(完結)「君を愛することはない」と言われて……

青空一夏

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35 アイザックが犯人か? (ゾーイ視点)

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 私たちの大切なお嬢様、オリビア様が突然倒れた。私は直ちに彼女の脈を確かめ、毒の症状を疑った。いつも携帯している毒の中和剤を彼女の口に含ませ、症状を抑えようとした。この中和剤は、どんな毒にも一時的に効果がある。しかし、毒の正体を特定し、適切な解毒剤を調合する必要がある。

「お嬢様を動かすな!何かを掛けて、そのままにしろ!すぐに調べて、必ず助ける!」
 私はエマたちに叫んだ。

 急いで、毒が含まれていると疑われる食物を検査した。私が開発した毒探知機は、並べられた食べ物には反応しなかったが、ほぼ空のグラスの水滴に反応を示した。私はスポイトで水滴を慎重に採取し、その成分を分析した。その結果に絶望が襲った。

「これは猛毒だ。すぐに全身に回ってしまうぞ」

 解毒に成功しても、身体に後遺症が残る可能性が高い。聖女並みの光の魔法を使える魔法使いでなければ、救えないかもしれない。

「大丈夫だ。オリビアを助ける。彼女の体に入り、毒を内部から打ち消す」
 オーウェン王子殿下が宣言した。

(まさか、『魂の交換』をするつもりか?そんなの、大魔道士でも難しいぞ…)

 オーウェン王子殿下の目には強い決意があり、オリビア様への深い愛情が感じられた。儀式を開始し、彼の魂とオリビア様の魂を交換する魔法を使い始めた。部屋は金色の光で満たされ、やがてオリビア様の体を包み込んでいった。

 閃光が一瞬部屋を照らし、その後、オーウェン王子殿下の姿がぼんやりとし、オリビア様が徐々に力を取り戻していくのが見て取れた。顔色は少しずつ良くなり、しばらくしてからゆっくりと目を開けた。

「ゾーイ、大丈夫よ」とオリビア様が言った。私は涙をこらえて、彼女の手を握り締めた。オリビア様の微笑みに、私の不安はすべて消えた。

 その後、オーウェン王子殿下の魂は彼の体に戻り、彼は疲れながらも満足げな表情を見せた。その後、オーウェン王子殿下とエマがオリビア様を客間に運び休ませた。



 私とラナは、毒を仕掛けた犯人を探すために動き始めた。宮廷内の陰謀かもしれないと思いながら、私たちは中庭のベンチに腰掛け、証拠を整理した。

「毒花は、見た目は綺麗だけど猛毒だ。国内での販売は禁止されてるはずだ。葉は魔法の材料になるけど、花の部分には毒があるんだ」

「そうなの? でも、どうやって宮廷に持ち込まれたのかしらぁーー?」
 ラナは深刻な表情で首を傾げた。


 私たちが話していると、ハミルトンが働くファンタズマルケットでよく見かけるアレクサンダーが、アイザック第二王子殿下と談笑しながら近づいてきた。彼らは何かを企んでいるように見えた。

「ゾーイ、いつもハミルトンの面倒を見てくれてありがとな」とアレクサンダーが言った。

 私は彼らに疑いの目を向けながらも、「おう、気にするな」と答えた。

 しかし、アレクサンダーから漂う「紫の嘆き」の香りが気になった。

「おい、お前から『紫の嘆き』の香りがするのは何でだ? あれは猛毒で、販売禁止されているだろう」

「ヴァイオレット ラメントか? 確かに猛毒だが、葉は魔法の材料にするから、店でも扱ってる。花の部分は切り落として売ってるけどな」とアレクサンダーが答えた。「叔母上があの花が好きで、たまに持ってくるんだ」

「叔母上って、誰のことだ?」私は聞いた。

「私の母上だよ」とアイザック第二王子が得意げに答えた。

 その態度に私はイライラした。アレクサンダーがオリビア様に毒を盛るようなことはしないだろうが、アレクサンダーから花を受け取った側妃が、オーウェン王子殿下のお気に入りであるオリビア様を狙う可能性は十分にある。

「おや、あの美人さんはどこかな?美人薄命って言葉は世界共通らしいね」とアイザック第二王子が言った。

 その言葉に私は怒りを感じ、戦闘態勢に入った。この男が犯人だと直感した。

 私が植物魔法を発動すると同時に、鋭いナイフがアイザック第二王子を狙った。それはラナではなく、オーウェン王子殿下が放ったものだった。

(オーウェン殿下はいつのまに後ろにきたんだ?)

「アイザック、お前は許さん。この手で殺してやるから覚悟しろ!」

「待て、アイザックには手を出させん。こいつは私の叔母上の息子だ」

 アレクサンダーが言い、オーウェン王子殿下と対峙した。二人は互いに睨み合い、緊張がピークに達していた。その時、オリビア様が姿を現した。絶妙のタイミングでホッとした。

「二人とも、そこまでです! オーウェン様、あなたは戦ってはいけません。怪我をしたり命を落としたら、誰が喜ぶと思います? そして、誰が悲しむのですか? 私を泣かせたいのですか?」オリビア様の言葉に、オーウェン王子殿下は怒りを抑え、彼女を抱きしめた。

 しかし、その瞬間、オーウェン王子殿下の背中に向けて四方からナイフが飛んできたのだった。

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