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10 卑劣なゴドフロア
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私に絵を描くように強要しだしたゴドフロア叔父様に私は反抗なんてしない。むしろこれが作戦なのだから。
「叔父様、ありがとう。私、絵を描くのがとても好きなのです」
そう言いながら連日、絵を描き叔父様に見せる。
「素晴らしいよ。これはとても良い絵だ。絵画コンクールに出したらどうかな? わたしが送っておいてあげようね。きっと優秀な成績を収めるはずだ」
私が描いた絵をお父様が描いたものとして、全てケビンおじ様に送っているのを私はメイド達から聞いた。エリザもユイラもとても有能で、昼間に屋敷で起こっている様々なことに対して目を光らせている。夜にこっそりとやって来るスティール侯爵家の機敏な動きの者達は、朝まで私の部屋にいて守ってくれているのも感じていた。
(大丈夫。私はこの復讐をやり遂げてみせるわ)
特大のキャンバスを用意してもらい、壮大な宗教画を作成する。この世界で最も信仰されている女神様と数多の神々を丁寧に描いていくのだ。神々の絵画は王族のコレクションになることが多いのでそれを狙う。できれば大国のシアニア国王陛下の目に留まれば良いと思う。
お父様の真似はしないけれど、お父様の血が受け継がれた私には自然と筆のタッチが似てしまう。けれど、これは私のオリジナル。
ゴドフロア叔父様はこの絵ができあがるのをとても楽しみにしている。
「素晴らしい! これさえあればきっと一生・・・・・・ぐふふふ」
(はいはい。多分良からぬことを考えているわね)
「アリゼ様、あいつは多分この絵を描き終えたら・・・・・・大丈夫です。この私達がお守りします」
エリザとユイラがにっこりと微笑むのが心強い。
「えぇ、これも作戦なのよ。お願いね」
私は素直に頭を下げた。私はまだ子供で、腕力もないし剣やナイフも使えない。教養はお父様のお陰で身についているけれど身を守る護身術は教わっていないのだ。
私の絵が完成していく。これはゴドフロア叔父様、あなたの死刑へのカウントダウンなのよ。
学園には相変わらず通っていたし、高位貴族の令嬢とも仲良くなった。おバカさんのブロンシュは、今では皆からバカにされている。今更私にすり寄ってきたも遅いわ。
ドナシアン伯爵夫人は、お母様の宝石をいつも自慢げにつけているのがとても不愉快だった。
それをエリザとユイラに言うと、翌朝ドナシアン伯爵夫人が宝石箱ごと宝石がなくなったと騒いでいた。
「ついでなので、ドナシアン伯爵夫人の宝石も奪っておきました。今までの迷惑料です。スティール侯爵家に届くように手配しておきました」
「まぁ、ドナシアン伯爵夫人のものまで取ったの? そこまでしなくてもいいのに」
「気になさるほどの価値のある物はありませんでした。ほとんどがイミテーションでしたから」
私は笑いをかみ殺す。イミテーションだらけの宝石をもつ伯爵夫人って珍しいと思う。
夕食時、私の食事の給仕はエリザの担当だ。必ず彼女は、ゴドフロア叔父様達に気づかれないように毒味をしてくれる。
「お嬢様、スープを飲んではいけません」
密やかなその声に私は小さくうなづく。飲んだふりをして、テーブルの下でユイラが渡すタオルに全部吸わせると、わざと少しふらつきながら部屋に戻った。
「さっきのスープにはなにが入っていたの?」
「ちょっとお待ちくださいね。今、分析します」
ユイラは大きなアタッシュケースから、細い官を取り出して手袋をするとタオルからスープを絞り落とす。そこになにか液体を加えると目を細めた。
「なるほどね。ドナシアン伯爵は鬼畜ですね。これは常習性のある危険な物ですよ。これを飲むと何日も眠らないで物事に集中できます。あいつはこの大作画を早く完成させたいのでしょう。これを飲み続けたら最終的には廃人になってしまいます。それまでに多分あの絵は完成できるでしょうがね」
「まさか、そこまで? まぁ、あのゴドフロア叔父様ですもの。やりそうなことだわね」
私は恐ろしい人間の近くにいるのだと改めて身震いする。
「いずれ大きな報いを受けるでしょう。ですが、ほんの少しですが今も仕返しはしておきたいですよね? なので、ドナシアン伯爵のスープと洗顔用の水に悪戯をしときました」
エリザはニヤリと笑った。
夜中にゴドフロア叔父様の叫ぶ声が聞こえた。
「うぉおおぉおお。腹が痛い。医者を呼べ。ぐぬぬぬ・・・・・・痛い、痛い。腹がぁーー」
一晩中うなり声が聞こえ、お腹を下したゴドフロア叔父様が朝にはげっそりとやつれていた。おまけに顔が真っ赤にかぶれて膨れ上がっている。
「いったいなにをしたの?」
「かわいい悪戯ですよ。スープに胃腸の働きを活発にし過ぎるものを混ぜました。洗顔用の水にはハゼの木の樹液を少し垂らしたぐらいです」
「叔父様、ありがとう。私、絵を描くのがとても好きなのです」
そう言いながら連日、絵を描き叔父様に見せる。
「素晴らしいよ。これはとても良い絵だ。絵画コンクールに出したらどうかな? わたしが送っておいてあげようね。きっと優秀な成績を収めるはずだ」
私が描いた絵をお父様が描いたものとして、全てケビンおじ様に送っているのを私はメイド達から聞いた。エリザもユイラもとても有能で、昼間に屋敷で起こっている様々なことに対して目を光らせている。夜にこっそりとやって来るスティール侯爵家の機敏な動きの者達は、朝まで私の部屋にいて守ってくれているのも感じていた。
(大丈夫。私はこの復讐をやり遂げてみせるわ)
特大のキャンバスを用意してもらい、壮大な宗教画を作成する。この世界で最も信仰されている女神様と数多の神々を丁寧に描いていくのだ。神々の絵画は王族のコレクションになることが多いのでそれを狙う。できれば大国のシアニア国王陛下の目に留まれば良いと思う。
お父様の真似はしないけれど、お父様の血が受け継がれた私には自然と筆のタッチが似てしまう。けれど、これは私のオリジナル。
ゴドフロア叔父様はこの絵ができあがるのをとても楽しみにしている。
「素晴らしい! これさえあればきっと一生・・・・・・ぐふふふ」
(はいはい。多分良からぬことを考えているわね)
「アリゼ様、あいつは多分この絵を描き終えたら・・・・・・大丈夫です。この私達がお守りします」
エリザとユイラがにっこりと微笑むのが心強い。
「えぇ、これも作戦なのよ。お願いね」
私は素直に頭を下げた。私はまだ子供で、腕力もないし剣やナイフも使えない。教養はお父様のお陰で身についているけれど身を守る護身術は教わっていないのだ。
私の絵が完成していく。これはゴドフロア叔父様、あなたの死刑へのカウントダウンなのよ。
学園には相変わらず通っていたし、高位貴族の令嬢とも仲良くなった。おバカさんのブロンシュは、今では皆からバカにされている。今更私にすり寄ってきたも遅いわ。
ドナシアン伯爵夫人は、お母様の宝石をいつも自慢げにつけているのがとても不愉快だった。
それをエリザとユイラに言うと、翌朝ドナシアン伯爵夫人が宝石箱ごと宝石がなくなったと騒いでいた。
「ついでなので、ドナシアン伯爵夫人の宝石も奪っておきました。今までの迷惑料です。スティール侯爵家に届くように手配しておきました」
「まぁ、ドナシアン伯爵夫人のものまで取ったの? そこまでしなくてもいいのに」
「気になさるほどの価値のある物はありませんでした。ほとんどがイミテーションでしたから」
私は笑いをかみ殺す。イミテーションだらけの宝石をもつ伯爵夫人って珍しいと思う。
夕食時、私の食事の給仕はエリザの担当だ。必ず彼女は、ゴドフロア叔父様達に気づかれないように毒味をしてくれる。
「お嬢様、スープを飲んではいけません」
密やかなその声に私は小さくうなづく。飲んだふりをして、テーブルの下でユイラが渡すタオルに全部吸わせると、わざと少しふらつきながら部屋に戻った。
「さっきのスープにはなにが入っていたの?」
「ちょっとお待ちくださいね。今、分析します」
ユイラは大きなアタッシュケースから、細い官を取り出して手袋をするとタオルからスープを絞り落とす。そこになにか液体を加えると目を細めた。
「なるほどね。ドナシアン伯爵は鬼畜ですね。これは常習性のある危険な物ですよ。これを飲むと何日も眠らないで物事に集中できます。あいつはこの大作画を早く完成させたいのでしょう。これを飲み続けたら最終的には廃人になってしまいます。それまでに多分あの絵は完成できるでしょうがね」
「まさか、そこまで? まぁ、あのゴドフロア叔父様ですもの。やりそうなことだわね」
私は恐ろしい人間の近くにいるのだと改めて身震いする。
「いずれ大きな報いを受けるでしょう。ですが、ほんの少しですが今も仕返しはしておきたいですよね? なので、ドナシアン伯爵のスープと洗顔用の水に悪戯をしときました」
エリザはニヤリと笑った。
夜中にゴドフロア叔父様の叫ぶ声が聞こえた。
「うぉおおぉおお。腹が痛い。医者を呼べ。ぐぬぬぬ・・・・・・痛い、痛い。腹がぁーー」
一晩中うなり声が聞こえ、お腹を下したゴドフロア叔父様が朝にはげっそりとやつれていた。おまけに顔が真っ赤にかぶれて膨れ上がっている。
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