」
 俺はため息をつきながらハミルトンに店長を引き受けるように説得した。人の親切は素直に受け取ったほうがいい。特にこんな場合は。


 まもなくハミルトンは離婚し、爵位はパリノ公爵家の一族の裕福な者に譲る形で金に換え、ベンジャミン男爵家への返済にあてられた。

 俺の店は「大魔道師の薬草・魔道具専門店ファンタズマルケット」という店名にした。かなり広い敷地で二階にハミルトンが住めるように住居付きの店にした。従業員の休憩所なども設置すれば、働きやすい職場として良い人材も集まるはずだ。

 ファンタズマルケットは洗練されたモダンなデザインが特徴の建物で、外観は光沢のある石材で作り、入口には高品質なガラスドアを設けた。扉の上にはスチール製の看板を掲げる。
 
 一歩店内に踏み入れると、広々とした空間が広がるようにした。天井を高くし窓から光が七色の色調で差し込むように魔法をかけた。棚には大小さまざまなガラス瓶が整然と並び、それぞれが異なる輝きを放つなか、ドラゴンの鱗、フェニックスの羽根、流れ星の粉など、多彩な魔法の材料を整然と陳列させた。カウンターの奥には、たくさんの魔法書を揃えた本棚もある。

 大きなガラス窓から店内が透けて見え、洗練された魔法材料店といった印象だったから、魔法学園に通う女生徒たちや魔法好きな女性たちのお気に入りの店になり、毎日のように女性客で賑わっていた。およそ、魔法に必要なものはここで揃えられる。

 私はこの店に定期的に立ち寄り、ハミルトンが真面目に働いているのを見るのだが、いつも女生徒にまとわりつかれていたし、オリビア嬢の専属侍女のゾーイの姿も頻繁に見かけた。
 ゾーイが通うのは純粋に魔法の材料や珍しい薬草の調達だと思うが、来るたびに決まった女生徒の数人を見かけるのは少々気になった。

 そろそろ、気を付けるように注意をしておこうと店を訪れたのだが、嫌な予感が的中したかのように、ハミルトンは女生徒ふたりに抱きつかれていた。

(おいおい、勘弁してくれよ。婚約者でない限り、これは店の信用問題だぞ)

 思わず俺はハミルトンを睨みつけていたし、後から来たゾーイは愉快そうに笑い転げていたのだった。



 ୨୧⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒୨୧
 ※夜にまた更新予定です。
 ※アレクサンダーの一人称が俺だったのを途中から私にしておりました。修正しました。申し訳ございません。まだ、直っていないところあるかも、アレクサンダーの兄の苗字も間違っていたので直しました。申し訳ございません。ポ、ポンコツすぎる作者です💦🙇‍♀️
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王太子妃は離婚したい

凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。 だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。 ※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。 綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。 これまで応援いただき、本当にありがとうございました。 レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。 https://www.regina-books.com/extra/login

あなたの愛が正しいわ

来須みかん
恋愛
旧題:あなたの愛が正しいわ~夫が私の悪口を言っていたので理想の妻になってあげたのに、どうしてそんな顔をするの?~  夫と一緒に訪れた夜会で、夫が男友達に私の悪口を言っているのを聞いてしまった。そのことをきっかけに、私は夫の理想の妻になることを決める。それまで夫を心の底から愛して尽くしていたけど、それがうっとうしかったそうだ。夫に付きまとうのをやめた私は、生まれ変わったように清々しい気分になっていた。  一方、夫は妻の変化に戸惑い、誤解があったことに気がつき、自分の今までの酷い態度を謝ったが、妻は美しい笑みを浮かべてこういった。 「いいえ、間違っていたのは私のほう。あなたの愛が正しいわ」

【書籍化決定】愛など初めからありませんが。

ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。 お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。 「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」 「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」 「……何を言っている?」 仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに? ✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。

〖完結〗旦那様が愛していたのは、私ではありませんでした……

藍川みいな
恋愛
「アナベル、俺と結婚して欲しい。」 大好きだったエルビン様に結婚を申し込まれ、私達は結婚しました。優しくて大好きなエルビン様と、幸せな日々を過ごしていたのですが…… ある日、お姉様とエルビン様が密会しているのを見てしまいました。 「アナベルと結婚したら、こうして君に会うことが出来ると思ったんだ。俺達は家族だから、怪しまれる心配なくこの邸に出入り出来るだろ?」 エルビン様はお姉様にそう言った後、愛してると囁いた。私は1度も、エルビン様に愛してると言われたことがありませんでした。 エルビン様は私ではなくお姉様を愛していたと知っても、私はエルビン様のことを愛していたのですが、ある事件がきっかけで、私の心はエルビン様から離れていく。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 かなり気分が悪い展開のお話が2話あるのですが、読まなくても本編の内容に影響ありません。(36話37話) 全44話で完結になります。

婚姻契約には愛情は含まれていません。 旦那様には愛人がいるのですから十分でしょう?

すもも
恋愛
伯爵令嬢エーファの最も嫌いなものは善人……そう思っていた。 人を救う事に生き甲斐を感じていた両親が、陥った罠によって借金まみれとなった我が家。 これでは領民が冬を越せない!! 善良で善人で、人に尽くすのが好きな両親は何の迷いもなくこう言った。 『エーファ、君の結婚が決まったんだよ!! 君が嫁ぐなら、お金をくれるそうだ!! 領民のために尽くすのは領主として当然の事。 多くの命が救えるなんて最高の幸福だろう。 それに公爵家に嫁げばお前も幸福になるに違いない。 これは全員が幸福になれる機会なんだ、当然嫁いでくれるよな?』 と……。 そして、夫となる男の屋敷にいたのは……三人の愛人だった。

全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。

彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。

【完結】あなたのいない世界、うふふ。

やまぐちこはる
恋愛
17歳のヨヌク子爵家令嬢アニエラは栗毛に栗色の瞳の穏やかな令嬢だった。近衛騎士で伯爵家三男、かつ騎士爵を賜るトーソルド・ロイリーと幼少から婚約しており、成人とともに政略的な結婚をした。 しかしトーソルドには恋人がおり、結婚式のあと、初夜を迎える前に出たまま戻ることもなく、一人ロイリー騎士爵家を切り盛りするはめになる。 とはいえ、アニエラにはさほどの不満はない。結婚前だって殆ど会うこともなかったのだから。 =========== 感想は一件づつ個別のお返事ができなくなっておりますが、有り難く拝読しております。 4万文字ほどの作品で、最終話まで予約投稿済です。お楽しみいただけましたら幸いでございます。

寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。

にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。 父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。 恋に浮かれて、剣を捨た。 コールと結婚をして初夜を迎えた。 リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。 ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。 結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。 混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。 もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと…… お読みいただき、ありがとうございます。 エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。 それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。

処理中です...