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(ジュスタン・ギャール公爵視点)
貴族裁判では国王陛下夫妻が高座中央に、その両端には法律家達がずらりと並ぶが、裁判の実権を握るのはあくまで国王陛下だ。
まさかこのわたしが被告席にいるとは・・・・・・しかも原告は愛おしい妻ロズリーヌだ。参考人席にはアラベルにエドガールとその部下達。あれは特殊部隊の奴らだ。あいつらがロズリーヌを逃がしたのか。
驚いたことに傍聴席にはシャンパトリタン辺境伯夫妻までおり、辺境伯領の騎士達も勢揃い? 王都征服にでも来たのか?
「私は腹違いの妹アラベルの子どもを、ジュスタン様と育てるように言われました。部屋の扉には騎士達が見張りをし外出もままならず、庭園にすらジュスタン様に伴われていなければ散歩すらできなくなりました。侍女達は勝手に解雇され・・・・・・子犬のロッティは取り上げられて、脅しの材料に使われました」
「子犬を脅しの材料ですって?」
愛犬家の王妃殿下が方眉をつり上げる。
「はい。『言うことを聞かないとロッティを森に捨てるよ』とか『おとなしくしないとロッティをムチで打つよ』等と言われました。
「なんて卑怯な! ジュスタン・ギャール公爵。あなたにはがっかりですよ。私はこの者を国外追放にしたいですね。顔も見たくないわ」
王妃殿下は激高した。
「お言葉ですが、たかが犬でしょう? そこまで騒ぐ必要がありますか? それに、監禁していたわけではないです。ロズリーヌが精神的に不安定だったから保護していただけです。子どもは欲しいけれど、ロズリーヌには出産で死んでほしくない」
「ジュスタンの母アネモーネの時代より、今はだいぶ医学が進歩している。そうそう出産で女性は死なないぞ」
国王陛下はおっしゃるが、万が一ということもある。
「ダメです。死なないという保証はどこにもないです。子どもはいつでも換えのきく、どうでもいい女に産ませたほうがいい」
「どうでもいい? 私に少しも愛がなかったの? こんのぉーー、人でなし!」
「人でなし? アラベルに言われたくないね。君がわたしに言い寄ってきて、媚薬を飲ませようとしたんだろう? 腹違いとはいえ姉の夫をわざわざ誘惑する性悪女は、袋の役割だけ果たせば良い」
「袋? なによ、それ?」
「子どもを産んでくれる袋だよ。お前は子どもを産む為だけの道具さ。愛どころか、こちらはお前を人とも思っていない」
ザワザワと「酷い男め!」とささやく傍聴席の男達の声にはうんざりだ。善人ぶるのはやめてくれ。お前達にだって性欲処理に袋という言い方をしてきた女がたくさんいるだろう?
それに比べればわたしのほうがよほど純粋だ。愛する女性だけが大事でこれは守って自分の側に置く。それ以外は赤子出産用の袋だ。そもそも、わたしは性欲処理に女なんていらない。自分でする方が遙かに楽だし、面倒な会話もいらないのだから。
「気持ち悪い・・・・・・」
ロズリーヌがわたしを怯えた眼差しで見た。
「なぜだ? ロズリーヌにはなんでも買い与えただろう? 足をマッサージしてあげたり、髪を洗ってあげたりもした。わたしの時間が許す限りずっとそばにいて、愛の言葉をささやいてあげたよね? これだけ愛されていたのに、なぜ逃げたんだ? エドガールか? こいつが好きなのか? もしかしてずっと裏切っていたのか? 君はずっとこの男のことを・・・・・・」
怒りで目眩がしてくる・・・・・・
「わたしの物にならないなら・・・・・・死ね」
私は隠しもっていた投げナイフをロズリーヌ目がけて投げたのだった。
(大丈夫だよ・・・・・・君が死んだらすぐに後を追いかける。死んでからも離さない)
貴族裁判では国王陛下夫妻が高座中央に、その両端には法律家達がずらりと並ぶが、裁判の実権を握るのはあくまで国王陛下だ。
まさかこのわたしが被告席にいるとは・・・・・・しかも原告は愛おしい妻ロズリーヌだ。参考人席にはアラベルにエドガールとその部下達。あれは特殊部隊の奴らだ。あいつらがロズリーヌを逃がしたのか。
驚いたことに傍聴席にはシャンパトリタン辺境伯夫妻までおり、辺境伯領の騎士達も勢揃い? 王都征服にでも来たのか?
「私は腹違いの妹アラベルの子どもを、ジュスタン様と育てるように言われました。部屋の扉には騎士達が見張りをし外出もままならず、庭園にすらジュスタン様に伴われていなければ散歩すらできなくなりました。侍女達は勝手に解雇され・・・・・・子犬のロッティは取り上げられて、脅しの材料に使われました」
「子犬を脅しの材料ですって?」
愛犬家の王妃殿下が方眉をつり上げる。
「はい。『言うことを聞かないとロッティを森に捨てるよ』とか『おとなしくしないとロッティをムチで打つよ』等と言われました。
「なんて卑怯な! ジュスタン・ギャール公爵。あなたにはがっかりですよ。私はこの者を国外追放にしたいですね。顔も見たくないわ」
王妃殿下は激高した。
「お言葉ですが、たかが犬でしょう? そこまで騒ぐ必要がありますか? それに、監禁していたわけではないです。ロズリーヌが精神的に不安定だったから保護していただけです。子どもは欲しいけれど、ロズリーヌには出産で死んでほしくない」
「ジュスタンの母アネモーネの時代より、今はだいぶ医学が進歩している。そうそう出産で女性は死なないぞ」
国王陛下はおっしゃるが、万が一ということもある。
「ダメです。死なないという保証はどこにもないです。子どもはいつでも換えのきく、どうでもいい女に産ませたほうがいい」
「どうでもいい? 私に少しも愛がなかったの? こんのぉーー、人でなし!」
「人でなし? アラベルに言われたくないね。君がわたしに言い寄ってきて、媚薬を飲ませようとしたんだろう? 腹違いとはいえ姉の夫をわざわざ誘惑する性悪女は、袋の役割だけ果たせば良い」
「袋? なによ、それ?」
「子どもを産んでくれる袋だよ。お前は子どもを産む為だけの道具さ。愛どころか、こちらはお前を人とも思っていない」
ザワザワと「酷い男め!」とささやく傍聴席の男達の声にはうんざりだ。善人ぶるのはやめてくれ。お前達にだって性欲処理に袋という言い方をしてきた女がたくさんいるだろう?
それに比べればわたしのほうがよほど純粋だ。愛する女性だけが大事でこれは守って自分の側に置く。それ以外は赤子出産用の袋だ。そもそも、わたしは性欲処理に女なんていらない。自分でする方が遙かに楽だし、面倒な会話もいらないのだから。
「気持ち悪い・・・・・・」
ロズリーヌがわたしを怯えた眼差しで見た。
「なぜだ? ロズリーヌにはなんでも買い与えただろう? 足をマッサージしてあげたり、髪を洗ってあげたりもした。わたしの時間が許す限りずっとそばにいて、愛の言葉をささやいてあげたよね? これだけ愛されていたのに、なぜ逃げたんだ? エドガールか? こいつが好きなのか? もしかしてずっと裏切っていたのか? 君はずっとこの男のことを・・・・・・」
怒りで目眩がしてくる・・・・・・
「わたしの物にならないなら・・・・・・死ね」
私は隠しもっていた投げナイフをロズリーヌ目がけて投げたのだった。
(大丈夫だよ・・・・・・君が死んだらすぐに後を追いかける。死んでからも離さない)
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