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「泣かないで。そんなに母親が泣いたら子供達も不安になるわ。なにがあったか聞かせてくれる?」
「・・・・・・離縁されました」
わたくしはそれしか言わなかった。女の子しか産めなくて蔑まれたことや愛人が妊娠していることなど、ここで口にしたら余計惨めな気持ちになって、泣き止むことなどできないと思ったからだ。
「そう。3人も子供がいるというのに、アーネル伯爵はずいぶん薄情な方なのね。ここにずっといればいいわ。あたくし達夫婦には子供がいないし、前から女の子がとても欲しいと思っていたの。あたくしは、マーリン様の味方よ」
「本当に? そのようにさせてもらっていいのでしょうか?」
「もちろんよ」
マティアスお兄様も、「ずっといていいんだよ」と、言ってくれた。
わたくしはローセンブラード男爵家の離れに住まわせてもらい、そこで子育てをさせてもらう。お兄様とサーラ様には感謝してもしきれない。わたくしの子供達もサーラ様にとても懐いた。
「女の子って本当に愛らしいわね。可愛いドレスをたくさん着させることができるなんて夢みたい」
サーラ様がテオドーラに、ピンクのドレスを着させながら微笑む。
「女の子だからお父様はかわいがってくれなかったのに、サーラ伯母様はとても優しいし、マティアス伯父様もいつも話しかけてくださるから、ここに来てからのほうがずっと幸せです」
テオドーラは、サーラ様に笑いながら抱きついた。
「かわいがってもらえなかったの? どうして?」
サーラ様は困惑したような表情を浮かべる。
「あ、あの。申し上げなかったのですが、オリヤンは直系の男子でないと爵位が継げないからと言って、子供達には関心がありませんでした。・・・・・・それに愛人もいて妊娠したということで追い出されました。多分、その方が男子を出産することを期待したのだと思います」
「はぁーー? オリヤン・アーネル伯爵は最低ね。オリヤン様の弟バート様の亡き奥方は、あたくしの大親友だったのよ。バート様はこのことを知っているのかしら?」
「オリヤンはバート様のことを嫌っていたので、交流は全くなかったです。離婚したことは知っていらっしゃると思いますけれど、オリヤンがバート様に詳細を語ることはないと思います」
「まぁ、そうよね。自分が浮気して離婚を言い出したなんて弟には言えないわね。それにしても兄弟で全然性格が違うのね。バート様はとても愛妻家だったし子煩悩よ」
それからしばらくして、オリヤンの弟バート様がローセンブラード男爵家を訪れた。バート様は先代のアーネル伯爵から子爵位を受け継ぎバート・ゴールドハーゲン子爵だ。
「申し訳ない。兄上は昔から傲慢なんだよ。まさかそんな形で離婚したとは思わなかったよ。確かに直系の男子しか爵位は継げないけれど、甥を養子にする貴族も多いし、そんなことで離婚なんて・・・・・・その愛人と一緒になりたかっただけだと思う。ゲスな兄で面目ないよ」
バート様はわたくしに何度も謝ってくださった。
「バート様が謝ることではありません。そんな男性を選んだわたくしが愚かだっただけです。お付き合いしていた頃はとても優しかったのですけれど」
「・・・・・・なにか困ったことがあったら気軽に言って。わたしの子供とマーリン様の子供は従兄弟だし、たまには一緒に遊ばせよう」
バート様の奥様ジェリカ様は3年前に亡くなっていた。そのジェリカ様はサーラ様と学園時代の親友だったから家族ぐるみの付き合いがあり、今ではバート様はお兄様と共同事業もしていると聞く。
世の中って狭いな、と思う。思わぬところでバート様と出会って、わたくし達はいつのまにかお互いの子供を連れてピクニックに行くようにまでなっていた。もちろんそこにはお兄様夫婦もいるけれど、とても寛げて安心できる場所を手に入れたと思った。
そんなときに、オリヤンが車椅子でローセンブラード男爵家にやって来たのだった。
「実は、馬車の事故にあってね。腰から下がまるで機能しない。新しく迎えた妻は子供を連れて出て行った。聞いてくれよ。その子供はやっぱり女の子だったんだよ。こうなったら、もうマーリンでもいい。もう一回戻って来てくれ。女の子しか産まなかったことは許してあげるから」
「・・・・・・離縁されました」
わたくしはそれしか言わなかった。女の子しか産めなくて蔑まれたことや愛人が妊娠していることなど、ここで口にしたら余計惨めな気持ちになって、泣き止むことなどできないと思ったからだ。
「そう。3人も子供がいるというのに、アーネル伯爵はずいぶん薄情な方なのね。ここにずっといればいいわ。あたくし達夫婦には子供がいないし、前から女の子がとても欲しいと思っていたの。あたくしは、マーリン様の味方よ」
「本当に? そのようにさせてもらっていいのでしょうか?」
「もちろんよ」
マティアスお兄様も、「ずっといていいんだよ」と、言ってくれた。
わたくしはローセンブラード男爵家の離れに住まわせてもらい、そこで子育てをさせてもらう。お兄様とサーラ様には感謝してもしきれない。わたくしの子供達もサーラ様にとても懐いた。
「女の子って本当に愛らしいわね。可愛いドレスをたくさん着させることができるなんて夢みたい」
サーラ様がテオドーラに、ピンクのドレスを着させながら微笑む。
「女の子だからお父様はかわいがってくれなかったのに、サーラ伯母様はとても優しいし、マティアス伯父様もいつも話しかけてくださるから、ここに来てからのほうがずっと幸せです」
テオドーラは、サーラ様に笑いながら抱きついた。
「かわいがってもらえなかったの? どうして?」
サーラ様は困惑したような表情を浮かべる。
「あ、あの。申し上げなかったのですが、オリヤンは直系の男子でないと爵位が継げないからと言って、子供達には関心がありませんでした。・・・・・・それに愛人もいて妊娠したということで追い出されました。多分、その方が男子を出産することを期待したのだと思います」
「はぁーー? オリヤン・アーネル伯爵は最低ね。オリヤン様の弟バート様の亡き奥方は、あたくしの大親友だったのよ。バート様はこのことを知っているのかしら?」
「オリヤンはバート様のことを嫌っていたので、交流は全くなかったです。離婚したことは知っていらっしゃると思いますけれど、オリヤンがバート様に詳細を語ることはないと思います」
「まぁ、そうよね。自分が浮気して離婚を言い出したなんて弟には言えないわね。それにしても兄弟で全然性格が違うのね。バート様はとても愛妻家だったし子煩悩よ」
それからしばらくして、オリヤンの弟バート様がローセンブラード男爵家を訪れた。バート様は先代のアーネル伯爵から子爵位を受け継ぎバート・ゴールドハーゲン子爵だ。
「申し訳ない。兄上は昔から傲慢なんだよ。まさかそんな形で離婚したとは思わなかったよ。確かに直系の男子しか爵位は継げないけれど、甥を養子にする貴族も多いし、そんなことで離婚なんて・・・・・・その愛人と一緒になりたかっただけだと思う。ゲスな兄で面目ないよ」
バート様はわたくしに何度も謝ってくださった。
「バート様が謝ることではありません。そんな男性を選んだわたくしが愚かだっただけです。お付き合いしていた頃はとても優しかったのですけれど」
「・・・・・・なにか困ったことがあったら気軽に言って。わたしの子供とマーリン様の子供は従兄弟だし、たまには一緒に遊ばせよう」
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