(完)子供も産めない役立たずと言われて・・・・・・

青空一夏

文字の大きさ
37 / 50

愚かな第一王子と、人ではない者

しおりを挟む
(第一王子side)
  父上は、アレクサンダーとマイケルを可愛がりすぎている。実の息子の私の立場がないじゃないか! 王宮での会合や、大事な場面では常にあの二人が側にいて、近づくこともできない。

 マイケルと結婚したセリーヌ王女は実の妹のくせに、アレクサンダーをお兄様と呼んで幼い頃から懐いていた。私を蛇でも見るような眼差しで見やがる。確かに、あいつが泣くのが楽しくてちょっと悪戯したことはある。セリーヌ王女の侍女の服に火をつけたり、転ばせて怪我をさせたり・・・・・・。

「お兄様! 私の侍女を殺すおつもりですか? この者がなにをしたというのです?」

 バカみたいに怒った。侍女なんて、いくらでもいるさ。その侍女に拘る必要がどこにある? 

「うるさいな! 暇で退屈だったからだ。そんな侍女の一人ぐらい死のうと生きようと、私達王族が気にかけることではない」

 セリーヌはあれから、私をお兄様とは呼ばなくなった。愚か者が! 父が亡くなれば、私が王になるんだぞ!王の息子は私だけだ! なのに、妙な噂が入った。

「「どうやら、王位は甥の英雄のアレクサンダー様に譲るようだ。あの残酷王子が継いだら、どうなることかと思っていたが・・・・・・良かったなぁ」」

 ふざけるな! 嫡男の私こそが王に相応しい。あのアレクサンダーが溺愛してやまない美しいグレイスのお気に入りの侍女リリィを、総騎士団長ルシファーの息子に嫁がそう。人質に利用しようと思った。ところが、あの卑しい侍女は断ってきたという。身の程知らずは、思い知ったほうがいい。

「フェルナンデス! その生意気なリリィに思い知らせてやればよかろう。あの女はもと罪人で、過去は娼婦のような飲み屋の女だ」

 私は、フェルナンデスにそう言った。しかし、その後、フェルナンデスがマイロ女公爵に捕らえられ、リリィが虫の息だったことを聞かされた。フェルナンデスは私の許可もなく、拷問にかけられているという。なんでだ? たかが、侍女一人の為に大事な騎士を拷問するとは!

 おかしくないか? たかが、王の姉というだけで、なんでやりたい放題が許される? ここは法治国家だぞ?


*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚



「宣戦布告といきましょう。我が息子が捕らえられた! なんとしても、奪い返さなくては」

 ルシファーが、怒りで顔を赤黒く染めた。

「マイロ女公爵はもともと大嫌いなのよ! その妹もね! いつでも偉そうで! 私の姉のオータム女公爵もあの派閥だわ! 忌々しい! 王妃の私よりも権限を与えられ、多くの富をもつという。おかしいじゃないの ?これは粛清ですわ! 宣戦布告なさい!」

 母上も興奮して、叫んだ。私に異論はない。父である王を監禁し、宣言した。

「アレクサンダー・アティカス候爵、その母、マイロ女公爵は国外追放! アレクサ女公爵とオータム女公爵も同じ処分とする。マイケル・カリブ伯爵は、王女の夫であるから公爵に取り立てる!」

 その私の宣言を、監禁された王が侍従から伝え聞き、ため息をついてこう言ったことは私には知るよしもなかった。

「あぁ、バカ息子が自ら粛清されにいこうとは・・・・・・まぁ、いいか・・・・・・あんな者がいては国の為にはならん。ふふふっ。あの龍に久しぶりに会えそうだな。先々代の王が、やはり王族同士の争いごとで使ったという・・・・・・」


*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚

第三者視点

 マイケル・カリブ伯爵は、第一王子からの書状を破った。

「アレクサンダー達を追放するだと! ばかばかしい! 私は、当然だがアレクサンダー派だ。セリーヌよ、貴女の兄を斬ることになるやもしれん。・・・・・・すまないな・・・・・・」


「いいえ・・・・・・あれは兄ではありません。残酷王子ですよ。あの方が、幼いころよりしてきた悪行は数えきれないほどです。それより、お父様は大丈夫でしょうか・・・・・・」

「大丈夫だとも! とにかく、アレクサンダーの屋敷に行こう!」

 そうして、全ての、今回の当事者達が、アティカス候爵家の屋敷に集まったのだった。

「母上、やはり、こんなことになりましたね?」

 アレクサンダーは顔を曇らせながら眉根をよせた。

「なぁに。案ずることはなにもない。グレイスは知っているが、アレクには言っていなかった秘密がある。これは、マイロ女公爵を継ぐ者だけの秘密だった。今こそ明かそう。影よ、出でよ」

 王家の総騎士団員の数に勝るとも劣らない人数の黒装束の者達が、アティカス候爵家の広大な庭園を埋め尽くした。

「この者達は、先代王が私に託した者だ。騎士とは違う特殊訓練を受け、剣ではない術を使う。さて、妹よ? あなたが、貰ったものはなんだろう?」

「うふふ。私も初めて、召喚するのですよ。王族同士が争ったら、必ずこの者が鎮めてくれると言われました」

 大きな水晶の中には黄金色の小さな龍の姿が見えた。

「なんと! これは、オモチャではないのか? こんな小さなトカゲのような龍では、なんの助けになろうか?」

 マイロ女公爵の呟きと同時に、その水晶が割れ・・・・・・

しおりを挟む
感想 263

あなたにおすすめの小説

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

【完結】貴方が好きなのはあくまでも私のお姉様

すだもみぢ
恋愛
伯爵令嬢であるカリンは、隣の辺境伯の息子であるデュークが苦手だった。 彼の悪戯にひどく泣かされたことがあったから。 そんな彼が成長し、年の離れたカリンの姉、ヨーランダと付き合い始めてから彼は変わっていく。 ヨーランダは世紀の淑女と呼ばれた女性。 彼女の元でどんどんと洗練され、魅力に満ちていくデュークをカリンは傍らから見ていることしかできなかった。 しかしヨーランダはデュークではなく他の人を選び、結婚してしまう。 それからしばらくして、カリンの元にデュークから結婚の申し込みが届く。 私はお姉さまの代わりでしょうか。 貴方が私に優しくすればするほど悲しくなるし、みじめな気持ちになるのに……。 そう思いつつも、彼を思う気持ちは抑えられなくなっていく。 8/21 MAGI様より表紙イラストを、9/24にはMAGI様の作曲された この小説のイメージソング「意味のない空」をいただきました。 https://www.youtube.com/watch?v=L6C92gMQ_gE MAGI様、ありがとうございます! イメージが広がりますので聞きながらお話を読んでくださると嬉しいです。

三年の想いは小瓶の中に

月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。 ※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。

王妃様は死にました~今さら後悔しても遅いです~

由良
恋愛
クリスティーナは四歳の頃、王子だったラファエルと婚約を結んだ。 両親が事故に遭い亡くなったあとも、国王が大病を患い隠居したときも、ラファエルはクリスティーナだけが自分の妻になるのだと言って、彼女を守ってきた。 そんなラファエルをクリスティーナは愛し、生涯を共にすると誓った。 王妃となったあとも、ただラファエルのためだけに生きていた。 ――彼が愛する女性を連れてくるまでは。

地獄の業火に焚べるのは……

緑谷めい
恋愛
 伯爵家令嬢アネットは、17歳の時に2つ年上のボルテール侯爵家の長男ジェルマンに嫁いだ。親の決めた政略結婚ではあったが、小さい頃から婚約者だった二人は仲の良い幼馴染だった。表面上は何の問題もなく穏やかな結婚生活が始まる――けれど、ジェルマンには秘密の愛人がいた。学生時代からの平民の恋人サラとの関係が続いていたのである。  やがてアネットは男女の双子を出産した。「ディオン」と名付けられた男児はジェルマンそっくりで、「マドレーヌ」と名付けられた女児はアネットによく似ていた。  ※ 全5話完結予定  

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】お飾り妃〜寵愛は聖女様のモノ〜

恋愛
今日、私はお飾りの妃となります。 ※実際の慣習等とは異なる場合があり、あくまでこの世界観での要素もございますので御了承ください。

将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」 5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。 その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

処理中です...