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34 オリビア、絶体絶命?
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「側妃に第2王子が生まれた頃から、私の周りで不思議なことが起きはじめた。側近が賊に襲われたり、侍女が毒殺されたり、乳母が病死する事件だ。信頼できる者たちと入れ替わって雇われた者から、私自身も火傷を負わされた。
「もしかして、そのような陰謀は側妃様の指図でしょうか?」
「証拠はないから断言はできない。しかし、私の大事な人たちが怪我をしたり、死ぬことは恐ろしかったよ。幼い頃に飼っていた子犬も二回死にかけて、結局はどこかに消えてしまった。側妃は恐ろしい女だし、アイザック第二王子も、なにをするかわからない」
「暗殺されないように”怠け者の愚かな男”を装っていたのですね? なんて、可哀想に。なぜ王妃殿下はオーウェン様を守ってくださらなかったのでしょう」
「多分、王太子になるにはこのような困難を乗り越える経験が必要だと信じているのだと思う」
「子供だったオーウェン様を守らなかったなんて、王妃殿下は間違っています! その頃に私が側で仕えていたのなら、いろいろお支えできたはずですわ。今からでも、私に甘えてください。」
それからというもの、オーウェン様は常に私を側に置きたがった。幼い頃に甘えられなかったから、きっと今はその反動がきているのだわ。最近、王宮の廊下を歩いていると、女官達が聞こえよがしに私を蔑む声も目立つようになった。
「はずれ王子のお気に入りが出仕してきたわね。どんな手を使ったのかしら?」
「あれだけの美貌ですからね。きっと・・・・・・、卑しい者はやることが下品だわーー」
「きっと、なんなのですか? おっしゃりたいことがあったら、私の目の前で堂々とおっしゃればいいのですわ。そうやって、私に聞こえるようにわざと悪口を言うほうが卑しくて下品だと思いませんか?」
「な、生意気な。たかが専属侍女の分際で、私は女官ですよ。オリビア様より身分は上ですっ!」
そう言った女官のドレスのスカートの裾に小さな炎がついた。慌てて消しながら去って行くけれど、私はエマに責めるような視線を向けた。
(女官が怪我をしたら大変なのに)
けれど、王宮の廊下ですれ違いざまにアイザック第二王子殿下が私の背中からお尻にかけてなで上げた時は、エマに全身こんがりと焼いても良いと思わず許可を出しそうになった。とりあえず、エマは火魔法でアイザック第二王子殿下のお尻に火をつけた。
「ん? なにか尻が温かいなぁ。っと、熱い、熱いぞ! 私のお尻が熱い! どうなっているのだ? ここは王宮で魔法封じの札が各所に貼られているのになんで」
確かに王宮には魔法を使えないようにする魔法封じの札がかかっている場所が多かった。でも私の三人の侍女ほどの実力だと、そんなものはただの紙切れと同じなのだった。
☆彡 ★彡
「ほら、オリビア。この肉は旨いぞ。口を開けろ。食べさせてやる」
(え?なんで?)
「ほら、あけて。あーーんしてごらん?」
「あーーん? モグモグ・・・・・・美味しいです。でも、なんで私は食べさせていただいているのでしょうか?」
こんがりと焼かれた鴨肉を差し出されモグモグと噛んでいたら、今度は野菜を食べさせようとしてくるのだけれど、いろいろおかしいと思う。
「専属侍女の仕事ってこんなことでしたっけ? 私のしていることと言えば、オーウェン様のお側にいてお話を聞いて、一緒に食事をしているだけなのですが」
「母上がオリビアに専属侍女になるように言ったのは、多分こういう意味もあるはずだから大丈夫だ。この国で一番の大富豪の娘でベンジャミン商会を継ぐオリビアを、ただの専属侍女にするはずがないだろう?」
「え? ということは、私はなにになるのでしょう? オーウェン様は好きですが、側妃とか愛妾にはなりたくありません!」
思わず叫びだしてしまった私はむせて、傍らに置いてあるグラスの水を一気に飲んだ。その途端に、汗がふきだし胸が苦しくなり、身体が小刻みに震えはじめた。
「愛妾? そんなわけないだろう? 私の妃にしたいだけだ。側妃なんて一生迎える気もないし。オリビア、震えている? そんなに嫌なのかい?」
「違います。身体が・・・・・・おかしいのです。息ができない・・・・・・? エマ・・・・・・ゾーイ・・・・・・ラナ・・・・・・たっ、助けて・・・・・・」
私はそこで意識を手放したのだった。
「もしかして、そのような陰謀は側妃様の指図でしょうか?」
「証拠はないから断言はできない。しかし、私の大事な人たちが怪我をしたり、死ぬことは恐ろしかったよ。幼い頃に飼っていた子犬も二回死にかけて、結局はどこかに消えてしまった。側妃は恐ろしい女だし、アイザック第二王子も、なにをするかわからない」
「暗殺されないように”怠け者の愚かな男”を装っていたのですね? なんて、可哀想に。なぜ王妃殿下はオーウェン様を守ってくださらなかったのでしょう」
「多分、王太子になるにはこのような困難を乗り越える経験が必要だと信じているのだと思う」
「子供だったオーウェン様を守らなかったなんて、王妃殿下は間違っています! その頃に私が側で仕えていたのなら、いろいろお支えできたはずですわ。今からでも、私に甘えてください。」
それからというもの、オーウェン様は常に私を側に置きたがった。幼い頃に甘えられなかったから、きっと今はその反動がきているのだわ。最近、王宮の廊下を歩いていると、女官達が聞こえよがしに私を蔑む声も目立つようになった。
「はずれ王子のお気に入りが出仕してきたわね。どんな手を使ったのかしら?」
「あれだけの美貌ですからね。きっと・・・・・・、卑しい者はやることが下品だわーー」
「きっと、なんなのですか? おっしゃりたいことがあったら、私の目の前で堂々とおっしゃればいいのですわ。そうやって、私に聞こえるようにわざと悪口を言うほうが卑しくて下品だと思いませんか?」
「な、生意気な。たかが専属侍女の分際で、私は女官ですよ。オリビア様より身分は上ですっ!」
そう言った女官のドレスのスカートの裾に小さな炎がついた。慌てて消しながら去って行くけれど、私はエマに責めるような視線を向けた。
(女官が怪我をしたら大変なのに)
けれど、王宮の廊下ですれ違いざまにアイザック第二王子殿下が私の背中からお尻にかけてなで上げた時は、エマに全身こんがりと焼いても良いと思わず許可を出しそうになった。とりあえず、エマは火魔法でアイザック第二王子殿下のお尻に火をつけた。
「ん? なにか尻が温かいなぁ。っと、熱い、熱いぞ! 私のお尻が熱い! どうなっているのだ? ここは王宮で魔法封じの札が各所に貼られているのになんで」
確かに王宮には魔法を使えないようにする魔法封じの札がかかっている場所が多かった。でも私の三人の侍女ほどの実力だと、そんなものはただの紙切れと同じなのだった。
☆彡 ★彡
「ほら、オリビア。この肉は旨いぞ。口を開けろ。食べさせてやる」
(え?なんで?)
「ほら、あけて。あーーんしてごらん?」
「あーーん? モグモグ・・・・・・美味しいです。でも、なんで私は食べさせていただいているのでしょうか?」
こんがりと焼かれた鴨肉を差し出されモグモグと噛んでいたら、今度は野菜を食べさせようとしてくるのだけれど、いろいろおかしいと思う。
「専属侍女の仕事ってこんなことでしたっけ? 私のしていることと言えば、オーウェン様のお側にいてお話を聞いて、一緒に食事をしているだけなのですが」
「母上がオリビアに専属侍女になるように言ったのは、多分こういう意味もあるはずだから大丈夫だ。この国で一番の大富豪の娘でベンジャミン商会を継ぐオリビアを、ただの専属侍女にするはずがないだろう?」
「え? ということは、私はなにになるのでしょう? オーウェン様は好きですが、側妃とか愛妾にはなりたくありません!」
思わず叫びだしてしまった私はむせて、傍らに置いてあるグラスの水を一気に飲んだ。その途端に、汗がふきだし胸が苦しくなり、身体が小刻みに震えはじめた。
「愛妾? そんなわけないだろう? 私の妃にしたいだけだ。側妃なんて一生迎える気もないし。オリビア、震えている? そんなに嫌なのかい?」
「違います。身体が・・・・・・おかしいのです。息ができない・・・・・・? エマ・・・・・・ゾーイ・・・・・・ラナ・・・・・・たっ、助けて・・・・・・」
私はそこで意識を手放したのだった。
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