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14 嘘が暴かれ、死人が蘇った?
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(ゴドフロア視点)
シアニア王国の王宮に初めて足を踏み入れたわたしは、その壮大さと贅沢な城の内装に感心しながら、ついキョロキョロと辺りを見回してしまう。城のいたるところに高価な絵画や置物が飾られており、多くの容姿端麗な侍女やメイド達の姿が目につく。シャンデリアは宝石と黄金で飾られ、廊下に敷かれた絨毯は足首まで埋まりそうにふかふかだ。
これこそが、富と権力を集結した王の中の王の居城だぞ。
(ぐふふ。きっと目の玉が飛び出るような金額がいただけるはずだ。国王陛下が購入なさるとは聞いたが、いくら払ってくださるのかな? できれば自分で交渉したいよ。一生豪遊してひとつも働かないで済む大金が欲しいねぇーーぐふぐふ。)
パーティホールには貴族達が集いアリゼの大作がホールに飾られて、すでにその周りには人がたくさん群がっていた。
「まぁ、これがレオナルド・ダ・ヴィンロン画伯の絵画ですか? 女神様を描くなんて珍しいですわね」
「素晴らしいこの筆遣い。さすが天才ですよ」
皆、この贋作を惚れ惚れと眺めて褒めちぎる。
(バカな奴らだ。こんなに簡単に騙せるのならもう少しアリゼを生かしておいて、もっと絵を描かせれば良かったかも)
国王陛下のお出ましにその場が一斉に静まりかえった。
「この絵画は素晴らしいだろう? 儂はこれを200億で購入し国宝にしようと思っておる。王立美術館に展示し皆が楽しめるようにしたい。ゆえに皆の意見も聞きたい。この絵画にいくら払うのが妥当だと思う?」
「まぁ、この絵画の大きさなら250億ほどの価値があるのでは?」
「そうですわね。ついこの間、同じような高名な画家の大作がそのような価格で取引されておりましたものね」
「国王陛下、恐れながらこの絵画は500億の価値があると思います。天才の兄上は失踪し未だ見つからず、いわば死んだも同然。となればこれは遺作です」
わたしはここぞとばかりに叫ぶ。
やや間があって、思いがけないことを言い出すスティール侯爵。
「その絵画は確かに素晴らしいです。ですが、それはレオナルド画伯の描いたものではなかったのです。陛下、わたしはそのゴドフロア・ドナシアン伯爵に騙されました」
スティール侯爵が陛下に駆け寄り跪き謝罪したのだ。
(あり得ない! なんでそんなことをこのタイミングで言う?)
「どういうことだね? これは間違いなくレオナルド画伯の作品だろう? ドナシアン伯爵よ、どうなのだ?」
「もちろんです。間違いなく天才の兄上が描いたものです。私は実際、兄上の屋敷でそれを描くのを間近に見ていたのですから」
「ほぉ。レオナルド画伯がこの作品を描くのを見ていたのか? 王に嘘の証言をする罪は、ムチで打たれその嘘つきな舌は切り落とされるということは知っておるか? もちろんその嘘があまりに酷い場合だが」
「舌を切られる? も、もちろんですとも。これは正真正銘、レオナルド画伯である兄上が描いた絵でございます。私どもの命に賭けて嘘偽りのない真実ですとも。この大事な娘の命を懸けてもいい」
「ちょ、ちょっとお父様! 酷いわよ」
文句を言おうとする娘の耳元で500億だぞ? と、ささやく。
(どうせ証人は皆死んでいる。誰もわたしの嘘は暴けないさ。ふははは)
「実は証拠があるのですよ、国王陛下。レオナルド画伯の作品には贋作防止の為にある手法がとられていました。絵の背景の部分をじっと見つめてください。絵に顔を近づけて遠くを見る視線にして・・・・・・立体視という見方なのですがコツを掴めば誰でもできます。すると文字が浮き上がってくるのです。レオナルドの愛する妻サラか愛娘アリゼの文字が浮き上がって見えてきます。保管していた彼の絵を全てお持ちしました。見ていただければわかりますが、その全てに愛する彼の家族の名前が浮き出る仕組みになっております」
「ふむ。試してみよう。ほぉーー、確かにサラという文字が見える。こちらはアリゼだ。なんと不思議な」
国王陛下はスティール侯爵の差し出す絵を次々と眺めていった。
「まぁ、そんな手法があるのですか? さすが天才。ただのサインではなく絵の背景に盛り込んでいたなんて」
「ほ、ほんとだ! サラの文字が浮き上がっていますわ。こちらの絵はアリゼですわ」
貴族達も次々と絵を渡されて、立体視という聞き慣れない見方を試す。
「そうです。絵の模倣は技術のある画家なら真似ることができます。けれど絵に盛り込んだこの手法は彼しかできないことなのです。ついこのあいだ、彼の絵を見て気がついた次第です」
スティール侯爵がわたしを見てニヤリと笑ったのは気のせいだろうか?
(くっそ! そんな仕掛けがあったとはどう言い逃れすればいい?)
「ふむ。それでこの大作を見れば・・・・・・うーーん、全く文字が浮き出ておらんな。・・・・・・確かにどこを見ても文字が浮き上がる様子はないな。ゴドフロア、お前は嘘を儂についたのか? この多くの貴族達の前で儂に恥をかかせたのだな?」
「それだけではありませんよ。わたしの妻も殺している殺人犯です!」
(ひっ! あ、兄上? し、死人が蘇った?)
「あ、兄上? 死んだはずじゃぁ? なぜ、生きているんだぁーー?」
思わず声を張り上げて・・・・・・皆の視線が一斉にこちらに注がれた。国王陛下の目は罪人を見る目つきに変わっている。
(や、やばい・・・・・・まずいぞ、まずい)
シアニア王国の王宮に初めて足を踏み入れたわたしは、その壮大さと贅沢な城の内装に感心しながら、ついキョロキョロと辺りを見回してしまう。城のいたるところに高価な絵画や置物が飾られており、多くの容姿端麗な侍女やメイド達の姿が目につく。シャンデリアは宝石と黄金で飾られ、廊下に敷かれた絨毯は足首まで埋まりそうにふかふかだ。
これこそが、富と権力を集結した王の中の王の居城だぞ。
(ぐふふ。きっと目の玉が飛び出るような金額がいただけるはずだ。国王陛下が購入なさるとは聞いたが、いくら払ってくださるのかな? できれば自分で交渉したいよ。一生豪遊してひとつも働かないで済む大金が欲しいねぇーーぐふぐふ。)
パーティホールには貴族達が集いアリゼの大作がホールに飾られて、すでにその周りには人がたくさん群がっていた。
「まぁ、これがレオナルド・ダ・ヴィンロン画伯の絵画ですか? 女神様を描くなんて珍しいですわね」
「素晴らしいこの筆遣い。さすが天才ですよ」
皆、この贋作を惚れ惚れと眺めて褒めちぎる。
(バカな奴らだ。こんなに簡単に騙せるのならもう少しアリゼを生かしておいて、もっと絵を描かせれば良かったかも)
国王陛下のお出ましにその場が一斉に静まりかえった。
「この絵画は素晴らしいだろう? 儂はこれを200億で購入し国宝にしようと思っておる。王立美術館に展示し皆が楽しめるようにしたい。ゆえに皆の意見も聞きたい。この絵画にいくら払うのが妥当だと思う?」
「まぁ、この絵画の大きさなら250億ほどの価値があるのでは?」
「そうですわね。ついこの間、同じような高名な画家の大作がそのような価格で取引されておりましたものね」
「国王陛下、恐れながらこの絵画は500億の価値があると思います。天才の兄上は失踪し未だ見つからず、いわば死んだも同然。となればこれは遺作です」
わたしはここぞとばかりに叫ぶ。
やや間があって、思いがけないことを言い出すスティール侯爵。
「その絵画は確かに素晴らしいです。ですが、それはレオナルド画伯の描いたものではなかったのです。陛下、わたしはそのゴドフロア・ドナシアン伯爵に騙されました」
スティール侯爵が陛下に駆け寄り跪き謝罪したのだ。
(あり得ない! なんでそんなことをこのタイミングで言う?)
「どういうことだね? これは間違いなくレオナルド画伯の作品だろう? ドナシアン伯爵よ、どうなのだ?」
「もちろんです。間違いなく天才の兄上が描いたものです。私は実際、兄上の屋敷でそれを描くのを間近に見ていたのですから」
「ほぉ。レオナルド画伯がこの作品を描くのを見ていたのか? 王に嘘の証言をする罪は、ムチで打たれその嘘つきな舌は切り落とされるということは知っておるか? もちろんその嘘があまりに酷い場合だが」
「舌を切られる? も、もちろんですとも。これは正真正銘、レオナルド画伯である兄上が描いた絵でございます。私どもの命に賭けて嘘偽りのない真実ですとも。この大事な娘の命を懸けてもいい」
「ちょ、ちょっとお父様! 酷いわよ」
文句を言おうとする娘の耳元で500億だぞ? と、ささやく。
(どうせ証人は皆死んでいる。誰もわたしの嘘は暴けないさ。ふははは)
「実は証拠があるのですよ、国王陛下。レオナルド画伯の作品には贋作防止の為にある手法がとられていました。絵の背景の部分をじっと見つめてください。絵に顔を近づけて遠くを見る視線にして・・・・・・立体視という見方なのですがコツを掴めば誰でもできます。すると文字が浮き上がってくるのです。レオナルドの愛する妻サラか愛娘アリゼの文字が浮き上がって見えてきます。保管していた彼の絵を全てお持ちしました。見ていただければわかりますが、その全てに愛する彼の家族の名前が浮き出る仕組みになっております」
「ふむ。試してみよう。ほぉーー、確かにサラという文字が見える。こちらはアリゼだ。なんと不思議な」
国王陛下はスティール侯爵の差し出す絵を次々と眺めていった。
「まぁ、そんな手法があるのですか? さすが天才。ただのサインではなく絵の背景に盛り込んでいたなんて」
「ほ、ほんとだ! サラの文字が浮き上がっていますわ。こちらの絵はアリゼですわ」
貴族達も次々と絵を渡されて、立体視という聞き慣れない見方を試す。
「そうです。絵の模倣は技術のある画家なら真似ることができます。けれど絵に盛り込んだこの手法は彼しかできないことなのです。ついこのあいだ、彼の絵を見て気がついた次第です」
スティール侯爵がわたしを見てニヤリと笑ったのは気のせいだろうか?
(くっそ! そんな仕掛けがあったとはどう言い逃れすればいい?)
「ふむ。それでこの大作を見れば・・・・・・うーーん、全く文字が浮き出ておらんな。・・・・・・確かにどこを見ても文字が浮き上がる様子はないな。ゴドフロア、お前は嘘を儂についたのか? この多くの貴族達の前で儂に恥をかかせたのだな?」
「それだけではありませんよ。わたしの妻も殺している殺人犯です!」
(ひっ! あ、兄上? し、死人が蘇った?)
「あ、兄上? 死んだはずじゃぁ? なぜ、生きているんだぁーー?」
思わず声を張り上げて・・・・・・皆の視線が一斉にこちらに注がれた。国王陛下の目は罪人を見る目つきに変わっている。
(や、やばい・・・・・・まずいぞ、まずい)
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