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3 旦那様に子供ができました

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   あら、まぁ。旦那様はまるで恋をする乙女のようだわ。目をキラキラさせて夢見る少女のようでもあった。

 この人、こんな表情もできるんだ。私の前ではいつも無表情だったので、表情筋がうまく機能しない人なのかと思っていたわ。

 「どうぞ、ご自由になさってください」

 旦那様を冷静に観察しつつ、あまり興味もないので、さらりとお返事を返す。愛人を迎えるのは、貴族の世界では決して珍しくはない。だから、敢えて反対はしなかった。旦那様は離れに入り浸り、本邸で夕食を召し上がることもなくなった。それでも夫婦生活は定期的に行った。私には跡継ぎを生むという目標がありますからね。

 しかし、男性は知っておいた方が良い。あなたが思っているほど、女性を喜ばせる能力は高くないかもしれないということを。

 

「愛する女に子供ができたから別れてくれ! その子供をウィンザー侯爵家の跡継ぎにする。なかなか妊娠できないイレーヌとは別れるよ。跡継ぎが生めないのだから、文句はないだろう?」

 旦那様が愛人を迎えてから半年ほど経ったある日のこと、満面の笑みを浮かべながら本邸にいらして、私に宣言した。私は居間で紅茶をいただきながら寛いでいたところだった。うららかな午後の日差しが窓から差し込んで、居間は明るさに包まれて、気持ちの良い日だったのに台無しだわね。

義理のお母様(ウィンザー侯爵夫人)は、いつものようにお買い物にお出かけしており、ウィンザー侯爵様は執務室で、多分お昼寝の真っ最中でしょう。

 

「私、エリック様の子供を妊娠しましたの。この子はウィンザー侯爵家を継ぐ子供ですわ。ですから、本邸から出て行ってくださらない?」

 傍らには旦那様の従姉妹のアニー・シュミット伯爵令嬢が儚げな微笑を浮かべて寄り添っていた。まさか、伯爵家のお嬢様が愛人として離れに住んでいたとは、思いもしなかった。シュミット伯爵家は、最近事業で失敗した記憶が新しい。

「旦那様と離縁できるなんて嬉しいですわ。でも、本当にそれでよろしいのですか?」

 私は心からの笑顔を見せた。ウィンザー侯爵家の筆頭執事が血相を変えて駆けてくるが、旦那様の私への離婚の宣言は、私の専属侍女たちが聞いている。今更、その言葉が覆ることはない。

 旦那様、お覚悟はよろしくて?
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