(完結)だったら、そちらと結婚したらいいでしょう?

青空一夏

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強制労働の場(コミカルな展開版)

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 ※こちらは笑える?展開かも。シラミやノミに悩まされるコミカルなざまぁ?になっています。シラミやノミを想像するのが苦手という方は自己判断でお読みください。

 •───⋅⋆⁺‧₊☽⛦☾₊‧⁺⋆⋅───•
 
 

 坑道のなかは狭くて空気が重い。壁や天井には鉱石が露出し、ところどころで坑道用ランプの明かりが薄暗い空間を照らす。労働者たちは無言でエメラルドの原石を掘り続けていた。

 デラノとキャリーもつるはしで石を砕き、エメラルドの鉱石を少しずつ削り出している。ここに送られてわずか三日しか経っていないにも拘わらず、ふたりの服はボロボロで汚れにまみれた体からは、酸っぱい匂いが漂っていた。

「くさいわね! デラノ、もう少しあっちに行ってよ。あんたの髪からおかしな匂いがするわよ」
「キャリーこそ、ぼさぼさの長い髪が妖怪みたいだ。しかも、なんか小さな粒みたいな……なんだ、これ? うわっ、動いてる!」
 
「えっ? なになに? なにが動いているのよ? ん? ただのゴミでしょう? きゃぁ~、生きてるわよ、これ……動いてる」
 
 鞭をもった監視者のひとり、ホリスがピシリッとふたりの立つ地面を打ちつける。大柄で屈強な体つきなのに、酒に酔うと「女性に生まれたかった」とおいおい泣く、心は乙女な男であった。
 
「そこの若夫婦、サボるんじゃないわよぉ~。まったくシラミぐらいで騒いで……ここにはシラミもノミもゴキブリもいるのよぉ。当たり前のことでしょぉ~。生きている証拠~。共存するって素晴らしいわねっ」
 腰をくねくねと揺らせながら、うふふっと笑うホリスの唇には、うっすら口紅が塗られていた。
 
「あいつはやばいよ。なんか去り際に僕のお尻にタッチしたような気がするんだ」
「ばかばかしい。ただの気のせいだわよ。それより、デラノがもっと早くエレノア様に謝ってたら、こんな場所にいなかったのよ!」
 
 デラノは首を振りながら、ため息をついた。
「なんだって僕のせいなんだ?  君がクロネリー男爵夫人に悪さをしたからだろう? あれは犯罪だよ。国が違えば、絞首刑さ」
 以前は暇さえあれば密会を重ね愛をささやきあっていたはずなのに、今のふたりはいつも喧嘩ばかりだ。

 エメラルド鉱山の施設はどこも不衛生で、衛生管理などはまるで考慮されていなかった。毎日汗をかいているにもかかわらず身体を洗うのは数日おきで、清潔さを保つことなど到底できない。そのため、この場所ではシラミやノミ、さらにはゴキブリやハエなどが大量に発生していた。



 シラミ──それはデラノとキャリーにとって、まさに手強い宿敵だった。毎日、耐え難いかゆみに悩まされ、眠れない夜を過ごす日々が続く。

「皆にプレゼントがあるわよぉ~。これ、シラミ取りに効く特製オイル。私の自信作なの。ただし、注意書きはちゃんと読んでね!」

 ある日、ホリスが鉱山の仲間たちにシラミ退治オイルを配った。鉱夫たちはその効果を期待して、歓声を上げた。

「やった! これでシラミとはおさらばだ!」

 デラノはさっそくオイルを手に取り、髪や脇毛、さらには下の毛にまで塗り込んだ。キャリーも同じように体中にオイルを塗り込むと、二人は爽やかな香りに包まれ、満足そうに頷き合った。

「しっかり効かせるために、夕方まで放っておくぞ」
「うん、賛成! オイルの成分をしっかりと染みこませるのね?」

 だが、時間が経つにつれて、状況は思いもよらぬ方向へと進んでいった。ちなみに、二人がオイルを塗ったのは朝のこと。今ではすっかり日が暮れかかり、辺りは薄暗くなり始めている。

「なんだ、これ……痛ぇ!」
 デラノは急に頭や脇の下、下腹部にヒリヒリとした痛みを感じ始める。

「おい、キャリー! これ、やばくないか?」

「え? うわっ、私も痛い!」

 二人は慌ててオイルを洗い流そうとするが、事態は既に手遅れだった。そこにホリスが軽やかに現れる。

「どうしたのぉ~?  あら、大変!  それ、すぐに洗い流すタイプなのよ。注意書き、読まなかったの? まぁ大丈夫、毛根が死滅するだけだから☆」

「毛根が……死滅?  それって、もう髪が生えないってことか?」
 デラノは叫びながら頭を押さえたが、黒髪が次々と抜け落ちていく。

「あっ、あぁ~!  僕の髪がぁ~!」

 キャリーも同様で、桃色の髪が床に散らばり、オイルまみれの髪にはたくさんのシラミの死骸が絡まっていた。シラミ退治は確かに成功したが、彼らにとってはあまりにも代償が大きかった。

 それ以来、デラノとキャリーは常に帽子を手放せない生活を送ることとなった。


 そして、次に二人を苦しめたのはノミだった。シラミの問題が片付いたと思った矢先、今度は全身を掻きむしり、眠れぬ夜が続く日々が始まった。そんな中、鉱山で働く別の労働者から「ケムイダケダヨ草を燃やせばノミが退散する」という噂を耳にする。デラノはその草を急いで集め、希望に満ちた表情で言った。

「これで今夜はぐっすり眠れるぞ!」

 彼は草の束に火をつけた。煙がもくもくと立ち上り、あっという間に小屋全体に広がっていく。しかし、煙は想像以上に濃く、ノミどころか二人の目にも容赦なく入り込んできた。

「うっ……ゴホゴホッ! 息が……できない!」
 キャリーが激しく咳き込み、デラノも慌てて鼻と口を押さえる。

「おい、本当に息ができないぞ!」 
「バカね、手で鼻と口を押さえているからよ!」

 慌てて窓を開けるが、すでに小屋は煙で満たされ、次第に火が回り始めた。

「外に出ろ!」
 デラノはキャリーの腕を掴み、二人で小屋の外へ逃げ出す。冷たい夜風に包まれ、肩で息をしながら互いを見つめ合う。

「小屋が……燃えちゃったわよ……」
 涙目で訴えるキャリーに、デラノは汗を拭いながら反論する。

「まさかこんなことになるなんて思わなかったさ。でも、ノミは……たぶんいなくなっただろ?」

 だが、キャリーが腕を掻きながら指さした先では、元気に飛び跳ねるノミたちの姿があった。

 二人は絶望に打ちひしがれた。結局、その夜から外で震えながら寝ることになったが、しがみついてくるノミは、彼らから離れることはなかった。



•───⋅⋆⁺‧₊☽⛦☾₊‧⁺⋆⋅───•

 次回は、通常よくあるパターンかも的なざまぁで、読者様の意見をとりいれたものを、書かせていただきます。多分、次のが一番しっくりくるかも。
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