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5 デビュタント
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《シルヴィア16歳》
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シルヴィアが16歳になったある日、デビュタントの準備で賑わう屋敷のサロンには、華やかなドレスがいくつも並べられていた。
絹やレースがたっぷりと使われた衣装は、どれも貴族の令嬢にふさわしい豪奢なものばかりだった。
「この色がお似合いですわ、お嬢様」
侍女たちが声を弾ませながら、鏡の前の少女の身支度を整えている。
その中心にいるのは、妹のセレスティーナ。シルヴィアではない。
髪をふんわりと巻かれ、淡いピンクのドレスをまとったセレスティーナは、まるで春の妖精のようだった。彼女の後ろには、満足げな微笑を浮かべる母、カトリーナの姿もあった。
「まぁ、なんて愛らしいのかしら。セレスティーナ、お前が舞踏会に出れば、きっと皆の注目を集めるでしょうね」
「……ありがとう、お母様」
セレスティーナはほんのり頬を染めながら、はにかむように微笑んだ。
「婚約者がまだ決まっていないのだから、ここでしっかり良いご縁を掴まなくてはね」
カトリーナが言うと、セレスティーナはコクリと頷いた。
カトリーナとセレスティーナの母娘関係は良好だった。 カトリーナは女性とは軍略など考えず、美しく優雅に振る舞い、男性に愛されるべきものだと信じていた。その点、セレスティーナは自分に似て愛らしく、女性としての美徳を兼ね備えている。
だが、この場にいるもう一人の娘、シルヴィアは違う。ゆえに、カトリーナはシルヴィアを異質な存在として可愛がることができなかった。
「お父様、お母様。私も舞踏会に出たいです」
シルヴィアの言葉が響いた瞬間、サロンの空気がピンと張り詰めた。
母も妹も、侍女たちでさえ、一瞬驚いたようにシルヴィアを見つめる。——まるで、場違いなことを口にしたかのように。
ソファでくつろいでいた父は、手にしていた新聞をゆっくりと畳み、ジロリと冷ややかな視線を向けてきた。
ルドヴィクが読んでいたのは 《貴族公報》である。ちなみに、この世界には《魔道具職人》と呼ばれる魔法使いたちが存在し、さまざまな魔道具を生み出していた。文字を記憶し、紙に転写する魔道具もそのひとつ。おかげで新聞や雑誌、本も広く流通している。
シルヴィアを見たルドヴィクの目には、貴族たちのゴシップ記事よりもさらに無価値なものを見ているかのような冷笑が浮かんでいた。
「必要ない」
それは、話を聞くまでもないと言わんばかりの、突き放した拒絶だった。
シルヴィアは ぎゅっと拳を握る。それでも、一歩も引かずに言葉を続けた。
「レオナルト王太子殿下もおいでになると聞いております。私は殿下の婚約者です。デビュタントに出られないなんて、おかしいと思います」
「シルヴィア、よく聞け! 国王陛下や王太子殿下にはお前の体調が悪いと伝えてある。お前には急ぎで考えてほしいことがあるからだ。それに比べれば、お前のデビュタントなど、取るに足らん」
シルヴィアの言葉を遮りながら、ルドヴィクは怒りを滲ませながら告げた。
「……っ」
シルヴィアは無意識に拳を握った。
「……ですが、わたしも公爵家の娘です。王太子殿下の婚約者として、自分の務めを果たさないといけません。舞踏会に出席するのも私の大事な役目ではないのですか?」
「お前の務めだと? ふざけるな! お前の務めは今すぐにでも新たな敵、バルディア軍に対する戦略を練ることだ。あのバルディア軍のグレン王は雷と炎の魔法を使いこなし、しかもかなりの策略家だという噂だ。そんな時にデビュタントなどに行く暇があると思うか? 今は国のために戦略を立てる時なのだ」
ルドヴィクは忌々しげに貴族公報を手に取り、それをテーブルに叩きつけた。シルヴィアはビクリと肩を震わせる。
「……セレスティーナはデビュタントに出るのに?」
「当然だ。セレスティーナには、まだ婚約者が決まっていない。だからこそ、社交界で輝き未来の夫を見つける必要がある。しかし、シルヴィアには王太子という婚約者がいるではないか? すでに相手が決まっているのだから、わざわざ華やかな場所に出る必要はない」
ルドヴィクの言葉に、カトリーナが満足げに頷いた。
「そうよ、シルヴィア。セレスティーナは、美しく着飾り、愛されるために生まれたの。そして、良き縁を結ぶことが、この子の役目なのよ。あなたは公爵家の長女としての義務を果たせばいいのよ」
母の声は、冷たい。それは、幼い頃から何度も聞かされてきた言葉だった。
この家において、シルヴィアの価値と、妹の価値はまるで別のものなのだ。
シルヴィアは、静かにため息をついた。
「……わかりました。」
努めて穏やかに微笑み、スカートの裾を摘んで軽く膝を折る。
「お父様、お母様のおっしゃる通りです。私は自室に戻りますわ」
父はすでに興味を失ったように、ふたたび貴族公報に視線を戻していた。母は何事もなかったかのように、セレスティーナの愛らしさをまた褒める。
ただ一人、セレスティーナだけが、僅かに冷めた視線を姉に向けていた。
「お姉様……」
ふんわりと巻かれた金髪が揺れる。けれど、その青い瞳には、申し訳なさも同情もなかった。むしろ、どこか蔑んだような色を滲ませていた。
「お姉様、仕方ないわよね。だって、お姉様は男として生まれるべきだったのだもの」
セレスティーナは、自分のドレスの裾を指で撫でながら、何気なく言った。それがシルヴィアの最大の欠点だとでも言うように。
セレスティーナは自分が両親に愛されていることを理解していた。それが当然だとも思っていた。なぜなら、自分はエグリス王国の女性として「正しい存在」であり、姉は「間違った存在」だからだ。
父が姉を利用していることも、なんとなく察していた。けれど、それも仕方がないことなのだ。軍略や兵法に長けた女性なんて、間違っているのだから。
——お姉様が男に生まれなかったのが悪いのよ。私だってお兄様が欲しかったのに。
「そうね。……確かに男に生まれれば良かったと思うことが幾度もあるわ」
シルヴィアはそう言うと、静かに踵を返し、サロンを後にしたのだった。
さて、そのデビュタントの当日ーー
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※貴族公報:貴族向けの公的新聞。
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シルヴィアが16歳になったある日、デビュタントの準備で賑わう屋敷のサロンには、華やかなドレスがいくつも並べられていた。
絹やレースがたっぷりと使われた衣装は、どれも貴族の令嬢にふさわしい豪奢なものばかりだった。
「この色がお似合いですわ、お嬢様」
侍女たちが声を弾ませながら、鏡の前の少女の身支度を整えている。
その中心にいるのは、妹のセレスティーナ。シルヴィアではない。
髪をふんわりと巻かれ、淡いピンクのドレスをまとったセレスティーナは、まるで春の妖精のようだった。彼女の後ろには、満足げな微笑を浮かべる母、カトリーナの姿もあった。
「まぁ、なんて愛らしいのかしら。セレスティーナ、お前が舞踏会に出れば、きっと皆の注目を集めるでしょうね」
「……ありがとう、お母様」
セレスティーナはほんのり頬を染めながら、はにかむように微笑んだ。
「婚約者がまだ決まっていないのだから、ここでしっかり良いご縁を掴まなくてはね」
カトリーナが言うと、セレスティーナはコクリと頷いた。
カトリーナとセレスティーナの母娘関係は良好だった。 カトリーナは女性とは軍略など考えず、美しく優雅に振る舞い、男性に愛されるべきものだと信じていた。その点、セレスティーナは自分に似て愛らしく、女性としての美徳を兼ね備えている。
だが、この場にいるもう一人の娘、シルヴィアは違う。ゆえに、カトリーナはシルヴィアを異質な存在として可愛がることができなかった。
「お父様、お母様。私も舞踏会に出たいです」
シルヴィアの言葉が響いた瞬間、サロンの空気がピンと張り詰めた。
母も妹も、侍女たちでさえ、一瞬驚いたようにシルヴィアを見つめる。——まるで、場違いなことを口にしたかのように。
ソファでくつろいでいた父は、手にしていた新聞をゆっくりと畳み、ジロリと冷ややかな視線を向けてきた。
ルドヴィクが読んでいたのは 《貴族公報》である。ちなみに、この世界には《魔道具職人》と呼ばれる魔法使いたちが存在し、さまざまな魔道具を生み出していた。文字を記憶し、紙に転写する魔道具もそのひとつ。おかげで新聞や雑誌、本も広く流通している。
シルヴィアを見たルドヴィクの目には、貴族たちのゴシップ記事よりもさらに無価値なものを見ているかのような冷笑が浮かんでいた。
「必要ない」
それは、話を聞くまでもないと言わんばかりの、突き放した拒絶だった。
シルヴィアは ぎゅっと拳を握る。それでも、一歩も引かずに言葉を続けた。
「レオナルト王太子殿下もおいでになると聞いております。私は殿下の婚約者です。デビュタントに出られないなんて、おかしいと思います」
「シルヴィア、よく聞け! 国王陛下や王太子殿下にはお前の体調が悪いと伝えてある。お前には急ぎで考えてほしいことがあるからだ。それに比べれば、お前のデビュタントなど、取るに足らん」
シルヴィアの言葉を遮りながら、ルドヴィクは怒りを滲ませながら告げた。
「……っ」
シルヴィアは無意識に拳を握った。
「……ですが、わたしも公爵家の娘です。王太子殿下の婚約者として、自分の務めを果たさないといけません。舞踏会に出席するのも私の大事な役目ではないのですか?」
「お前の務めだと? ふざけるな! お前の務めは今すぐにでも新たな敵、バルディア軍に対する戦略を練ることだ。あのバルディア軍のグレン王は雷と炎の魔法を使いこなし、しかもかなりの策略家だという噂だ。そんな時にデビュタントなどに行く暇があると思うか? 今は国のために戦略を立てる時なのだ」
ルドヴィクは忌々しげに貴族公報を手に取り、それをテーブルに叩きつけた。シルヴィアはビクリと肩を震わせる。
「……セレスティーナはデビュタントに出るのに?」
「当然だ。セレスティーナには、まだ婚約者が決まっていない。だからこそ、社交界で輝き未来の夫を見つける必要がある。しかし、シルヴィアには王太子という婚約者がいるではないか? すでに相手が決まっているのだから、わざわざ華やかな場所に出る必要はない」
ルドヴィクの言葉に、カトリーナが満足げに頷いた。
「そうよ、シルヴィア。セレスティーナは、美しく着飾り、愛されるために生まれたの。そして、良き縁を結ぶことが、この子の役目なのよ。あなたは公爵家の長女としての義務を果たせばいいのよ」
母の声は、冷たい。それは、幼い頃から何度も聞かされてきた言葉だった。
この家において、シルヴィアの価値と、妹の価値はまるで別のものなのだ。
シルヴィアは、静かにため息をついた。
「……わかりました。」
努めて穏やかに微笑み、スカートの裾を摘んで軽く膝を折る。
「お父様、お母様のおっしゃる通りです。私は自室に戻りますわ」
父はすでに興味を失ったように、ふたたび貴族公報に視線を戻していた。母は何事もなかったかのように、セレスティーナの愛らしさをまた褒める。
ただ一人、セレスティーナだけが、僅かに冷めた視線を姉に向けていた。
「お姉様……」
ふんわりと巻かれた金髪が揺れる。けれど、その青い瞳には、申し訳なさも同情もなかった。むしろ、どこか蔑んだような色を滲ませていた。
「お姉様、仕方ないわよね。だって、お姉様は男として生まれるべきだったのだもの」
セレスティーナは、自分のドレスの裾を指で撫でながら、何気なく言った。それがシルヴィアの最大の欠点だとでも言うように。
セレスティーナは自分が両親に愛されていることを理解していた。それが当然だとも思っていた。なぜなら、自分はエグリス王国の女性として「正しい存在」であり、姉は「間違った存在」だからだ。
父が姉を利用していることも、なんとなく察していた。けれど、それも仕方がないことなのだ。軍略や兵法に長けた女性なんて、間違っているのだから。
——お姉様が男に生まれなかったのが悪いのよ。私だってお兄様が欲しかったのに。
「そうね。……確かに男に生まれれば良かったと思うことが幾度もあるわ」
シルヴィアはそう言うと、静かに踵を返し、サロンを後にしたのだった。
さて、そのデビュタントの当日ーー
•───⋅⋆⁺‧₊☽⛦☾₊‧⁺⋆⋅───•
※貴族公報:貴族向けの公的新聞。
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