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8 実はからくり本が大好き(ルーカスside)
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ルーカス視点
「さぁ、私がルーカス様のお母様になって差し上げますわ! ママンと今日から呼んでくださって構いませんわよ。きっと母親の愛情が欠如していたからこうなったのでしょうね。まずは一緒にしりとり遊びをしてさし上げましょう。それとも積み木がいい? 幼児向け推薦図書の読み聞かせもいいわね」
およそ正気とは思えない発言をしながら病室に入ってきたリッチモンド家の平民女に俺は度肝を抜かす。しかも大きなバッグから取り出したのは”舐めても安全よい子の積み木”と情操教育にこの一冊をの”よい子の飛び出す絵本”であった。
「お前はバカなのか! およそ正気ではあるまい。俺に積み木と絵本を持ってきて、しりとり遊びをしようなんて・・・・・・叔父上、こいつ頭がおかしいです。俺を今すぐここから出してこいつを病院に入れたほうがいい!」
俺は必死になって叔父に意見をした。
(だって、そうだろう? 絶対、変だよ。おかしいだろう? 俺は幼児じゃない!)
「まぁ、恥ずかしがらなくてもいいですわ。さぁて、”リンゴ” はいどうぞ。さぁ、さぁ?」
「??」
「”リンゴ”と言えば”ゴリラ”でしょう。ゴのつく言葉は他にもたくさんありましてよ。ゴーフルとかゴンドラとかね。ちょっと難しかったですか?」
金持ち平民女が俺に憐れんだような眼差しを向けた。
「いやいやいやいや。ちょっと待て!! 俺の知能をバカにするのはやめろ。ゴのつく言葉なら簡単だからっ! いいか、待ってろ。強盗、強欲、極悪、ゴキブリ!! どうだ? 」
俺は胸を張って自慢げに鼻の穴を膨らませたのである。
「んまぁ、連想する言葉が闇すぎますわ。やはり情操教育のところで失敗したようですわね。そうしたら、みんなで力を合わせて一つのことを成し遂げようとする尊いお話を読んでさしあげますからね! 」
「・・・・・・やっぱりこの女、おかしいです」
俺は魚の死んだ目で叔父に目をやったが、叔父はキラキラと輝いた眼差しで金持ち平民女を見つめていた。
(あ、これはダメなやつだ。すっかりこの金持ち平民女に洗脳されている・・・・・・正気に戻れよ!)
「さぁ、読みますよぉーー。むかしむかしのこと。おじいさんが、にんじんのタネを植えました。どんどんおおきくなったそのにんじんはおじいさんよりおおきくなったのです」
「いや。にんじんが人間よりでかくなんてなんねーし」
俺はふてくされながらもそこは訂正したい。
「『よいしょ、よいしょ』ところが、にんじんはビクとも動きません・・・・・・おばあさんが手伝って・・・・・・お母さん・・・・・・お父さん・・・・・・隣のおじさん、おばさん、お姉さん・・・・・・孫に玄孫に・・・・・・馬ロバ羊鶏・・・・・・『よいしょ、よいしょ』・・・・・・どれだけ引っ張ってもにんじんは抜けなかったとさ」
「いや、どんだけ動員してんだよ? しかも抜けないってなんなの? おかしいだろ?」
「まぁ、それほど面白かったですか? すっかりこのお話に引き込まれましたのね。これはつまりどれだけ人を集めてもまたは悩んだとしても、解決できない問題がこの世にはあるのだから気にするなってことですわ! それよりもこうしてたくさんの種族を超えた者同士が協力して一つのことをする、これが素晴らしく尊いという教えなのですわ。結果を気にしてはいけません。努力が大事♪ それよりこの馬ロバ鶏の絵をそっと押してみて下さい。鳴き声が聞こえてきますのよ。場面に応じて音楽も流れます。ここを押してください。ほら音が聞こえてきた。これは最新式の絵本ですわ」
「え! ちょっと貸して。ふむふむ。本当だ。音まででるのか? これはどうやってでるのだろう?」
「音楽は極小のオルゴールをこの本の中に仕掛けてあります。動物の音が出る仕組みは企業秘密ですわ。リッチモンド家が経営する子供向け絵本作成事業部で最近開発した技術がたくさん詰まっているのですわ」
「ほぉ、すごいな、これは。とても気に入った。この登場人物の飛び出し方も斬新だなぁ。あらゆる方向に飛び出すんだな。すごい、すごい・・・・・・」
俺は一心不乱にその飛び出す絵本に見入っていると、叔父がしんみりとした顔でこちらを見ているのに気がついた。
「うんうん。そうか。お前はこういうことが好きだったんだな。もっと早く絵本をたくさん与えていれば良かった」
と叔父。
(ちがっ!!違うってば!! 俺はこの仕組みに興味があるだけだって!! ストーリーに興味があるわけないだろう? 誤解すんな)
「叔父上! 俺は絵本が好きなわけじゃないですよ!」
「いいからいいから。グレイス嬢このような絵本はまだあるだろうか? もっと読ませてやりたい」
「もちろんありますとも!! 開発途中の物も含めたら何百冊もございます。明日にでもまた持ってきましょうね」
「え! そんなに! あ、ありがとう」
俺は自然と頬が緩みお礼を言っていた自分に、はっと気がつき赤面した。俺はからくり本の作成に興味があるんだ。工作のような手を使って何かを作る作業は、剣術や学問よりもずっと好きなのだった。
୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧
有名なロシアの民話となんか似ておりますが気のせいです。結果も違う登場人物も違うので(笑)
ルーカス、更生しそうですかね・・・・・・この先の展開は作者にもわかりません(•́ε•̀;ก)💦
「さぁ、私がルーカス様のお母様になって差し上げますわ! ママンと今日から呼んでくださって構いませんわよ。きっと母親の愛情が欠如していたからこうなったのでしょうね。まずは一緒にしりとり遊びをしてさし上げましょう。それとも積み木がいい? 幼児向け推薦図書の読み聞かせもいいわね」
およそ正気とは思えない発言をしながら病室に入ってきたリッチモンド家の平民女に俺は度肝を抜かす。しかも大きなバッグから取り出したのは”舐めても安全よい子の積み木”と情操教育にこの一冊をの”よい子の飛び出す絵本”であった。
「お前はバカなのか! およそ正気ではあるまい。俺に積み木と絵本を持ってきて、しりとり遊びをしようなんて・・・・・・叔父上、こいつ頭がおかしいです。俺を今すぐここから出してこいつを病院に入れたほうがいい!」
俺は必死になって叔父に意見をした。
(だって、そうだろう? 絶対、変だよ。おかしいだろう? 俺は幼児じゃない!)
「まぁ、恥ずかしがらなくてもいいですわ。さぁて、”リンゴ” はいどうぞ。さぁ、さぁ?」
「??」
「”リンゴ”と言えば”ゴリラ”でしょう。ゴのつく言葉は他にもたくさんありましてよ。ゴーフルとかゴンドラとかね。ちょっと難しかったですか?」
金持ち平民女が俺に憐れんだような眼差しを向けた。
「いやいやいやいや。ちょっと待て!! 俺の知能をバカにするのはやめろ。ゴのつく言葉なら簡単だからっ! いいか、待ってろ。強盗、強欲、極悪、ゴキブリ!! どうだ? 」
俺は胸を張って自慢げに鼻の穴を膨らませたのである。
「んまぁ、連想する言葉が闇すぎますわ。やはり情操教育のところで失敗したようですわね。そうしたら、みんなで力を合わせて一つのことを成し遂げようとする尊いお話を読んでさしあげますからね! 」
「・・・・・・やっぱりこの女、おかしいです」
俺は魚の死んだ目で叔父に目をやったが、叔父はキラキラと輝いた眼差しで金持ち平民女を見つめていた。
(あ、これはダメなやつだ。すっかりこの金持ち平民女に洗脳されている・・・・・・正気に戻れよ!)
「さぁ、読みますよぉーー。むかしむかしのこと。おじいさんが、にんじんのタネを植えました。どんどんおおきくなったそのにんじんはおじいさんよりおおきくなったのです」
「いや。にんじんが人間よりでかくなんてなんねーし」
俺はふてくされながらもそこは訂正したい。
「『よいしょ、よいしょ』ところが、にんじんはビクとも動きません・・・・・・おばあさんが手伝って・・・・・・お母さん・・・・・・お父さん・・・・・・隣のおじさん、おばさん、お姉さん・・・・・・孫に玄孫に・・・・・・馬ロバ羊鶏・・・・・・『よいしょ、よいしょ』・・・・・・どれだけ引っ張ってもにんじんは抜けなかったとさ」
「いや、どんだけ動員してんだよ? しかも抜けないってなんなの? おかしいだろ?」
「まぁ、それほど面白かったですか? すっかりこのお話に引き込まれましたのね。これはつまりどれだけ人を集めてもまたは悩んだとしても、解決できない問題がこの世にはあるのだから気にするなってことですわ! それよりもこうしてたくさんの種族を超えた者同士が協力して一つのことをする、これが素晴らしく尊いという教えなのですわ。結果を気にしてはいけません。努力が大事♪ それよりこの馬ロバ鶏の絵をそっと押してみて下さい。鳴き声が聞こえてきますのよ。場面に応じて音楽も流れます。ここを押してください。ほら音が聞こえてきた。これは最新式の絵本ですわ」
「え! ちょっと貸して。ふむふむ。本当だ。音まででるのか? これはどうやってでるのだろう?」
「音楽は極小のオルゴールをこの本の中に仕掛けてあります。動物の音が出る仕組みは企業秘密ですわ。リッチモンド家が経営する子供向け絵本作成事業部で最近開発した技術がたくさん詰まっているのですわ」
「ほぉ、すごいな、これは。とても気に入った。この登場人物の飛び出し方も斬新だなぁ。あらゆる方向に飛び出すんだな。すごい、すごい・・・・・・」
俺は一心不乱にその飛び出す絵本に見入っていると、叔父がしんみりとした顔でこちらを見ているのに気がついた。
「うんうん。そうか。お前はこういうことが好きだったんだな。もっと早く絵本をたくさん与えていれば良かった」
と叔父。
(ちがっ!!違うってば!! 俺はこの仕組みに興味があるだけだって!! ストーリーに興味があるわけないだろう? 誤解すんな)
「叔父上! 俺は絵本が好きなわけじゃないですよ!」
「いいからいいから。グレイス嬢このような絵本はまだあるだろうか? もっと読ませてやりたい」
「もちろんありますとも!! 開発途中の物も含めたら何百冊もございます。明日にでもまた持ってきましょうね」
「え! そんなに! あ、ありがとう」
俺は自然と頬が緩みお礼を言っていた自分に、はっと気がつき赤面した。俺はからくり本の作成に興味があるんだ。工作のような手を使って何かを作る作業は、剣術や学問よりもずっと好きなのだった。
୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧
有名なロシアの民話となんか似ておりますが気のせいです。結果も違う登場人物も違うので(笑)
ルーカス、更生しそうですかね・・・・・・この先の展開は作者にもわかりません(•́ε•̀;ก)💦
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