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28 結月は・・・・・・/ まさか礼子さんが・・・・・・
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夏休み明けのクラスはざわざわと落ち着かない様子だった。皆がヒソヒソと話をしているし、私にも視線を流してくるのが気になった。
「なにがあったのかなぁ?」
「大変! 結月さん、停学処分になるらしいよ!」
「え? なんで?」
「万引きやったらしいよ。服を盗んだんだって」
悪い情報は、広まるのが驚くほど早い。
「ねぇ、結月さんて紬ちゃんと姉妹なんでしょう? 可哀想! 泥棒なんかと血が繋がっていて」
そんなことを言ってくる子もいたけれど、ほとんどの子は私と結月のこの問題は無関係と考えてくれていた。
「なにも、気にすることないよ。結月さんは自分の欲望に勝てなかっただけだろうし」
「うん。そんなに服ってほしいかな?」
「うーーん。望まなくても僕や紬ちゃんは、服を当たり前に買ってもらうことに慣れているけれど、そうじゃない子もいるからね。でも、高校生ならコンビニのバイトとかで自分で稼ぐこともできるでしょ? いくら欲しくても盗むって発想にはならないよね・・・・・・」
私と柊君には、結月の気持ちは理解しがたかった。もともと私はそれほど着飾ることに関心はないし、柊君もそれは一緒だったからだ。
「結局さぁーー、あの子って我が儘ってことなんじゃない?」
「うん、うん。見栄っ張りなんじゃないの? 私なんて、○○○の安いので有名なところの服よ? コスパいいもん。最高だよ?」
楓さんと陽葵さんは、うなづきあっている。
「まぁ、まぁ。結月さんのことは彼女の問題だし、私達にはわからないよ。それよかさ、夏休みの課題のさ・・・・・・」
いつも凛さんは話題をさりげなく、いいタイミングで変えてくれるのが上手い。
ꕤ୭*
家に帰って礼子さんやお祖母ちゃんに言うと、
「やっぱりね! こんなことになりそうな予感がしてたよ。見栄っ張りって人間をだめにするよ」
お祖母ちゃんが、おやつのシュークリームを小皿に盛ってくれながら言った。
「洋服をもっとあげれば良かったのかな」
「違うよ・・・・・・気持ちの問題かな。女の子だからおしゃれしたい気持ちはわかるけれど、特にお金をかけなくてもおしゃれってできるし、高い服を着ることだけが幸せじゃないよっ、て教えてくれる人がいなかったんだろうね」
礼子さんは、紅茶を淹れ私の前に置いてくれた。
「無理もないよ。あの見栄っ張りの真理子に育てられれば、そうなってもおかしくないね」
お祖母ちゃんは、ため息を漏らして顔をしかめた。
万引きって・・・・・・要するに窃盗だかられっきとした犯罪なのだけれど、案外気軽にする子もいるってテレビでみたことがあったっけ。
「万引きする勇気なんて私にはないな」
私はシュークリームを頬張って、つぶやいた。
「勇気? そんなの勇気って言わないわよぉ。それに、紬ちゃんは、そんなことする子じゃないもの!」
聡子さんは、ころころと笑って言った。
「万引きをね、ゲームみたいにする子達もいるって聞くけれど・・・・・・そこのお店にとっては大打撃なのよ? 自分勝手な欲望で、他人に迷惑と損害を与えて、おまけに自分もそれ以上に損をするわよ? 誰からも信用されなくなるし、経歴に傷がつくし、逮捕されたら犯罪歴にもなるのよ。自分も周りの人も不幸に巻き込むゲームって、意味はないよね?」
礼子さんに言われると、本当にその通りだなって思う。
その後、登校してきた結月は雰囲気がガラリと変っていた。なんだろう、髪の毛も少し明るめなかんじだったし、ピアスをしているのにも違和感がある。
「校則はないに等しいけれど、髪の色はいじってない子がほとんどなのに・・・・・・あの子は、あっち側の子になったのんだねぇ」楓さんは、首をすくめて言った。
「あっち側ってなぁに?」
私はよく意味がわからないでいた。
「つまりは、アウトローっぽいかんじよ。ヤンキーっぽいっていうかぁ。まぁ、それが悪って決めつけるのもいけないけれど・・・・・・私のような爽やかなスポーツ少女と真逆な存在だよねぇーー」
陽葵さんは、苦笑した。
「まぁ、まぁ。紬ちゃんと私は気にしないで、絵を描いていればいいんだよ」
凛さんは、優しく微笑んだ。
私は黙ってうなづいたが、結月の持つ雰囲気はどんどん暗い色を帯びていくみたい。
絵にすると、まだらなグレーで、ところどころに暗い闇がかいまみえるようなんだ。
それから、結月は私に話しかけることはなくなったけれど、絵画コンクールで私の受賞が話題になるたびに、おもしろくなさそうに教室の隅で舌打ちするのだった。
ꕤ୭*
高校2年の夏祭りに、たまたま私と遭遇した結月が私と間違えて他人を突き飛ばして、大怪我を負わせる事件が起きた。
結月は私の浴衣姿を目撃し、その紫陽花の花の浴衣と後ろ姿のよく似た女の子を、人混みのなかで突き飛ばしドミノのように数人が倒れて、何人もが怪我をした大事件だ。
「紬ばかりが幸せそうでずるい!」
そんな供述だったと、後から聞いた。
結月は退学となり、家出してしまった。そうなってみると余計お母さんは私に固執するようになり、何度も牧場に足を運んだ。
「お願いよ!帰ってきてよ。貴女だけが希望なのよ」
「ごめんなさい。帰ることはありません! お母さんは礼子さん一人だもん」
私はどんなに『前のお母さん』に泣かれても、できないことはできない。
私は礼子さんとずっと一緒にいるんだもん!!
けれどその年の冬、礼子さんは検診で胃に影ができていると言われたのだった。
「大丈夫よ。良性のポリープだと思うから」
その言葉は・・・・・・悲しい宣告の始まりだった・・・・・・
「なにがあったのかなぁ?」
「大変! 結月さん、停学処分になるらしいよ!」
「え? なんで?」
「万引きやったらしいよ。服を盗んだんだって」
悪い情報は、広まるのが驚くほど早い。
「ねぇ、結月さんて紬ちゃんと姉妹なんでしょう? 可哀想! 泥棒なんかと血が繋がっていて」
そんなことを言ってくる子もいたけれど、ほとんどの子は私と結月のこの問題は無関係と考えてくれていた。
「なにも、気にすることないよ。結月さんは自分の欲望に勝てなかっただけだろうし」
「うん。そんなに服ってほしいかな?」
「うーーん。望まなくても僕や紬ちゃんは、服を当たり前に買ってもらうことに慣れているけれど、そうじゃない子もいるからね。でも、高校生ならコンビニのバイトとかで自分で稼ぐこともできるでしょ? いくら欲しくても盗むって発想にはならないよね・・・・・・」
私と柊君には、結月の気持ちは理解しがたかった。もともと私はそれほど着飾ることに関心はないし、柊君もそれは一緒だったからだ。
「結局さぁーー、あの子って我が儘ってことなんじゃない?」
「うん、うん。見栄っ張りなんじゃないの? 私なんて、○○○の安いので有名なところの服よ? コスパいいもん。最高だよ?」
楓さんと陽葵さんは、うなづきあっている。
「まぁ、まぁ。結月さんのことは彼女の問題だし、私達にはわからないよ。それよかさ、夏休みの課題のさ・・・・・・」
いつも凛さんは話題をさりげなく、いいタイミングで変えてくれるのが上手い。
ꕤ୭*
家に帰って礼子さんやお祖母ちゃんに言うと、
「やっぱりね! こんなことになりそうな予感がしてたよ。見栄っ張りって人間をだめにするよ」
お祖母ちゃんが、おやつのシュークリームを小皿に盛ってくれながら言った。
「洋服をもっとあげれば良かったのかな」
「違うよ・・・・・・気持ちの問題かな。女の子だからおしゃれしたい気持ちはわかるけれど、特にお金をかけなくてもおしゃれってできるし、高い服を着ることだけが幸せじゃないよっ、て教えてくれる人がいなかったんだろうね」
礼子さんは、紅茶を淹れ私の前に置いてくれた。
「無理もないよ。あの見栄っ張りの真理子に育てられれば、そうなってもおかしくないね」
お祖母ちゃんは、ため息を漏らして顔をしかめた。
万引きって・・・・・・要するに窃盗だかられっきとした犯罪なのだけれど、案外気軽にする子もいるってテレビでみたことがあったっけ。
「万引きする勇気なんて私にはないな」
私はシュークリームを頬張って、つぶやいた。
「勇気? そんなの勇気って言わないわよぉ。それに、紬ちゃんは、そんなことする子じゃないもの!」
聡子さんは、ころころと笑って言った。
「万引きをね、ゲームみたいにする子達もいるって聞くけれど・・・・・・そこのお店にとっては大打撃なのよ? 自分勝手な欲望で、他人に迷惑と損害を与えて、おまけに自分もそれ以上に損をするわよ? 誰からも信用されなくなるし、経歴に傷がつくし、逮捕されたら犯罪歴にもなるのよ。自分も周りの人も不幸に巻き込むゲームって、意味はないよね?」
礼子さんに言われると、本当にその通りだなって思う。
その後、登校してきた結月は雰囲気がガラリと変っていた。なんだろう、髪の毛も少し明るめなかんじだったし、ピアスをしているのにも違和感がある。
「校則はないに等しいけれど、髪の色はいじってない子がほとんどなのに・・・・・・あの子は、あっち側の子になったのんだねぇ」楓さんは、首をすくめて言った。
「あっち側ってなぁに?」
私はよく意味がわからないでいた。
「つまりは、アウトローっぽいかんじよ。ヤンキーっぽいっていうかぁ。まぁ、それが悪って決めつけるのもいけないけれど・・・・・・私のような爽やかなスポーツ少女と真逆な存在だよねぇーー」
陽葵さんは、苦笑した。
「まぁ、まぁ。紬ちゃんと私は気にしないで、絵を描いていればいいんだよ」
凛さんは、優しく微笑んだ。
私は黙ってうなづいたが、結月の持つ雰囲気はどんどん暗い色を帯びていくみたい。
絵にすると、まだらなグレーで、ところどころに暗い闇がかいまみえるようなんだ。
それから、結月は私に話しかけることはなくなったけれど、絵画コンクールで私の受賞が話題になるたびに、おもしろくなさそうに教室の隅で舌打ちするのだった。
ꕤ୭*
高校2年の夏祭りに、たまたま私と遭遇した結月が私と間違えて他人を突き飛ばして、大怪我を負わせる事件が起きた。
結月は私の浴衣姿を目撃し、その紫陽花の花の浴衣と後ろ姿のよく似た女の子を、人混みのなかで突き飛ばしドミノのように数人が倒れて、何人もが怪我をした大事件だ。
「紬ばかりが幸せそうでずるい!」
そんな供述だったと、後から聞いた。
結月は退学となり、家出してしまった。そうなってみると余計お母さんは私に固執するようになり、何度も牧場に足を運んだ。
「お願いよ!帰ってきてよ。貴女だけが希望なのよ」
「ごめんなさい。帰ることはありません! お母さんは礼子さん一人だもん」
私はどんなに『前のお母さん』に泣かれても、できないことはできない。
私は礼子さんとずっと一緒にいるんだもん!!
けれどその年の冬、礼子さんは検診で胃に影ができていると言われたのだった。
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