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2 故イレーヌ王女殿下、怒る
ꕤ୭*アイビー視点
「アイビー、あんたにこの綺麗な花をあげるわ。枯らさないように育てなさいよ! それからこれが農薬。二週間に一回10倍に薄めて花にかけてね。この農薬は猛毒なのよ。数滴飲めばアイビーだって簡単に楽に死ねるのよ? だから、決して飲んではダメよ」
ミランダはそう言いながら、綺麗なピンクの瓶と可愛い花を私に手渡した。
花は大好きだから嬉しかったけれど、農薬はちょっと怖いと思った。でも、蓋を開けるとバニラの香りがして美味しそうだったし瓶もとても可愛い。
「あんたは、もう公爵令嬢じゃないのよ! メイドだってお母様が言ってたわ! だから、私のお部屋の掃除をお願いね! この私だけがオスカー公爵の娘なんだから」
ウィローに言われてお部屋を掃除する際、小さな花瓶を割ってしまった。それはどう見ても安い花瓶で、埃までかぶって部屋の隅に転がっていたものだ。けれど・・・・・・
「この花瓶はとても高価なものなのよ! なんてことをしてくれたのよ! あんたなんて生きている価値さえない。この花瓶以下の命なのに!」
ミランダはそう言いながら私を殴ったし、侍女長のアンナはニヤニヤしながらそれを見ていた。
「私はこの花瓶以下なの?」
泣きながらつぶやくと、
「当然です! アイビー様は”いらない子”なのですから!」
と、得意気に鼻を鳴らしたアンナ。
こんな仕打ちは今日だけではない・・・・・・毎日繰り返される言葉は『いらない子』や『厄介者』だ。
――お母様! 助けて! 助けてよぉ! アイビーはもう生きていたくないよ! ・・・・・・私が死んだらお父様も国王陛下も喜ぶの? この侍女達もミランダも、皆が幸せになるの? だったら、もうここで終わらせよう。
私はメイド部屋でその甘い毒薬を飲み干した。
「アイビー! アイビー! しっかりなさい! お母様よ」
とても美しい天使様が見える。綺麗で良い匂い。
――お母様、迎えに来てくださったんだわ! 良かった。もう辛くない。お母様のところに逝けるんだ。今まで生きていて1番嬉しいわ!
私は温かいほんわかしたものに包まれた。優しくて良い匂い。お母様の腕に抱かれているみたい! そこで私はそっと目を閉じる。もう目覚めたくなんかない。ここにずっといてふわふわと温かいものに守られていれば私はもう傷つくこともないもん。
ꕤ୭*故イレーヌ・エンジェル王女殿下視点
アイビーの身体に飛ぶ込むと、娘の記憶が私になだれ込んできた。
ーーこの記憶はなんなの! 侍女長のアンナですって! あっんの色キチガイ女め! 私がクビにしようとしていた女が、なぜ侍女長なんてやっているのよ! ミランダ? はぁーー? こいつは・・・・・・許さないわよ、お前達!
私はアイビーの意識に呼びかけたけれど、私の意識の奥底にうずくまって身体を丸めながら安心しきって眠っているのが見えた。
「悲しかったよね。あなたは”いらない子”なんかじゃないわ! 私の大事な娘よ。いいわ、ほんの少しだけ傷を癒やしていなさい。いつも話しかけてあげるし、1時間ごとに『愛している』と言ってあげましょうね」
さてと、早速手紙を夫とお兄様に書かなければね。ここにいる使用人達は皆敵か・・・・・・これは、隣人のサンジェルマン侯爵のとこの侍女に手紙を託すしかなさそうね。
ーーサンジェルマンは幼馴染みで、私の子分だったから言うことは聞くはずだけれど・・・・・・
いろいろ考えを巡らせていると耳障りな声がしてきたわ。
「アイビー! ちょっとサロンの床磨きをしときなさいよ! あのメイドと一緒に床に這いつくばって掃除しなさい!」
ミランダが私を呼びつける声だった。
「ふん! 平民の貧困街で育ったお前を拾ってメイドにしてやった主の恩を忘れたの? この無礼者が! 今度、そんな口をきいてご覧なさい。嫌って言うほどヒマシ油をその口に流し込んでやるわよ!」
ミランダは青ざめてぶるぶると身体を震わせた。この女は私がお情けで拾ってメイドとして可愛がっていた女じゃないの!
――ふっふふ。お前ごときに私の娘が虐められるとは・・・・・・
ꕤ୭*ミランダ視点
「ふん! 平民の貧困街で育ったお前を拾ってメイドにしてやった主の恩を忘れたの? この無礼者が! 今度、そんな口をきいてご覧なさい。嫌って言うほどヒマシ油をその口に流し込んでやるわよ!」
アイビーの口から、あり得ない方の言葉が出てきた。口調も、あの頭を高圧的にそらせて見下す眼差しも、イレーヌ王女殿下そのものだ。
あの方は10年も前に亡くなった。アイビーが私の素性を知っているはずがない! ちょっと虐めすぎて良心の呵責から、あのイレーヌ王女殿下のことを思い出しただけだわ。
ーーそうよ・・・・・・気のせい・・・・・・聞き間違いよ・・・・・・
「アイビー、あんたにこの綺麗な花をあげるわ。枯らさないように育てなさいよ! それからこれが農薬。二週間に一回10倍に薄めて花にかけてね。この農薬は猛毒なのよ。数滴飲めばアイビーだって簡単に楽に死ねるのよ? だから、決して飲んではダメよ」
ミランダはそう言いながら、綺麗なピンクの瓶と可愛い花を私に手渡した。
花は大好きだから嬉しかったけれど、農薬はちょっと怖いと思った。でも、蓋を開けるとバニラの香りがして美味しそうだったし瓶もとても可愛い。
「あんたは、もう公爵令嬢じゃないのよ! メイドだってお母様が言ってたわ! だから、私のお部屋の掃除をお願いね! この私だけがオスカー公爵の娘なんだから」
ウィローに言われてお部屋を掃除する際、小さな花瓶を割ってしまった。それはどう見ても安い花瓶で、埃までかぶって部屋の隅に転がっていたものだ。けれど・・・・・・
「この花瓶はとても高価なものなのよ! なんてことをしてくれたのよ! あんたなんて生きている価値さえない。この花瓶以下の命なのに!」
ミランダはそう言いながら私を殴ったし、侍女長のアンナはニヤニヤしながらそれを見ていた。
「私はこの花瓶以下なの?」
泣きながらつぶやくと、
「当然です! アイビー様は”いらない子”なのですから!」
と、得意気に鼻を鳴らしたアンナ。
こんな仕打ちは今日だけではない・・・・・・毎日繰り返される言葉は『いらない子』や『厄介者』だ。
――お母様! 助けて! 助けてよぉ! アイビーはもう生きていたくないよ! ・・・・・・私が死んだらお父様も国王陛下も喜ぶの? この侍女達もミランダも、皆が幸せになるの? だったら、もうここで終わらせよう。
私はメイド部屋でその甘い毒薬を飲み干した。
「アイビー! アイビー! しっかりなさい! お母様よ」
とても美しい天使様が見える。綺麗で良い匂い。
――お母様、迎えに来てくださったんだわ! 良かった。もう辛くない。お母様のところに逝けるんだ。今まで生きていて1番嬉しいわ!
私は温かいほんわかしたものに包まれた。優しくて良い匂い。お母様の腕に抱かれているみたい! そこで私はそっと目を閉じる。もう目覚めたくなんかない。ここにずっといてふわふわと温かいものに守られていれば私はもう傷つくこともないもん。
ꕤ୭*故イレーヌ・エンジェル王女殿下視点
アイビーの身体に飛ぶ込むと、娘の記憶が私になだれ込んできた。
ーーこの記憶はなんなの! 侍女長のアンナですって! あっんの色キチガイ女め! 私がクビにしようとしていた女が、なぜ侍女長なんてやっているのよ! ミランダ? はぁーー? こいつは・・・・・・許さないわよ、お前達!
私はアイビーの意識に呼びかけたけれど、私の意識の奥底にうずくまって身体を丸めながら安心しきって眠っているのが見えた。
「悲しかったよね。あなたは”いらない子”なんかじゃないわ! 私の大事な娘よ。いいわ、ほんの少しだけ傷を癒やしていなさい。いつも話しかけてあげるし、1時間ごとに『愛している』と言ってあげましょうね」
さてと、早速手紙を夫とお兄様に書かなければね。ここにいる使用人達は皆敵か・・・・・・これは、隣人のサンジェルマン侯爵のとこの侍女に手紙を託すしかなさそうね。
ーーサンジェルマンは幼馴染みで、私の子分だったから言うことは聞くはずだけれど・・・・・・
いろいろ考えを巡らせていると耳障りな声がしてきたわ。
「アイビー! ちょっとサロンの床磨きをしときなさいよ! あのメイドと一緒に床に這いつくばって掃除しなさい!」
ミランダが私を呼びつける声だった。
「ふん! 平民の貧困街で育ったお前を拾ってメイドにしてやった主の恩を忘れたの? この無礼者が! 今度、そんな口をきいてご覧なさい。嫌って言うほどヒマシ油をその口に流し込んでやるわよ!」
ミランダは青ざめてぶるぶると身体を震わせた。この女は私がお情けで拾ってメイドとして可愛がっていた女じゃないの!
――ふっふふ。お前ごときに私の娘が虐められるとは・・・・・・
ꕤ୭*ミランダ視点
「ふん! 平民の貧困街で育ったお前を拾ってメイドにしてやった主の恩を忘れたの? この無礼者が! 今度、そんな口をきいてご覧なさい。嫌って言うほどヒマシ油をその口に流し込んでやるわよ!」
アイビーの口から、あり得ない方の言葉が出てきた。口調も、あの頭を高圧的にそらせて見下す眼差しも、イレーヌ王女殿下そのものだ。
あの方は10年も前に亡くなった。アイビーが私の素性を知っているはずがない! ちょっと虐めすぎて良心の呵責から、あのイレーヌ王女殿下のことを思い出しただけだわ。
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