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6 エリック・オスカー公爵視点 / アンナ視点
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私の妻はイレーヌ・エンジェル王女殿下。聡明でありながら美しく規格外の才能と強い精神力の持ち主だった。
まさに理想で最愛の女性を失い、子供さえ産ませなければ今でも生きていたに違いないと思うと、その元凶になった自分自身が許せなかった。
「お前が悪い! イレーヌは死ぬはずがないんだ! お前などに嫁がせなければまだ元気で妹は生きていたんだ! 隣国の王にも正妃に望まれていたのに! まったく、妹はなぜお前がよかったんだろうな? あれだけの女傑も男を選ぶ目だけはなかった!」
義理の兄のエドワード・エンジェル国王陛下は怒り狂い、王都で恐ろしい量の仕事を押しつけてきた。
あのイレーヌがお産ごときで死ぬなんて思わなかった。あんなに元気だったのに・・・・・・だから、その子供を見るのが恐ろしかった。最愛の女性を奪った子供! 自分の手で殺すかもしれない。
だから、膨大な仕事にも感謝さえしたよ。これに没頭していれば余計なことは考えなくて済む。
もちろん誕生日ごとにたくさんのプレゼントを贈り、必要なものはなんでも揃えるように侍女達には伝えた。
イレーヌが隣国に留学させた侍女アンナが、よくアイビーの世話をしているのもありがたいことだった。
7歳の頃、アイビーから突然手紙がくるようになった。
お父さまへ
いただいたドレスの色がじみです。あんなの、きられません! ピカピカひかる石のほうがいいもん。
お父さまには会いたくないから、りょうちにもどって来ないでね!
プレゼントの不満だけは書いて寄こし、お礼は一切いわない子に育った。アンナを母親のように思っているようだ。
しかし、さきほど届いた手紙には、
お父様、なぜ私を嫌うのですか? 私は生きていてはいけないの? 誕生日カードもいただいたこともなく、会いにもきてくださらないのはなぜですか?
封筒の裏には、
昔、偽聖女様に騙された救いようのないおバカさんは誰だっけ? それを救ってやったのは?
この言い回しは・・・・・・イヌ?
「おい! オスカー公爵領に帰る! はやくしろ! 一刻を争う」
ꕤ୭*アンナ視点
「お前はなぜそうなの? いつも思い込みで男ばかり追い回して!」
「誤解です! だって、あの子爵様は私を愛しているんです!」
「だからそれが誤解だってば! アーマド子爵には婚約者がいるのよ。嘘をついて馬小屋に呼びつけて、いったいなにをするつもりだったのよ!」
「それはきっと無理矢理に婚約させられたんですわ! 私のほうが彼を愛していますから・・・・・・」
「もぉ、いいわ! お前は隣国の有名な精神病院でしばらく治療してちょうだい。適切な治療を受けてまた治ったら復帰しなさい。周囲には留学とでも言っておくわ! 公爵家の侍女が精神病院に入ったなんて公にできないもの」
――王女め! 私の頭はおかしくない! アーマド子爵は私をかわいいと言った。これは、まぎれもない真実の愛なのに・・・・・・
隣国の精神病院に入院させられた私は、薬を飲まされカウンセリングを受けこの恋を諦めるように言われた。
「いいですか? 相手から『好きだ。愛している。付き合ってください』ここまで言われたらそれはあなたの恋人です。なにひとつ言われていないのに、つきまとったらストーカー。わかりますか? この違い」
「言われなくても目の色でわかりますよ? 私は感受性が豊かですから」
「あぁーー違う、違う! それは思い込みというやつで・・・・・・」
頭をかきむしりながら、なおも私を洗脳しようとする医師に私は嫌悪感しかない。
そんな時、救世主が現れた。とても身分の高そうな全てがひざまずく存在。その病院にいる全てが臣下の礼をとっていた。
「あぁ、アンナ! かわいそーに。君が本当に好きだった相手はアーマド子爵じゃないよね?」
美しいその蒼い瞳が私を捕らえる。
ーー素直になれ! 本当に欲しいものに忠実になっていいんだ。そう言われている気がするわ。
「・・・・・・旦那様です。エリック・オスカー公爵にずっと憧れていました」
「だよねぇーー。そしたらさぁ、どうしたらオスカー公爵が自分のもになるか考えてごらんよ? 誰がいなくなればいいんだろうね?」
――私はやっと人生の指針を見いだした。
まさに理想で最愛の女性を失い、子供さえ産ませなければ今でも生きていたに違いないと思うと、その元凶になった自分自身が許せなかった。
「お前が悪い! イレーヌは死ぬはずがないんだ! お前などに嫁がせなければまだ元気で妹は生きていたんだ! 隣国の王にも正妃に望まれていたのに! まったく、妹はなぜお前がよかったんだろうな? あれだけの女傑も男を選ぶ目だけはなかった!」
義理の兄のエドワード・エンジェル国王陛下は怒り狂い、王都で恐ろしい量の仕事を押しつけてきた。
あのイレーヌがお産ごときで死ぬなんて思わなかった。あんなに元気だったのに・・・・・・だから、その子供を見るのが恐ろしかった。最愛の女性を奪った子供! 自分の手で殺すかもしれない。
だから、膨大な仕事にも感謝さえしたよ。これに没頭していれば余計なことは考えなくて済む。
もちろん誕生日ごとにたくさんのプレゼントを贈り、必要なものはなんでも揃えるように侍女達には伝えた。
イレーヌが隣国に留学させた侍女アンナが、よくアイビーの世話をしているのもありがたいことだった。
7歳の頃、アイビーから突然手紙がくるようになった。
お父さまへ
いただいたドレスの色がじみです。あんなの、きられません! ピカピカひかる石のほうがいいもん。
お父さまには会いたくないから、りょうちにもどって来ないでね!
プレゼントの不満だけは書いて寄こし、お礼は一切いわない子に育った。アンナを母親のように思っているようだ。
しかし、さきほど届いた手紙には、
お父様、なぜ私を嫌うのですか? 私は生きていてはいけないの? 誕生日カードもいただいたこともなく、会いにもきてくださらないのはなぜですか?
封筒の裏には、
昔、偽聖女様に騙された救いようのないおバカさんは誰だっけ? それを救ってやったのは?
この言い回しは・・・・・・イヌ?
「おい! オスカー公爵領に帰る! はやくしろ! 一刻を争う」
ꕤ୭*アンナ視点
「お前はなぜそうなの? いつも思い込みで男ばかり追い回して!」
「誤解です! だって、あの子爵様は私を愛しているんです!」
「だからそれが誤解だってば! アーマド子爵には婚約者がいるのよ。嘘をついて馬小屋に呼びつけて、いったいなにをするつもりだったのよ!」
「それはきっと無理矢理に婚約させられたんですわ! 私のほうが彼を愛していますから・・・・・・」
「もぉ、いいわ! お前は隣国の有名な精神病院でしばらく治療してちょうだい。適切な治療を受けてまた治ったら復帰しなさい。周囲には留学とでも言っておくわ! 公爵家の侍女が精神病院に入ったなんて公にできないもの」
――王女め! 私の頭はおかしくない! アーマド子爵は私をかわいいと言った。これは、まぎれもない真実の愛なのに・・・・・・
隣国の精神病院に入院させられた私は、薬を飲まされカウンセリングを受けこの恋を諦めるように言われた。
「いいですか? 相手から『好きだ。愛している。付き合ってください』ここまで言われたらそれはあなたの恋人です。なにひとつ言われていないのに、つきまとったらストーカー。わかりますか? この違い」
「言われなくても目の色でわかりますよ? 私は感受性が豊かですから」
「あぁーー違う、違う! それは思い込みというやつで・・・・・・」
頭をかきむしりながら、なおも私を洗脳しようとする医師に私は嫌悪感しかない。
そんな時、救世主が現れた。とても身分の高そうな全てがひざまずく存在。その病院にいる全てが臣下の礼をとっていた。
「あぁ、アンナ! かわいそーに。君が本当に好きだった相手はアーマド子爵じゃないよね?」
美しいその蒼い瞳が私を捕らえる。
ーー素直になれ! 本当に欲しいものに忠実になっていいんだ。そう言われている気がするわ。
「・・・・・・旦那様です。エリック・オスカー公爵にずっと憧れていました」
「だよねぇーー。そしたらさぁ、どうしたらオスカー公爵が自分のもになるか考えてごらんよ? 誰がいなくなればいいんだろうね?」
――私はやっと人生の指針を見いだした。
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