(本編完結・番外編不定期更新)愛を教えてくれた人

青空一夏

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番外編

15 閑話ーその1 高橋こずえという女

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ꕤ୭*高橋こずえ視点


 私は自分で言うのもなんだが、昔から人当たりも良く社交的で友人が多い。人の話を聞くのが好きで、相談にのってあげるのも得意だった。

 結婚前はアパレル関係で仕事もしておりあの頃は充実していたっけ。今は子供が3人もいるから働けないし、夫もそれなりに稼いでいるので贅沢しなければ暮していける。ということで専業主婦を満喫中の私は、この公園のボスだ。

 ママ友って楽しいしチョロい。皆子育てで悩んでいるし親身になってうなづくだけで、安心して悩み事を話してくれる。家庭内のいざこざとか、旦那の浮気とかまで話す人もいて笑っちゃう。

 もちろん、話題の中心は子供のことよ。そう、子供の持病は私達ママの悩み事の大半を占める。けれど、私の子供達は持病なんてもってないけどね。

 それでも自分のことのように話を聞いてあげて慰めたわ。ぜん息で悩んでいれば、『私の息子もちょっと前まではそうだったのよ』なんてリップサービスもしてあげた。ママ友同士ってそういう共感を呼ぶ会話と、助け合いがとても大事よね?

 



 初めはちょっとした冗談だった。仲の良い井上さんにお水をあげて『これを子供に飲ませてみて。もしかしたらすごくいいことがあるかも』と言った。

 その水は、有名な湧き水でわざわざ他県まで車を飛ばして汲んできたものだ。我が家はこの湧き水を、月に2回ほどドライブがてら汲みに行くのを習慣としていた。ある神社の境内から湧き出ている『波動水』で、まろやかな味わいのご霊水だ。

「これ、すごくいいわ! 娘と息子の体調がいいみたい! ここ3日はぜん息もおきなくてびっくりよ。この水はなんなの?」

「えっと、これは霊水で滅多に手に入らないものなのよ。ちょっと詳しくは教えられないけれど、もう1本あげるわ!」

「えぇ、ただでもらうなんて悪いわ。じゃぁ、1本500円で買うわ!」
 井上さんはありがたがって私の手のひらに500円玉を置いた。これが始まりだった。

――これって、もしかしたらお金儲けになる? もう少し値段を上げたらいいかんじ。

 どうせただで汲んできた水だし、高速料金や車のガソリン代はかかるけれど、家族で遊びに行くついでに汲んでるだけなのでボロ儲け。いい金儲けの方法を見つけちゃった。

 それからは夫が呆れるくらいペットボトルに霊水をいれて、ママ友達に売った。値段は1本1,000円に値上げした。もちろん、お金持ちそうな人には倍ふっかけてやった。

 取り巻きのママ友がますます増えて、そいつらにはたまにおまけで水をただであげると、ばかみたいに喜んだわ。

 そのうち、汲みに行くのが面倒になって自宅の蛇口から出る水道水をそのままつめて、取り巻きのママとも達に配ってみた。

「どう? ご神水の効きめは?」

「えぇ、相変らずとても効いている気がするわ」
 井上さん達の嬉しそうな言葉に、私は『水道水でも平気じゃん』と思うようになった。

「あら、でもうちは昨日発作が出ちゃって困ったのよ」
 そんなことを言う人には、お祈りが足りなかったのよと諭した。

「この水を飲ませる前に、お祈りをしなきゃいけないんだけどちゃんとした? そのお祈りの気持ちが足りなかったのよ。なにか他のことを考えて祈ってはダメよ。それからこれを飲んでいたからこそ、その程度の発作で済んだことも忘れないで! じゃなかったら今頃、救急車のお世話になっていたかもよ?」

「確かに、そうかもしれないわ! 去年は救急車のお世話になったこともあるぐらいだけれど、今年はそう言えばそこまでいかないし。効いているってことよね?」

「そう、その通りよ。もっと飲めばもっと効くわよ!」

 こうして私の魔法のようなサイドビジネスが完成した。そんな時に、あのほっそりして綺麗な佐々木紬さんが公園に現れたのだった。

 服装ですぐにわかったのは、佐々木さんはかなりお金に余裕のある人だということだ。私だって昔は細くてそれなりにイケていた時があり、アパレルでお仕事をしていたんだから! 服のブランドには敏感なのよ。

 地味に見えるあのTシャツは一枚4万以上はするブランドだし、ジーパンも3万は軽くするものだ。それをさりげなく普段着にできる美人ってムカつくったら!これ見よがしに着てこないでよ。
 ここは、都内の高級住宅街に住む奥様達が集う場所じゃないっての! ふん! ここのルールを教えてあげないとねぇ?

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