13 / 23
婚約破棄しましょう-1
しおりを挟む
「デラノ様、明日の王家主催の学期末パーティですが、私を迎えに来る必要はございません。少々用事がございますので、どうぞ先に王宮に向かってくださいませ」
「わかったよ。でも、僕の家には貴族のような立派な馬車なんてないんだ。王宮に行くのがちょっと恥ずかしいなぁ。どうしたらいいんだろう? ああ、そうだ! キャリー様と一緒に行けばいいよね。僕たちで先に王宮へ向かうことにするよ」
「まあ、とても良い考えですわね」
本来なら、デラノはエレノアの婚約者として、こういった場面では他の貴族の男子生徒に声をかけ、馬車に同乗させてもらうのが最善策のはずである。しかし、そんな基本的な案すら思い至らず、キャリーと一緒に王宮へ行けることに浮かれていた。エレノアは冷めた眼差しでその様子を見つめたが、デラノは彼女の冷たい視線に気づくこともなく、ただ笑みを浮かべ続けていた。
王家主催の学期末パーティ当日、キャリーはデラノから贈られたルビーの指輪を誇らしげにはめ、その指輪と同じ色合いのドレスに着替えていた。彼女はマリーに手伝わせながら、デラノとの関係を得意げに話し続けていた。
マリーはキャリーの底知れぬ欲深さと、不敬極まりない態度に困惑していた。キャリーの話題は常にエジャートン公爵家のエレノアを嘲笑するものか、デラノとの密会を自慢するものばかりだったからだ。
キャリーがデラノとともに王宮へ向かった後、しばらくしてクロネリー男爵が久々に屋敷へ戻ってきた。男爵はマリーに向かい、深々と頭を下げて謝罪した。
「すまなかった。今までマリーが辛いめにあっていたとは知らなかったよ。キャリーがマリーを虐げていたなんて、思ってもいなかった。キャリーは私の前ではとても素直な良い子を演じていたんだな」
クロネリー男爵の後ろから姿を現したのは、エレノアとベッカムだった。
「マリー様、今まで本当にお辛かったでしょう。私はあなたがキャリー様に使用人のように扱われていた場面を目撃しましたの。ぜひ、王家主催の学期末パーティにご同行いただきたいのです。キャリー様のこれまでの言動、とくに私やデラノ様に関することを証言していただきたくて」
エレノアは変装して屋敷を訪れた際のことを話した。マリーは驚きながらも、エレノアの行動力に尊敬の念を抱いた。そして、目の前に立つのがエジャートン公爵家の令嬢エレノアとノールズ伯爵家のベッカムであると知ると、緊張しながらも深々とカーテシーをして応じた。
「かしこまりました。私でお役に立てることがあれば、何なりとお申し付けください。キャリーお姉様は、私になんでも話していましたから。ただ……酷い暴言も多く、お耳を汚すかもしれませんが」
「大丈夫ですわ。だいたい察しがついています。キャリー様の近くにいたあなたの証言は非常に重要です。それに、この屋敷のメイドや侍女たちも何人か証人として連れて行きたいのですが」
エレノアはクロネリー男爵に協力を依頼しながら話を進めていった。
王宮内の大広間は金と白を基調とした豪華な装飾が施され、広大な舞踏会場がある。貴族の世界では、未来の婚約やビジネスに関する交渉が進むこともある場所。もちろん、ここは数々の婚約破棄宣言もされた場所でもある。
煌びやかな装いの貴族たちが集う中、国王が壇上に立ち、今期の成績優秀者を称える声が響き渡る。そのなかには、エレノアやベッカムの名前もあった。
会場は拍手に包まれたが、次の瞬間、決意に満ちた表情でエレノアがきっぱりと宣言する。
「デラノ様、ここで私はあなたとの婚約を破棄します! デラノ様に毎月渡していた『支援金』も利息をつけて、きっちり返済していただきます!」
エレノアの声は冷たく、一切の迷いがなかった。
「え? 意味がわからないよ。なぜ僕が婚約破棄されるんだい? 婚約は貴族にとって重要な約束ごとだろう? 理由もなく破棄なんて許されないはずだ」
「それがね、エレノアには婚約を破棄する正当な理由があるんだよ。自分の胸に手を当てて考えてみるんだ。全てを話して反省し、エレノアに心から謝罪したほうがいいと思うよ」
ベッカムは諭すようにデラノに言う。
「は? ベッカム様には関係ないことでしょう? それに、僕が反省することなんて何もないさ」
「デラノ様、最後のチャンスをお与えしましたのに、残念ですわ。では、どうぞ、おひとりづつ証言してください」
エレノアが冷然と言い放つと、大広間の扉が大きく開き、まずは宝石店の店主が現れた。
「おや、それはお二人でお求めになったルビーの指輪ですな。実にお似合いです!」
店主は満面の笑みを浮かべ、キャリーに語りかけたのだった。
「わかったよ。でも、僕の家には貴族のような立派な馬車なんてないんだ。王宮に行くのがちょっと恥ずかしいなぁ。どうしたらいいんだろう? ああ、そうだ! キャリー様と一緒に行けばいいよね。僕たちで先に王宮へ向かうことにするよ」
「まあ、とても良い考えですわね」
本来なら、デラノはエレノアの婚約者として、こういった場面では他の貴族の男子生徒に声をかけ、馬車に同乗させてもらうのが最善策のはずである。しかし、そんな基本的な案すら思い至らず、キャリーと一緒に王宮へ行けることに浮かれていた。エレノアは冷めた眼差しでその様子を見つめたが、デラノは彼女の冷たい視線に気づくこともなく、ただ笑みを浮かべ続けていた。
王家主催の学期末パーティ当日、キャリーはデラノから贈られたルビーの指輪を誇らしげにはめ、その指輪と同じ色合いのドレスに着替えていた。彼女はマリーに手伝わせながら、デラノとの関係を得意げに話し続けていた。
マリーはキャリーの底知れぬ欲深さと、不敬極まりない態度に困惑していた。キャリーの話題は常にエジャートン公爵家のエレノアを嘲笑するものか、デラノとの密会を自慢するものばかりだったからだ。
キャリーがデラノとともに王宮へ向かった後、しばらくしてクロネリー男爵が久々に屋敷へ戻ってきた。男爵はマリーに向かい、深々と頭を下げて謝罪した。
「すまなかった。今までマリーが辛いめにあっていたとは知らなかったよ。キャリーがマリーを虐げていたなんて、思ってもいなかった。キャリーは私の前ではとても素直な良い子を演じていたんだな」
クロネリー男爵の後ろから姿を現したのは、エレノアとベッカムだった。
「マリー様、今まで本当にお辛かったでしょう。私はあなたがキャリー様に使用人のように扱われていた場面を目撃しましたの。ぜひ、王家主催の学期末パーティにご同行いただきたいのです。キャリー様のこれまでの言動、とくに私やデラノ様に関することを証言していただきたくて」
エレノアは変装して屋敷を訪れた際のことを話した。マリーは驚きながらも、エレノアの行動力に尊敬の念を抱いた。そして、目の前に立つのがエジャートン公爵家の令嬢エレノアとノールズ伯爵家のベッカムであると知ると、緊張しながらも深々とカーテシーをして応じた。
「かしこまりました。私でお役に立てることがあれば、何なりとお申し付けください。キャリーお姉様は、私になんでも話していましたから。ただ……酷い暴言も多く、お耳を汚すかもしれませんが」
「大丈夫ですわ。だいたい察しがついています。キャリー様の近くにいたあなたの証言は非常に重要です。それに、この屋敷のメイドや侍女たちも何人か証人として連れて行きたいのですが」
エレノアはクロネリー男爵に協力を依頼しながら話を進めていった。
王宮内の大広間は金と白を基調とした豪華な装飾が施され、広大な舞踏会場がある。貴族の世界では、未来の婚約やビジネスに関する交渉が進むこともある場所。もちろん、ここは数々の婚約破棄宣言もされた場所でもある。
煌びやかな装いの貴族たちが集う中、国王が壇上に立ち、今期の成績優秀者を称える声が響き渡る。そのなかには、エレノアやベッカムの名前もあった。
会場は拍手に包まれたが、次の瞬間、決意に満ちた表情でエレノアがきっぱりと宣言する。
「デラノ様、ここで私はあなたとの婚約を破棄します! デラノ様に毎月渡していた『支援金』も利息をつけて、きっちり返済していただきます!」
エレノアの声は冷たく、一切の迷いがなかった。
「え? 意味がわからないよ。なぜ僕が婚約破棄されるんだい? 婚約は貴族にとって重要な約束ごとだろう? 理由もなく破棄なんて許されないはずだ」
「それがね、エレノアには婚約を破棄する正当な理由があるんだよ。自分の胸に手を当てて考えてみるんだ。全てを話して反省し、エレノアに心から謝罪したほうがいいと思うよ」
ベッカムは諭すようにデラノに言う。
「は? ベッカム様には関係ないことでしょう? それに、僕が反省することなんて何もないさ」
「デラノ様、最後のチャンスをお与えしましたのに、残念ですわ。では、どうぞ、おひとりづつ証言してください」
エレノアが冷然と言い放つと、大広間の扉が大きく開き、まずは宝石店の店主が現れた。
「おや、それはお二人でお求めになったルビーの指輪ですな。実にお似合いです!」
店主は満面の笑みを浮かべ、キャリーに語りかけたのだった。
2,215
あなたにおすすめの小説
あなたの事は好きですが私が邪魔者なので諦めようと思ったのですが…様子がおかしいです
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のカナリアは、原因不明の高熱に襲われた事がきっかけで、前世の記憶を取り戻した。そしてここが、前世で亡くなる寸前まで読んでいた小説の世界で、ヒーローの婚約者に転生している事に気が付いたのだ。
その物語は、自分を含めた主要の登場人物が全員命を落とすという、まさにバッドエンドの世界!
物心ついた時からずっと自分の傍にいてくれた婚約者のアルトを、心から愛しているカナリアは、酷く動揺する。それでも愛するアルトの為、自分が身を引く事で、バッドエンドをハッピーエンドに変えようと動き出したのだが、なんだか様子がおかしくて…
全く違う物語に転生したと思い込み、迷走を続けるカナリアと、愛するカナリアを失うまいと翻弄するアルトの恋のお話しです。
展開が早く、ご都合主義全開ですが、よろしくお願いしますm(__)m
希望通り婚約破棄したのになぜか元婚約者が言い寄って来ます
Karamimi
恋愛
侯爵令嬢ルーナは、婚約者で公爵令息エヴァンから、一方的に婚約破棄を告げられる。この1年、エヴァンに無視され続けていたルーナは、そんなエヴァンの申し出を素直に受け入れた。
傷つき疲れ果てたルーナだが、家族の支えで何とか気持ちを立て直し、エヴァンへの想いを断ち切り、親友エマの支えを受けながら、少しずつ前へと進もうとしていた。
そんな中、あれほどまでに冷たく一方的に婚約破棄を言い渡したはずのエヴァンが、復縁を迫って来たのだ。聞けばルーナを嫌っている公爵令嬢で王太子の婚約者、ナタリーに騙されたとの事。
自分を嫌い、暴言を吐くナタリーのいう事を鵜呑みにした事、さらに1年ものあいだ冷遇されていた事が、どうしても許せないルーナは、エヴァンを拒み続ける。
絶対にエヴァンとやり直すなんて無理だと思っていたルーナだったが、異常なまでにルーナに憎しみを抱くナタリーの毒牙が彼女を襲う。
次々にルーナに攻撃を仕掛けるナタリーに、エヴァンは…
彼を追いかける事に疲れたので、諦める事にしました
Karamimi
恋愛
貴族学院2年、伯爵令嬢のアンリには、大好きな人がいる。それは1学年上の侯爵令息、エディソン様だ。そんな彼に振り向いて欲しくて、必死に努力してきたけれど、一向に振り向いてくれない。
どれどころか、最近では迷惑そうにあしらわれる始末。さらに同じ侯爵令嬢、ネリア様との婚約も、近々結ぶとの噂も…
これはもうダメね、ここらが潮時なのかもしれない…
そんな思いから彼を諦める事を決意したのだが…
5万文字ちょっとの短めのお話で、テンポも早めです。
よろしくお願いしますm(__)m
余命3ヶ月と言われたので静かに余生を送ろうと思ったのですが…大好きな殿下に溺愛されました
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のセイラは、ずっと孤独の中生きてきた。自分に興味のない父や婚約者で王太子のロイド。
特に王宮での居場所はなく、教育係には嫌味を言われ、王宮使用人たちからは、心無い噂を流される始末。さらに婚約者のロイドの傍には、美しくて人当たりの良い侯爵令嬢のミーアがいた。
ロイドを愛していたセイラは、辛くて苦しくて、胸が張り裂けそうになるのを必死に耐えていたのだ。
毎日息苦しい生活を強いられているせいか、最近ずっと調子が悪い。でもそれはきっと、気のせいだろう、そう思っていたセイラだが、ある日吐血してしまう。
診察の結果、母と同じ不治の病に掛かっており、余命3ヶ月と宣言されてしまったのだ。
もう残りわずかしか生きられないのなら、愛するロイドを解放してあげよう。そして自分は、屋敷でひっそりと最期を迎えよう。そう考えていたセイラ。
一方セイラが余命宣告を受けた事を知ったロイドは…
※両想いなのにすれ違っていた2人が、幸せになるまでのお話しです。
よろしくお願いいたします。
他サイトでも同時投稿中です。
次は絶対に幸せになって見せます!
Karamimi
恋愛
侯爵令嬢マリアは、熾烈な王妃争いを勝ち抜き、大好きな王太子、ヒューゴと結婚したものの、結婚後6年間、一度も会いに来てはくれなかった。孤独に胸が張り裂けそうになるマリア。
“もしもう一度人生をやり直すことが出来たら、今度は私だけを愛してくれる人と結ばれたい…”
そう願いながら眠りについたのだった。
翌日、目が覚めると懐かしい侯爵家の自分の部屋が目に飛び込んできた。どうやら14歳のデビュータントの日に戻った様だ。
もう二度とあんな孤独で寂しい思いをしない様に、絶対にヒューゴ様には近づかない。そして、素敵な殿方を見つけて、今度こそ幸せになる!
そう決意したマリアだったが、なぜかヒューゴに気に入られてしまい…
恋愛に不器用な男女のすれ違い?ラブストーリーです。
【完結】愛したあなたは本当に愛する人と幸せになって下さい
高瀬船
恋愛
伯爵家のティアーリア・クランディアは公爵家嫡男、クライヴ・ディー・アウサンドラと婚約秒読みの段階であった。
だが、ティアーリアはある日クライヴと彼の従者二人が話している所に出くわし、聞いてしまう。
クライヴが本当に婚約したかったのはティアーリアの妹のラティリナであったと。
ショックを受けるティアーリアだったが、愛する彼の為自分は身を引く事を決意した。
【誤字脱字のご報告ありがとうございます!小っ恥ずかしい誤字のご報告ありがとうございます!個別にご返信出来ておらず申し訳ございません( •́ •̀ )】
妹に婚約者を奪われましたが、私の考えで家族まとめて終わりました。
佐藤 美奈
恋愛
セリーヌ・フォンテーヌ公爵令嬢は、エドガー・オルレアン伯爵令息と婚約している。セリーヌの父であるバラック公爵は後妻イザベルと再婚し、その娘であるローザを迎え入れた。セリーヌにとって、その義妹であるローザは、婚約者であり幼馴染のエドガーを奪おうと画策する存在となっている。
さらに、バラック公爵は病に倒れ寝たきりとなり、セリーヌは一人で公爵家の重責を担うことになった。だが、イザベルとローザは浪費癖があり、次第に公爵家の財政を危うくし、家を自分たちのものにしようと企んでいる。
セリーヌは、一族が代々つないできた誇りと領地を守るため、戦わなければならない状況に立たされていた。異世界ファンタジー魔法の要素もあるかも?
他の人を好きになったあなたを、私は愛することができません
天宮有
恋愛
公爵令嬢の私シーラの婚約者レヴォク第二王子が、伯爵令嬢ソフィーを好きになった。
第三王子ゼロアから聞いていたけど、私はレヴォクを信じてしまった。
その結果レヴォクに協力した国王に冤罪をかけられて、私は婚約破棄と国外追放を言い渡されてしまう。
追放された私は他国に行き、数日後ゼロアと再会する。
ゼロアは私を追放した国王を嫌い、国を捨てたようだ。
私はゼロアと新しい生活を送って――元婚約者レヴォクは、後悔することとなる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる