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8 マージ視点
(マージ視点)
「マージ。領地に戻るようにご両親からお手紙が来ていますよ。なんでもあなたの結婚が決まったそうです」
「はい? 結婚ですか? そのようなことは初耳ですが・・・・・・」
私は急ぎドゥルイット伯爵領に戻ったけれど、執務室でのお父様は烈火のごとく怒っていた。
「お前はマッキン侯爵家とジャレル侯爵家を怒らせたようだな。抗議文が来ているぞ!」
私はすぐにあのことだと理解した。
「ほんの冗談のつもりでした。リネータが痩せて綺麗になりのぼせあがっていたので、善意から身の程を教えてあげようとしただけです。嘘をついたことは謝ります。でも、女学生のほんの小さな嘘ですよ? 大袈裟です」
「カルヴァン・ジャレル侯爵令息がモニカ・マッキン侯爵令嬢と付き合っていて振られた、とリネータ嬢に言ったそうだが事実か?」
「はい、ちょっとした冗談です。リネータが分不相応な望みを抱いていたので、諦めさせようとしただけなのです」
「そのような噂が広まったら、モニカ嬢の風評はどうなる? あの方とアルベリク殿下は水面下で婚約の話が進んでいる最中らしい。その大事な時期に、モニカ嬢とカルヴァン様がつきあっていたなどと噂になったら・・・・・・自分がどんなに恐れ多い嘘を吐いたかわかっているのか?」
「それは存じ上げませんでした・・・・・・申し訳ございません。そこまで考えておりませんでした。ただ私は・・・・・・」
「言い訳はもう良い。だがこのままお前を学園に通わせ続けることはできない。愚かな子だ。これではマッキン侯爵家のおっしゃる通りにするしかない」
「モニカ様がいったい私にどうしろと言うのですか?」
「縁談の話が来ている。マッキン侯爵家の遠縁にあたる方で釣書はこれだ」
釣書を見ればとても美しい顔立ちの好青年だった。爵位はオールソ侯爵。玉の輿のうえに美形の男性。これは罰というよりご褒美なのでは?
加えてモニカ様の手紙も受け取る。
あなたがリネータ様に意地悪をしたのは、きっとリネータ様が羨ましかったのですね?
だから、カルヴァンに引けを取らないほどの素晴らしい男性を紹介しましょう。
彼は美しくてとてもお金持ちです。
きっと充実した日々を過ごせますわ!
そして今、私はその男性の屋敷に嫁いで来ている。
「おぉーーい。マージや。早くこっちに来ておくれ」
しわがれた声で私を呼ぶのは60のお爺さんだ。彼が私の夫。釣書の似せ絵は大昔の彼だった。確かに美しくお金持ちだ。けれどそれは過去のこと。実際はさみしがり屋の老人で、お金は持っているがドケチだった。
いつもベタベタとまとわりつき甘えてくる老人にため息しかでない。お金はあるが、頭のしっかりしたケチな老人なので質素堅実をいつも口にする。
(いつ死ぬの? この人ってあと何年生きるのかしら?)
「そんなに心配しなくてもずっと一緒にいられるさ。わしの父親は90まで元気だったし、母親は100まで生きたわい。それに死んだらわしの娘夫婦がお前の面倒を見るから気にするな。もう遺言書は娘にもたせてあるよ」
私の考えを読み当てたかのように絶望的な話を向ける夫。なんとこの老人は90や100まで生きるつもりらしい・・・・・・あと30年か40年もこの老人に縛り付けられるなんて・・・・・・やがて夫は階段でつまづき、介護の必要な身体になった。それでも元気で死ぬ気配はない。
汚物にまみれたオムツを洗いながら流す涙は後悔の涙よ。一日中付きまとわれて、自分の時間が一切ないわ。
(あぁ、なんでリネータに意地悪なんてしたんだろう? そうだ、彼女に助けてもらえないかしら?)
今やジャレル侯爵夫人になったリネータに、謝罪と救いを求める手紙を書いたが返事がくることはなかった。
私はただ後悔のなかで生きている・・・・・・こんなはずじゃなかったのに・・・・・・
「おい! お前は誰だ! 俺の金がないぞぉーー」
呆け始めた老人が思いっきり私を突き飛ばしたり殴るようになったのはそれからまもなくだった。
おしまい
「マージ。領地に戻るようにご両親からお手紙が来ていますよ。なんでもあなたの結婚が決まったそうです」
「はい? 結婚ですか? そのようなことは初耳ですが・・・・・・」
私は急ぎドゥルイット伯爵領に戻ったけれど、執務室でのお父様は烈火のごとく怒っていた。
「お前はマッキン侯爵家とジャレル侯爵家を怒らせたようだな。抗議文が来ているぞ!」
私はすぐにあのことだと理解した。
「ほんの冗談のつもりでした。リネータが痩せて綺麗になりのぼせあがっていたので、善意から身の程を教えてあげようとしただけです。嘘をついたことは謝ります。でも、女学生のほんの小さな嘘ですよ? 大袈裟です」
「カルヴァン・ジャレル侯爵令息がモニカ・マッキン侯爵令嬢と付き合っていて振られた、とリネータ嬢に言ったそうだが事実か?」
「はい、ちょっとした冗談です。リネータが分不相応な望みを抱いていたので、諦めさせようとしただけなのです」
「そのような噂が広まったら、モニカ嬢の風評はどうなる? あの方とアルベリク殿下は水面下で婚約の話が進んでいる最中らしい。その大事な時期に、モニカ嬢とカルヴァン様がつきあっていたなどと噂になったら・・・・・・自分がどんなに恐れ多い嘘を吐いたかわかっているのか?」
「それは存じ上げませんでした・・・・・・申し訳ございません。そこまで考えておりませんでした。ただ私は・・・・・・」
「言い訳はもう良い。だがこのままお前を学園に通わせ続けることはできない。愚かな子だ。これではマッキン侯爵家のおっしゃる通りにするしかない」
「モニカ様がいったい私にどうしろと言うのですか?」
「縁談の話が来ている。マッキン侯爵家の遠縁にあたる方で釣書はこれだ」
釣書を見ればとても美しい顔立ちの好青年だった。爵位はオールソ侯爵。玉の輿のうえに美形の男性。これは罰というよりご褒美なのでは?
加えてモニカ様の手紙も受け取る。
あなたがリネータ様に意地悪をしたのは、きっとリネータ様が羨ましかったのですね?
だから、カルヴァンに引けを取らないほどの素晴らしい男性を紹介しましょう。
彼は美しくてとてもお金持ちです。
きっと充実した日々を過ごせますわ!
そして今、私はその男性の屋敷に嫁いで来ている。
「おぉーーい。マージや。早くこっちに来ておくれ」
しわがれた声で私を呼ぶのは60のお爺さんだ。彼が私の夫。釣書の似せ絵は大昔の彼だった。確かに美しくお金持ちだ。けれどそれは過去のこと。実際はさみしがり屋の老人で、お金は持っているがドケチだった。
いつもベタベタとまとわりつき甘えてくる老人にため息しかでない。お金はあるが、頭のしっかりしたケチな老人なので質素堅実をいつも口にする。
(いつ死ぬの? この人ってあと何年生きるのかしら?)
「そんなに心配しなくてもずっと一緒にいられるさ。わしの父親は90まで元気だったし、母親は100まで生きたわい。それに死んだらわしの娘夫婦がお前の面倒を見るから気にするな。もう遺言書は娘にもたせてあるよ」
私の考えを読み当てたかのように絶望的な話を向ける夫。なんとこの老人は90や100まで生きるつもりらしい・・・・・・あと30年か40年もこの老人に縛り付けられるなんて・・・・・・やがて夫は階段でつまづき、介護の必要な身体になった。それでも元気で死ぬ気配はない。
汚物にまみれたオムツを洗いながら流す涙は後悔の涙よ。一日中付きまとわれて、自分の時間が一切ないわ。
(あぁ、なんでリネータに意地悪なんてしたんだろう? そうだ、彼女に助けてもらえないかしら?)
今やジャレル侯爵夫人になったリネータに、謝罪と救いを求める手紙を書いたが返事がくることはなかった。
私はただ後悔のなかで生きている・・・・・・こんなはずじゃなかったのに・・・・・・
「おい! お前は誰だ! 俺の金がないぞぉーー」
呆け始めた老人が思いっきり私を突き飛ばしたり殴るようになったのはそれからまもなくだった。
おしまい
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みんなの感想(22件)
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応援よろしくお願いします。
モニカ、いい娘ですね😊
彼女がいなかったら従兄弟のカルヴァンとリネータ嬢、2人の誤解は解けなかったでしょう😄
カルヴァンとリネータはマージの話を鵜呑みにしてロクに調べようとしなかったみたいだし😞💨
気立てがよくて、適度に腹黒い(褒め言葉)モニカならこの国の王子様と協力して国の繁栄に尽力してくれるでしょう。
モニカがマージに用意した『罰ゲームみたいな』縁談も皮肉が効いてて良かったです(たぶん、マージがこの結婚を断ろうとしても断れなかっただろう😓)
カルヴァン&リネータ、お幸せに😃💕
『腹黒い』って言う言葉を褒め言葉で使う日がくると思わなかった😅
. ∧🎀∧
╭ ╯( 。•ω•)╭╯
███████ ═╮
███████ ∥
███████ ═╯
◥█████◤
 ̄∧🎩∧ ̄ ̄ ̄ ̄
( 。•ω•)ノ
キコキコ( ο┳ )コーヒードゾー
◎-J┻◎
感想ありがとうございます☺
感想としては「わぁ……」てなったのですが、60でもこの人はかっこよかったかのでは?て思ってしまった……
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面白かったです。
返信遅れました💦
すみません🙇
感想ありがとうございます☺
完結おめでとう㊗御座います!!
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おじいちゃんにも誠意を持って接してれば変わったかもだね。ε-(´^`*)
お茶ドゾ♡
∧, ,∧
(・ω・) _。_
/ つつc(___ア ζ
しーJ 旦
感想ありがとうございます💕
>完結おめでとうございます
ありがとうございます🤗🎶
>人を陥れようとしたんだからしょうがないよね
ですね、しかも高位貴族の方絡みなのでこうなってしまいました💦
>おじいちゃんにも誠意を持って接していれば変わったかもね
そうかもしれません
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