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2 居心地の悪い馬車の中
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「ねぇ、サマンサ様も行きたいですよねぇ? 皆で食べた方が、絶対美味しいと思うんです!」
マドレーヌは、可愛らしく小首を傾げて、さらにアンドリュー様に話しかけた。
「アンドリュー様、このあいだのテニスの試合は凄かったですね? 上級生を負かすなんて、さすがです」
ピンクブロンドに淡い水色の瞳には、誰も彼も虜にする魅力があるのだろうか?
マドレーヌの賞賛に顔を赤くするアンドリュー様を見て、私はさっきより、もっと沈んだ気持ちになった。
「マドレーヌ様。申し訳ないけれど、私は少しアンドリュー様とお話があるので、皆で一緒には行けませんわ」
私は、なるべく穏やかな声でマドレーヌに話しかけた。
「あ、ごめんなさい。私ったら、リリアン様と仲良くさせていただいて、舞い上がってしまって・・・・・・気を悪くされましたよね? 申し訳ありません。私、ずっと・・・・・・リリアン様に憧れていましたので・・・・・・」
マドレーヌが目に涙をいっぱい溜めて、私に震える声で謝罪すると、その場の空気が微妙に変化した。
「泣くことないのよ? ねぇ、リリアン! アンドリュー様とは婚約者なのだし、お話なんて後になさいよ。私もそのお店のケーキが食べたいし・・・・・・」
サマンサは、私を責めるような眼差しで見てきた。レイラもリアも、その意見に賛成のようだった。
アンドリュー様はというと、異論も唱えず、皆の意見に従うようだった。
「リリアン! 二人っきりの話は、別な時にしよう。明日も明後日も、私はリリアンと一緒にいられるのだから」
アンドリュー様の言葉に、がっかりしながらも、私は頷くしかなかった。
私達は、連れだって馬車に乗った。アンドリュー様の馬車に、皆で乗り込むと、マドレーヌは真っ先にアンドリュー様とサマンサの間に座った。
そこは、いつもは私が座る場所だったはずなのに・・・・・・
わざとなの? 偶然なの? 私が、またもやもやしていると、マドレーヌが私にいきなり謝ってきた。
「あ、ごめんなさい。リリアン様に睨まれてやっと気がつきました。この席はリリアン様が座りたかったでしょう?
申し訳ありません。私は、天然で・・・・・・ほんとに気が利かないんです。許してください!」
また、涙を流す。やめて、これ以上、私を悪者にしないで・・・・・・
「リリアン! 貴女、最近おかしいわよ? なぜ、マドレーヌに意地悪をするの? 皆で仲良くしましょうよ」
サマンサが私を責めると、マドレーヌはまた泣くのだった。
「いいんです・・・・・・私さえ、我慢すれば・・・・・・」
マドレーヌの言葉に、私は呆れるしかなかった。睨んでもいなければ、意地悪もしていない私は、どうすればいいのだろう?
マドレーヌは、可愛らしく小首を傾げて、さらにアンドリュー様に話しかけた。
「アンドリュー様、このあいだのテニスの試合は凄かったですね? 上級生を負かすなんて、さすがです」
ピンクブロンドに淡い水色の瞳には、誰も彼も虜にする魅力があるのだろうか?
マドレーヌの賞賛に顔を赤くするアンドリュー様を見て、私はさっきより、もっと沈んだ気持ちになった。
「マドレーヌ様。申し訳ないけれど、私は少しアンドリュー様とお話があるので、皆で一緒には行けませんわ」
私は、なるべく穏やかな声でマドレーヌに話しかけた。
「あ、ごめんなさい。私ったら、リリアン様と仲良くさせていただいて、舞い上がってしまって・・・・・・気を悪くされましたよね? 申し訳ありません。私、ずっと・・・・・・リリアン様に憧れていましたので・・・・・・」
マドレーヌが目に涙をいっぱい溜めて、私に震える声で謝罪すると、その場の空気が微妙に変化した。
「泣くことないのよ? ねぇ、リリアン! アンドリュー様とは婚約者なのだし、お話なんて後になさいよ。私もそのお店のケーキが食べたいし・・・・・・」
サマンサは、私を責めるような眼差しで見てきた。レイラもリアも、その意見に賛成のようだった。
アンドリュー様はというと、異論も唱えず、皆の意見に従うようだった。
「リリアン! 二人っきりの話は、別な時にしよう。明日も明後日も、私はリリアンと一緒にいられるのだから」
アンドリュー様の言葉に、がっかりしながらも、私は頷くしかなかった。
私達は、連れだって馬車に乗った。アンドリュー様の馬車に、皆で乗り込むと、マドレーヌは真っ先にアンドリュー様とサマンサの間に座った。
そこは、いつもは私が座る場所だったはずなのに・・・・・・
わざとなの? 偶然なの? 私が、またもやもやしていると、マドレーヌが私にいきなり謝ってきた。
「あ、ごめんなさい。リリアン様に睨まれてやっと気がつきました。この席はリリアン様が座りたかったでしょう?
申し訳ありません。私は、天然で・・・・・・ほんとに気が利かないんです。許してください!」
また、涙を流す。やめて、これ以上、私を悪者にしないで・・・・・・
「リリアン! 貴女、最近おかしいわよ? なぜ、マドレーヌに意地悪をするの? 皆で仲良くしましょうよ」
サマンサが私を責めると、マドレーヌはまた泣くのだった。
「いいんです・・・・・・私さえ、我慢すれば・・・・・・」
マドレーヌの言葉に、私は呆れるしかなかった。睨んでもいなければ、意地悪もしていない私は、どうすればいいのだろう?
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