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14 紬ちゃん、仲良くしましょうよ? 仲良くするには遅すぎた私(芽依視点)
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紬の足をわざと引っかけてやった数日後、パパが不機嫌な様子で私をリビングに呼んだ。隣にはママもいて、顔色が悪く少しおびえているようにも見えた。
「どうしたの? パパ」
私はいつになく怖い顔のパパにびっくりして、言われるままにリビングのソファに座った。
「芽依、お前が綺麗な洋服を着て美味しいものを食べて、大きな家に住めるのはなんでだと思う?」
「え? それはパパが歯医者さんで、偉い人だからだよね?」
「患者さんが誰も来なくなったらどうなると思う?」
「……それは……来なくなったら……困るよ……」
「だよな? お前が学校でササキ先生の子供を虐めていると、歯科医師会の会長さんから言われた。『ササキ先生はこの県の宝ですぞ! それが原因で引っ越しでもされたら大打撃だ。町おこしとか……いろいろ……県会議員の先生も怒っていらっしゃる……』と言われたよ。大人には大人の事情がある。お前はバカか? 世の中にはな、虐めていい相手とそうじゃない相手がいるんだよ!」
パパは鬼の形相で、ママにも怒った。
「お前の教育が悪いから、そんなことを芽依がするんだ!」
「芽依は虐めてないもん。あの子が柊君と仲良くするからいけないんだ!芽依はなにもしてないよ!」
私はパパに泣きながら叫んだ。
「この場合したか、してないかなんて重要じゃないんだよ。そんな噂が広まってみろ! こんなネット社会で『障害気味な有名画家の娘を虐めている歯科医の一人娘』……格好なおもしろネタじゃないか! すでに、ネットの一部に東歯科医の悪口が書かれているようだ。歯医者は他にもたくさんあるんだぞ! 患者さんから選んでもらう立場なことを忘れるな!」
パパがすっごく怒ったから、私はママに助けを求めた。
「芽依! 二度と、紬ちゃんを虐めないでちょうだい! この生活がなくなってもいいの!」
今までレイコ・ササキをバカにしていたママまでが、自分の言ったことも忘れて私を叱った。
「ママがいけないんじゃない! レイコ・ササキなんてちょっと障害気味らしいし、たいした絵も描かないくせにマスコミから過大評価されすぎだって……言ったもん。子供も産めないでかわいそーって。だから紬って子を養女にしたのねって」
私は全部パパの前で言ってやったんだ。
「咲子、お前! 子供の前でなんてこと言うんだよ? 親がそんなこと言ったら、子供は学校で同じことを言うって考えなかったのか? あぁ、さっきの俺の言葉もまずいな……いいかい? 芽依はこれからは誰も虐めてはだめだ。どんな子にもしてはいけない。パパの歯医者がつぶれて、なんでも買えるこの生活を失いたくないならな!」
私は悔しかったけれど、この生活がなくなるのは嫌だよ。ママも『お金がなくなったら大変、大変』って騒いでいた。
『虐めはいけないことなんだよ』ってお説教されるより、『ネットでこんなこと拡散されたら東歯科医院が潰れて、家もお金もなくなって……可愛い洋服を買うことも美味しい物を食べることもできなくなるぞ』というパパの脅しのほうが、よっぽど心に響いた私なのだった。
……だって、綺麗な洋服はほしいし……マドレーヌポプリンには毎日だって行きたいもん……あそこのプリンやシュークリームは他のお店では食べられない……
そう思ったら……確かに私はケンカを売る子を間違えていた。莉子とも仲良くしないとマドレーヌポプリンにいれてもらえなくなるかもしれないし……紬と仲良くなれば、レイコ・ササキとも仲良くなれてお弟子さんにしてくれるかも……それがきっかけで将来、世界的画家のかっこいい人と知り合ってロマンスが芽生えたりして……うわぁーー、素敵ぃ!
「ねぇ、パパ! 柊君より紬と仲良くしたほうが芽依にとって得なの?」
私はパパにクビを傾げながら聞いた。
「当たり前だろ? 柊は俺の弟の子だけど、多分医者になるだろ?暖も医者になると思うが、医者なら医学部に行けばわんさかいるさ。だけど、外国でも名前をだしただけでわかる画家は日本に何人いると思っている? そんな人の子供を虐めて得になるか、よく考えて行動しなさい」
そっか……今日はかなり勉強になったなぁ……明日から紬ちゃんには優しくしよう!
翌朝は紬ちゃんに満面の笑みで、
「おはよーー」
と、言ったら目を逸らされた。
ちょっとぉ、こっちがせっかく仲良くしてあげようとしているのになんで目を逸らして、ぼそっと『おはようございます』なんて言うのよ? 性格が暗くて意地悪なんだからっ!
それから、何度も仲良くしてもらおうとしたけれど、警戒して全然心を開いてくれないのよ? 酷いよね?
そのうち紬は柊君にも、あまり話しかけなくなった。それと比例して、柊君は私に冷たくなっていく。
最近は紬と莉子の仲良しグループがクラスの女子の半分以上を占めて、紬に話しかけようとすると他の子に邪魔されることが多い。
もう虐めないのにさぁ……なんだろう……気づいたら、私に話しかける子は前よりずっと減っていた。
「どうしたの? パパ」
私はいつになく怖い顔のパパにびっくりして、言われるままにリビングのソファに座った。
「芽依、お前が綺麗な洋服を着て美味しいものを食べて、大きな家に住めるのはなんでだと思う?」
「え? それはパパが歯医者さんで、偉い人だからだよね?」
「患者さんが誰も来なくなったらどうなると思う?」
「……それは……来なくなったら……困るよ……」
「だよな? お前が学校でササキ先生の子供を虐めていると、歯科医師会の会長さんから言われた。『ササキ先生はこの県の宝ですぞ! それが原因で引っ越しでもされたら大打撃だ。町おこしとか……いろいろ……県会議員の先生も怒っていらっしゃる……』と言われたよ。大人には大人の事情がある。お前はバカか? 世の中にはな、虐めていい相手とそうじゃない相手がいるんだよ!」
パパは鬼の形相で、ママにも怒った。
「お前の教育が悪いから、そんなことを芽依がするんだ!」
「芽依は虐めてないもん。あの子が柊君と仲良くするからいけないんだ!芽依はなにもしてないよ!」
私はパパに泣きながら叫んだ。
「この場合したか、してないかなんて重要じゃないんだよ。そんな噂が広まってみろ! こんなネット社会で『障害気味な有名画家の娘を虐めている歯科医の一人娘』……格好なおもしろネタじゃないか! すでに、ネットの一部に東歯科医の悪口が書かれているようだ。歯医者は他にもたくさんあるんだぞ! 患者さんから選んでもらう立場なことを忘れるな!」
パパがすっごく怒ったから、私はママに助けを求めた。
「芽依! 二度と、紬ちゃんを虐めないでちょうだい! この生活がなくなってもいいの!」
今までレイコ・ササキをバカにしていたママまでが、自分の言ったことも忘れて私を叱った。
「ママがいけないんじゃない! レイコ・ササキなんてちょっと障害気味らしいし、たいした絵も描かないくせにマスコミから過大評価されすぎだって……言ったもん。子供も産めないでかわいそーって。だから紬って子を養女にしたのねって」
私は全部パパの前で言ってやったんだ。
「咲子、お前! 子供の前でなんてこと言うんだよ? 親がそんなこと言ったら、子供は学校で同じことを言うって考えなかったのか? あぁ、さっきの俺の言葉もまずいな……いいかい? 芽依はこれからは誰も虐めてはだめだ。どんな子にもしてはいけない。パパの歯医者がつぶれて、なんでも買えるこの生活を失いたくないならな!」
私は悔しかったけれど、この生活がなくなるのは嫌だよ。ママも『お金がなくなったら大変、大変』って騒いでいた。
『虐めはいけないことなんだよ』ってお説教されるより、『ネットでこんなこと拡散されたら東歯科医院が潰れて、家もお金もなくなって……可愛い洋服を買うことも美味しい物を食べることもできなくなるぞ』というパパの脅しのほうが、よっぽど心に響いた私なのだった。
……だって、綺麗な洋服はほしいし……マドレーヌポプリンには毎日だって行きたいもん……あそこのプリンやシュークリームは他のお店では食べられない……
そう思ったら……確かに私はケンカを売る子を間違えていた。莉子とも仲良くしないとマドレーヌポプリンにいれてもらえなくなるかもしれないし……紬と仲良くなれば、レイコ・ササキとも仲良くなれてお弟子さんにしてくれるかも……それがきっかけで将来、世界的画家のかっこいい人と知り合ってロマンスが芽生えたりして……うわぁーー、素敵ぃ!
「ねぇ、パパ! 柊君より紬と仲良くしたほうが芽依にとって得なの?」
私はパパにクビを傾げながら聞いた。
「当たり前だろ? 柊は俺の弟の子だけど、多分医者になるだろ?暖も医者になると思うが、医者なら医学部に行けばわんさかいるさ。だけど、外国でも名前をだしただけでわかる画家は日本に何人いると思っている? そんな人の子供を虐めて得になるか、よく考えて行動しなさい」
そっか……今日はかなり勉強になったなぁ……明日から紬ちゃんには優しくしよう!
翌朝は紬ちゃんに満面の笑みで、
「おはよーー」
と、言ったら目を逸らされた。
ちょっとぉ、こっちがせっかく仲良くしてあげようとしているのになんで目を逸らして、ぼそっと『おはようございます』なんて言うのよ? 性格が暗くて意地悪なんだからっ!
それから、何度も仲良くしてもらおうとしたけれど、警戒して全然心を開いてくれないのよ? 酷いよね?
そのうち紬は柊君にも、あまり話しかけなくなった。それと比例して、柊君は私に冷たくなっていく。
最近は紬と莉子の仲良しグループがクラスの女子の半分以上を占めて、紬に話しかけようとすると他の子に邪魔されることが多い。
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