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5 最終話 これは意味のある死よ(アニー視点)
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ꕤ୭*アニー視点(リリの妹)
「ロメオ様だわ! 毒を盛ったのはロメオ様よ」
私はそう叫んでお姉様を抱きかかえたが、すでに息はしていない。
「ロメオとアンナをすぐさま拘束しろ!」
国王陛下がおっしゃって、王妃殿下はこの惨状に気絶してしまった。
「ロメオ様が犯人に違いありません。ロメオ様がさきほど毒を盛るのを見ました!」
「いつもリリ様にお金を無心して、自分がマスカ侯爵になると公言していました」
「アンナ様はいつもリリ様が邪魔だとため息をついておりました」
侍女や侍従などの使用人達は、今までのロメオ様とアンナの横暴をさんざん目にしており、反感や不満でいっぱいだった。お姉様がロメオ様を愛していたのにも拘わらず、愛されずに苦悩していた様子を見てきた者達は、この二人が犯人だと決めてかかった。
実際お姉様が亡くなって得をするのはロメオ様とアンナだけだし、常日頃の行いの悪さは自分の首を絞めるのだといういい教訓になっただろう。
お姉様に同情的だった社交界の貴族達も同じ反応で、この二人がお姉様を殺したのだと叫びだす。
なによりお姉様の最期の言葉が貴族達の涙を誘った。
「私はあなた方を許しますわ」
この言葉は毒を盛ったロメオ様達を許すという意味にもとられ、つまりは犯人はロメオ様達だと告発したのだと、国王陛下をはじめ貴族達が涙ながらにそう解釈したのだった。
誰ひとり庇う者はおらず形だけの裁判では満場一致でロメオ様とアンナの処刑が決まり、その3日後には断頭台の露と消えたのだった。
ロメオ様に殺されたお姉様! あんなに愛していた人から殺されるなんてきっと悔しかったに違いない。
「アニー。悲しまなくていいのよ? リリは最期の瞬間は、とても嬉しがっていたはずよ。この手紙を読んでごらんなさい」
両親が差し出した手紙は、お姉様の好きな薔薇の透かし模様の便せんで、ほのかにお姉様愛用の香水の香りがした。
愛する妹のアニーへ
私はロメオから受け取ったグラスに口をつける前に、自分の右手の小指の爪に仕込んだ猛毒の粉を舐めるだろう。以前から小指の爪を噛む癖のある私に周囲は気にもとめないはず。
多分その瞬間は少しだけ舌がしびれるかもしれない。でも、水を一気に飲み干せば毒の粉は速やかに私の口の中に広がり死へと誘う儀式が始まるわ。
死ぬのは怖いけれどこの死は歓迎するべきものよ。私には見えるわ。私が毒を飲み血を吐く瞬間のお母様とお父様の悲しそうな顔、驚きの表情を浮かべるアニーの顔。私もあなたたちとは離れたくなかった。大好きな家族ですもの!
ロメオとアンナの驚愕の表情はおもしろいでしょうね。私は彼らに最期の言葉をかけるでしょう。これは、魔法の言葉なのよ。
「・・・・・・私はあなた方を許しますわ」
そう、これは復讐なの。なんで命まで賭けたかって? 違うのよ・・・・・・私は難病にかかっていたの。脳が萎縮していく病気で、治療方法は存在しない。運動機能も言語能力も失われ、最期にはものを飲み込むことすらできなくなる。進行速度はとても速く余命は半年もなかった私。
「お父様、お母様。どんどん弱っていく自分を見るのは辛いです。できれば元気なうちに安楽死をさせてください」
これは私の人間の尊厳の問題だったわ。治る見込みもなく植物人間になり死んでいく自分の末路を体験するより、楽しい思い出でと元気な頃の自分の記憶だけで逝きたかったの。
ロメオとの婚約を破棄する直前に知ったこの病気を、夜会の庭園でロメオの邪悪な計画を聞いた私は、神に感謝さえした。
私の妹のあなたもいずれは殺すと言いながら、この二人は笑い合っていたわ。マスカ侯爵家を乗っ取るつもりだったロメオとアンナは危険だし許せない。この命をもって、この二人を懲らしめアニーを守れることに私は満足よ。
両親にこの計画を話し、あなたには手紙にこうして綴った。私のことを大好なあなたは、この病気のことを教えたら取り乱して冷静ではいられないでしょう? 私の演技は完璧だったかしら? 結果を見ることができなくて残念だけれど、病気でおかされてベッドで苦しみながら逝くよりは数百倍意義のある死に方ができたの。
だから、悲しまないで! 喜んでちょうだい! 私の意味のある死を!
追伸: 私の友人達にもこの計画はナイショだった。この計画の為に最期は親しい友人と距離を置くことになったのが唯一の残念なことだわ。私の親しい友人が、すっかり老人になった頃にでもこの手紙を見せてほしいわ。
私の親友達へ!! ちょっと逝くのが早すぎた私だけれど、あっちで待っているわよ! また一緒にワインを飲んで楽しい時間を過ごしましょう。私はあなたたちが来るまでに時間がたっぷりあると思うから、チーズケーキとローストビーフでも焼きながら待っているわ!
「ロメオ様だわ! 毒を盛ったのはロメオ様よ」
私はそう叫んでお姉様を抱きかかえたが、すでに息はしていない。
「ロメオとアンナをすぐさま拘束しろ!」
国王陛下がおっしゃって、王妃殿下はこの惨状に気絶してしまった。
「ロメオ様が犯人に違いありません。ロメオ様がさきほど毒を盛るのを見ました!」
「いつもリリ様にお金を無心して、自分がマスカ侯爵になると公言していました」
「アンナ様はいつもリリ様が邪魔だとため息をついておりました」
侍女や侍従などの使用人達は、今までのロメオ様とアンナの横暴をさんざん目にしており、反感や不満でいっぱいだった。お姉様がロメオ様を愛していたのにも拘わらず、愛されずに苦悩していた様子を見てきた者達は、この二人が犯人だと決めてかかった。
実際お姉様が亡くなって得をするのはロメオ様とアンナだけだし、常日頃の行いの悪さは自分の首を絞めるのだといういい教訓になっただろう。
お姉様に同情的だった社交界の貴族達も同じ反応で、この二人がお姉様を殺したのだと叫びだす。
なによりお姉様の最期の言葉が貴族達の涙を誘った。
「私はあなた方を許しますわ」
この言葉は毒を盛ったロメオ様達を許すという意味にもとられ、つまりは犯人はロメオ様達だと告発したのだと、国王陛下をはじめ貴族達が涙ながらにそう解釈したのだった。
誰ひとり庇う者はおらず形だけの裁判では満場一致でロメオ様とアンナの処刑が決まり、その3日後には断頭台の露と消えたのだった。
ロメオ様に殺されたお姉様! あんなに愛していた人から殺されるなんてきっと悔しかったに違いない。
「アニー。悲しまなくていいのよ? リリは最期の瞬間は、とても嬉しがっていたはずよ。この手紙を読んでごらんなさい」
両親が差し出した手紙は、お姉様の好きな薔薇の透かし模様の便せんで、ほのかにお姉様愛用の香水の香りがした。
愛する妹のアニーへ
私はロメオから受け取ったグラスに口をつける前に、自分の右手の小指の爪に仕込んだ猛毒の粉を舐めるだろう。以前から小指の爪を噛む癖のある私に周囲は気にもとめないはず。
多分その瞬間は少しだけ舌がしびれるかもしれない。でも、水を一気に飲み干せば毒の粉は速やかに私の口の中に広がり死へと誘う儀式が始まるわ。
死ぬのは怖いけれどこの死は歓迎するべきものよ。私には見えるわ。私が毒を飲み血を吐く瞬間のお母様とお父様の悲しそうな顔、驚きの表情を浮かべるアニーの顔。私もあなたたちとは離れたくなかった。大好きな家族ですもの!
ロメオとアンナの驚愕の表情はおもしろいでしょうね。私は彼らに最期の言葉をかけるでしょう。これは、魔法の言葉なのよ。
「・・・・・・私はあなた方を許しますわ」
そう、これは復讐なの。なんで命まで賭けたかって? 違うのよ・・・・・・私は難病にかかっていたの。脳が萎縮していく病気で、治療方法は存在しない。運動機能も言語能力も失われ、最期にはものを飲み込むことすらできなくなる。進行速度はとても速く余命は半年もなかった私。
「お父様、お母様。どんどん弱っていく自分を見るのは辛いです。できれば元気なうちに安楽死をさせてください」
これは私の人間の尊厳の問題だったわ。治る見込みもなく植物人間になり死んでいく自分の末路を体験するより、楽しい思い出でと元気な頃の自分の記憶だけで逝きたかったの。
ロメオとの婚約を破棄する直前に知ったこの病気を、夜会の庭園でロメオの邪悪な計画を聞いた私は、神に感謝さえした。
私の妹のあなたもいずれは殺すと言いながら、この二人は笑い合っていたわ。マスカ侯爵家を乗っ取るつもりだったロメオとアンナは危険だし許せない。この命をもって、この二人を懲らしめアニーを守れることに私は満足よ。
両親にこの計画を話し、あなたには手紙にこうして綴った。私のことを大好なあなたは、この病気のことを教えたら取り乱して冷静ではいられないでしょう? 私の演技は完璧だったかしら? 結果を見ることができなくて残念だけれど、病気でおかされてベッドで苦しみながら逝くよりは数百倍意義のある死に方ができたの。
だから、悲しまないで! 喜んでちょうだい! 私の意味のある死を!
追伸: 私の友人達にもこの計画はナイショだった。この計画の為に最期は親しい友人と距離を置くことになったのが唯一の残念なことだわ。私の親しい友人が、すっかり老人になった頃にでもこの手紙を見せてほしいわ。
私の親友達へ!! ちょっと逝くのが早すぎた私だけれど、あっちで待っているわよ! また一緒にワインを飲んで楽しい時間を過ごしましょう。私はあなたたちが来るまでに時間がたっぷりあると思うから、チーズケーキとローストビーフでも焼きながら待っているわ!
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