(本編完結・番外編不定期更新)愛を教えてくれた人

青空一夏

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23 皆で旅行に行こう

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 旅行は大きなバスを借りて運転手さんもお願いして、皆で楽しめるようにしたんだって。これだと行きも帰りもお酒が飲める、って大人達は大喜びだった。

 バスのなかでは後ろの座席に、私達は固まって座った。私を挟んで莉子ちゃんと柊君が座った。この配置って、すごく幸せだった! 大好きな子達にサンドイッチにされるなんて最高だもん。莉子ちゃんと高校で離ればなれになるのがとっても辛かったけれど、こうやって皆で旅行に行けることは嬉しかった。

 旅行は仲良しが隣にいるかどうかで幸福度が決まると思う。どんなにいいところに行っても、苦手な人に囲まれていたら楽しくない。学校で行く遠足って特にそうだ。仲良しの子と同じグループになって近くに座れれば、行きも帰りも天国だけれどそうでないと、もう寝たふりをするしかないもの。

 大きなサービスエリアに寄るたびに私達は降りて名物を探す。テレビでも有名なサクサクのメロンパンやお菓子を早速買って、莉子ちゃんと半分こしようとすると、柊君が手を出してパクッと食べた。

「紬ちゃんのは僕が食べて、莉子ちゃんと半分こにするのは暖だって」

「え? そうなの?」
 莉子ちゃんは照れて顔がぽっと赤く染まった。
 莉子ちゃんに聞いたら二人は相思相愛になったばかりだって言った。

 いつのまに、そんなことになっていたんだろう? 

「僕と紬ちゃんは、出会ったときからずっと相思相愛だよね」
 皆の前で宣言した柊君に私は恥ずかしいけれど、否定もしない。

「いいんじゃない?」

「うん、良いと思うわ」

 大人達が私と柊君、莉子ちゃんと暖君のカップルをすんなり応援して認めてくれた。だから私達は自然と未来の話をして盛り上がる。莉子ちゃんのレストランと私の絵を扱うお店は隣同士で、その隣には柊君と暖君の病院がある未来図。楽しい空想は止まらない。

 

 

ꕤ୭*





 旅館に着くと、テンションはマックスあがった。大きな部屋で皆で寝るなんて修学旅行みたいだ。大きなお風呂も温泉で何種類もあった。露天風呂は海に面していて、水平線がどこまでも果てしなく見えるようだった。

「綺麗ーー! ここの景色を帰ったら絵に描きたいな」
 私のつぶやきに礼子さんはうなづいた。

「一緒に描きましょう! あそこに見える船も素敵よね? あぁ、今年は船旅にも行きましょう」
 礼子さんはいろいろな計画をたてて、いろんなことを片っ端から一緒にしよう、と言ってくれた。

「うん!」こんなにも世界を広げてくれた礼子さんに感謝した。



 昼間は観光で滝を見たり水族館に行き、ロープウエイで空中散歩した後には広大な公園を散策した。私が住んでいる地域は湖はあるけれど海がない。だから、浜辺を歩くことも忘れない。

 お土産やさんではお揃いのキーホルダーを買ってつけあったり、美味しい物は必ず柊君と半分こにした。楽しい旅行のあとは、いよいよ高校生活だ。

 結月になんか、負けないぞ・・・・・・強くなりたい。強くならなきゃ・・・・・・私はそう思った。


*:.。 。.:*・゚✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*


※高校名はフィクションです。
 
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