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「クダリネ、もうそろそろララ子爵家にお帰りになったらいかがかしら? もう五日もこちらに滞在しているでしょう?」
「嫌よ。お兄様夫婦に私が虐められているのを知っているでしょう? 義姉のシェリー様がとても意地悪なんですもの」
「そうかしら? シェリー様はよく夜会でお会いしますけれど、とても常識のある穏やかな方よ」
「それは猫をかぶっているのですわ。ライラは親友の私の言うことを信じてくれないの?」
涙ぐむクダリネにそれを慰める夫。
「そうだよ。ライラは冷たいよ。クダリネ嬢がこれほど悩んでいるのだぞ。なぜ、寄り添ってあげないんだ?」
「ジェイミーはクダリネの相談に乗りすぎではないかしら? お仕事はきちんとなさっていますか? さきほど家令が、『いい加減、旦那様にお仕事に集中するよう奥様から注意なさってください』と、言われましたよ」
「なんだと? 使用人のくせに生意気だな。あいつはクビだ。そもそもライラの友人だから、無下にできずにこうして相談に乗っているんだよ。ライラはわたしに感謝する必要がないかな?」
「ジェイミーのお考えはわかりました。ではクダリネはどうなの? ここにいて私の旦那様にそれほどべったりと張り付いて、私に申し訳ないと思わないのですか?」
「親友のライラの旦那様だから安心して相談ができるのよ。ライラに申し訳ないと思わなければいけないような、邪な気持ちなど少しもないですわ。そうやってすぐに男女の仲にしようとするのは、ライラの心が汚れすぎているのではないの?」
ジェイミーとクダリネは寄り添うように私の前に立つ。心底呆れていると、来客が来たことを私の専属執事が告げた。
「奥様。キナリヤ伯爵家から使いが来ました。こちらのお手紙を奥様にと」
「どうやらお母様が怪我をしたらしいわ。キナリヤ伯爵領にしばらく帰ります」
手渡された手紙を読んで、早速私はナーディアとともに実家に戻った。
「まぁ、わざわざ来ることはなかったのに。でもライラの顔を見られて嬉しいわ」
お母様は私を抱きしめてくださった。
「ナーディアはライラの幼い頃にそっくりだな」
お父様は早速娘を抱っこしてご満悦だった。
私はしばらく実家にいたわ。だってお母様が心配だったし、お兄様夫妻とも仲良しの私にとって、ここは最高に居心地の良い場所ですもの。
気がつけば一ヶ月も経っており、お兄様は、「もう出戻ってきたらどうだ? ここにずっといればいい。部屋は有り余っているし、なんなら離れをすぐそこの敷地に建ててあげよう」などと、おっしゃった。
「あら、素敵。毎日、ナーディアちゃんと会えるわね」
子供好きの義姉チェルシー様はにっこりと微笑んだ。兄夫妻に子供はいなかった。なかなか授からなくて悩んでいるのも知っているから、私も心を痛めていたのだけれど。
「とにかく、帰るわ。でも、またすぐに戻ってくるかもしれません。ところで、お父様。キナリヤ伯爵家でも1番体格の良いお抱え騎士を5人ほど貸していただけませんか? 女性騎士も一人お願いします」
私はそれだけ言って実家を後にした。
エト伯爵家に着くと・・・・・・ジェイミー付の専属執事が私を止める。
「奥様、いきなりお帰りになられたのですね。なんの連絡もございませんでしたが! しばらくお待ちいただけますか? 庭園の四阿にお茶を用意させます」
「自分の屋敷に戻るのです。なぜ、連絡が必要なのですか? そこをどきなさい!」
わたしの言葉とともに、キナリヤ伯爵家の騎士がジェイミー付の専属執事を押しのける。エト伯爵家のジェイミー寄りの使用人達が立ちはだかるけれど、キナリヤ伯爵家の騎士達を見て後ずさりをした。
私はスタスタと目的地に急ぐ。そう、夫婦の寝室が1番怪しい。私が扉を開けるとそこには・・・・・・
「嫌よ。お兄様夫婦に私が虐められているのを知っているでしょう? 義姉のシェリー様がとても意地悪なんですもの」
「そうかしら? シェリー様はよく夜会でお会いしますけれど、とても常識のある穏やかな方よ」
「それは猫をかぶっているのですわ。ライラは親友の私の言うことを信じてくれないの?」
涙ぐむクダリネにそれを慰める夫。
「そうだよ。ライラは冷たいよ。クダリネ嬢がこれほど悩んでいるのだぞ。なぜ、寄り添ってあげないんだ?」
「ジェイミーはクダリネの相談に乗りすぎではないかしら? お仕事はきちんとなさっていますか? さきほど家令が、『いい加減、旦那様にお仕事に集中するよう奥様から注意なさってください』と、言われましたよ」
「なんだと? 使用人のくせに生意気だな。あいつはクビだ。そもそもライラの友人だから、無下にできずにこうして相談に乗っているんだよ。ライラはわたしに感謝する必要がないかな?」
「ジェイミーのお考えはわかりました。ではクダリネはどうなの? ここにいて私の旦那様にそれほどべったりと張り付いて、私に申し訳ないと思わないのですか?」
「親友のライラの旦那様だから安心して相談ができるのよ。ライラに申し訳ないと思わなければいけないような、邪な気持ちなど少しもないですわ。そうやってすぐに男女の仲にしようとするのは、ライラの心が汚れすぎているのではないの?」
ジェイミーとクダリネは寄り添うように私の前に立つ。心底呆れていると、来客が来たことを私の専属執事が告げた。
「奥様。キナリヤ伯爵家から使いが来ました。こちらのお手紙を奥様にと」
「どうやらお母様が怪我をしたらしいわ。キナリヤ伯爵領にしばらく帰ります」
手渡された手紙を読んで、早速私はナーディアとともに実家に戻った。
「まぁ、わざわざ来ることはなかったのに。でもライラの顔を見られて嬉しいわ」
お母様は私を抱きしめてくださった。
「ナーディアはライラの幼い頃にそっくりだな」
お父様は早速娘を抱っこしてご満悦だった。
私はしばらく実家にいたわ。だってお母様が心配だったし、お兄様夫妻とも仲良しの私にとって、ここは最高に居心地の良い場所ですもの。
気がつけば一ヶ月も経っており、お兄様は、「もう出戻ってきたらどうだ? ここにずっといればいい。部屋は有り余っているし、なんなら離れをすぐそこの敷地に建ててあげよう」などと、おっしゃった。
「あら、素敵。毎日、ナーディアちゃんと会えるわね」
子供好きの義姉チェルシー様はにっこりと微笑んだ。兄夫妻に子供はいなかった。なかなか授からなくて悩んでいるのも知っているから、私も心を痛めていたのだけれど。
「とにかく、帰るわ。でも、またすぐに戻ってくるかもしれません。ところで、お父様。キナリヤ伯爵家でも1番体格の良いお抱え騎士を5人ほど貸していただけませんか? 女性騎士も一人お願いします」
私はそれだけ言って実家を後にした。
エト伯爵家に着くと・・・・・・ジェイミー付の専属執事が私を止める。
「奥様、いきなりお帰りになられたのですね。なんの連絡もございませんでしたが! しばらくお待ちいただけますか? 庭園の四阿にお茶を用意させます」
「自分の屋敷に戻るのです。なぜ、連絡が必要なのですか? そこをどきなさい!」
わたしの言葉とともに、キナリヤ伯爵家の騎士がジェイミー付の専属執事を押しのける。エト伯爵家のジェイミー寄りの使用人達が立ちはだかるけれど、キナリヤ伯爵家の騎士達を見て後ずさりをした。
私はスタスタと目的地に急ぐ。そう、夫婦の寝室が1番怪しい。私が扉を開けるとそこには・・・・・・
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