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3 ここはゲームの世界? そして悪役令嬢はエメラルド?
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私はアドリオン男爵家ですくすくと何不自由なく育った。18歳になったある日のこと、お父様から書斎に呼ばれた。傍らにはお母様もいらっしゃって、珍しく不満げに口を尖らせている。
「お前の嫁ぎ先が決まった。エリアス侯爵家に嫁ぎなさい」
「あなた、私は反対ですわ。エメラルドは私達の大切な一人娘ですよ。あのようなところに嫁げばきっと苦労します」
お母様はお父様に珍しく反論した。二人はいつもとても仲が良いのよ。私はただちに頭の中で貴族名鑑のページをめくっていく。エリアス侯爵家といえば由緒ある家柄で王族も嫁いだことのある名門だけれど、今は事業の失敗で没落寸前のところまでいっている貧乏貴族よ。
お母様が反対するのは当然だわ。
「エリアス侯爵家の身分は遙かにアドリオン男爵家より上ですけれど、あちらの事業は倒産寸前ですわね。確か『屋敷は抵当に入っていて競売物件になりそうだ』とゴシップ誌にも掲載されていましたわ」
前世で会計士だった私だ。企業分析はお手のものだし、各貴族の経済事情にも詳しかった。この世界にも新聞や雑誌はたくさん出版されており私の愛読書にもなっている。ノーブル・タイムズでは、先代のエリアス侯爵が起こした事業を詐欺まがいのものとして散々貶していたし、ゴシップ誌では『若き麗しい当主はきっと平民の金持ちマダムに身売りするしかないだろう』と面白おかしく書いていた。貴族としては全くの不名誉なことだった。
「そのような泥船には乗りたくないです」
「エメラルドや。オーガスタム・エリアス侯爵はとても美しい男らしいぞ。こうなる前は女性に大人気だったそうだ」
「絶対、嫌です。だって、私はお父様のような頼りがいのある、逞しい男性が好きなのです。顔より性格が良い男性と結婚したいです」
私を溺愛するお父様は、顔をほころばせた。
「もちろん、お前の好みは知っておる。だが、先代のエリアス侯爵は、私の親友だったのだよ。その息子を助けてやってくれないか?」
意外なことを言い出すお父様に、私は前世の記憶を思い出しかけていた。
超絶イケメンなエリアス侯爵は没落寸前の名門貴族。そして、この私は大富豪のエメラルド・アドリオン男爵令嬢だ。ここまで頭のなかで思い巡らし、この世界がゲームの世界に似ていることに気がついた。お父様にエリアス侯爵家に嫁ぐように言われて、やっと思い出したゲーム名は『メイドのメルラはエリアス侯爵閣下のお気に入り!』だ。
エリアス侯爵は倒産寸前、それをいいことに大富豪の一人娘であるエメラルド・アドリオン男爵令嬢が金にものを言わせて、このエリアス侯爵を買うという出だしで始まる。悪役令嬢エメラルドは侯爵夫人の地位が欲しかっただけで、イケメン侯爵をバカにして秘密の恋人まで作るのよ。その存在がバレて離婚されそうになったエメラルドは、なんと恋人と共謀してエリアス侯爵に毒を盛ろうとする。メイドのメルラが私の企みをことごとく阻止しエリアス侯爵に心から尽くし、二人の間に愛が芽生えるという安易な展開だった。
私は地下牢にずっと閉じ込められる終身刑になるか、国外追放の末の野垂れ死にという結末だったように思う。一方、ヒロインは平民出身のメイドという身分違いもはね除け、候爵夫人に収まるという夢のシンデレラストーリーなのだった。
料理長ルートと執事ルートもあった気がする。まぁ、とにかく3人のイケメン男性を手玉にとることができる恋愛ゲームだったわけね。どちらにしてもヒロインはエリアス侯爵家で人気者になり、エリアス侯爵を助けながらも溺愛されていくというありがちなストーリーだった。恋愛ゲームが流行った頃に一度やってみたけれど、あの時は料理長ルートでハッピーエンドになったと思う。もちろんゲームの主人公はメイドなので、私はメイド側の体験しかしていない。
私、悪役令嬢に転生しちゃったみたい!
「お前の嫁ぎ先が決まった。エリアス侯爵家に嫁ぎなさい」
「あなた、私は反対ですわ。エメラルドは私達の大切な一人娘ですよ。あのようなところに嫁げばきっと苦労します」
お母様はお父様に珍しく反論した。二人はいつもとても仲が良いのよ。私はただちに頭の中で貴族名鑑のページをめくっていく。エリアス侯爵家といえば由緒ある家柄で王族も嫁いだことのある名門だけれど、今は事業の失敗で没落寸前のところまでいっている貧乏貴族よ。
お母様が反対するのは当然だわ。
「エリアス侯爵家の身分は遙かにアドリオン男爵家より上ですけれど、あちらの事業は倒産寸前ですわね。確か『屋敷は抵当に入っていて競売物件になりそうだ』とゴシップ誌にも掲載されていましたわ」
前世で会計士だった私だ。企業分析はお手のものだし、各貴族の経済事情にも詳しかった。この世界にも新聞や雑誌はたくさん出版されており私の愛読書にもなっている。ノーブル・タイムズでは、先代のエリアス侯爵が起こした事業を詐欺まがいのものとして散々貶していたし、ゴシップ誌では『若き麗しい当主はきっと平民の金持ちマダムに身売りするしかないだろう』と面白おかしく書いていた。貴族としては全くの不名誉なことだった。
「そのような泥船には乗りたくないです」
「エメラルドや。オーガスタム・エリアス侯爵はとても美しい男らしいぞ。こうなる前は女性に大人気だったそうだ」
「絶対、嫌です。だって、私はお父様のような頼りがいのある、逞しい男性が好きなのです。顔より性格が良い男性と結婚したいです」
私を溺愛するお父様は、顔をほころばせた。
「もちろん、お前の好みは知っておる。だが、先代のエリアス侯爵は、私の親友だったのだよ。その息子を助けてやってくれないか?」
意外なことを言い出すお父様に、私は前世の記憶を思い出しかけていた。
超絶イケメンなエリアス侯爵は没落寸前の名門貴族。そして、この私は大富豪のエメラルド・アドリオン男爵令嬢だ。ここまで頭のなかで思い巡らし、この世界がゲームの世界に似ていることに気がついた。お父様にエリアス侯爵家に嫁ぐように言われて、やっと思い出したゲーム名は『メイドのメルラはエリアス侯爵閣下のお気に入り!』だ。
エリアス侯爵は倒産寸前、それをいいことに大富豪の一人娘であるエメラルド・アドリオン男爵令嬢が金にものを言わせて、このエリアス侯爵を買うという出だしで始まる。悪役令嬢エメラルドは侯爵夫人の地位が欲しかっただけで、イケメン侯爵をバカにして秘密の恋人まで作るのよ。その存在がバレて離婚されそうになったエメラルドは、なんと恋人と共謀してエリアス侯爵に毒を盛ろうとする。メイドのメルラが私の企みをことごとく阻止しエリアス侯爵に心から尽くし、二人の間に愛が芽生えるという安易な展開だった。
私は地下牢にずっと閉じ込められる終身刑になるか、国外追放の末の野垂れ死にという結末だったように思う。一方、ヒロインは平民出身のメイドという身分違いもはね除け、候爵夫人に収まるという夢のシンデレラストーリーなのだった。
料理長ルートと執事ルートもあった気がする。まぁ、とにかく3人のイケメン男性を手玉にとることができる恋愛ゲームだったわけね。どちらにしてもヒロインはエリアス侯爵家で人気者になり、エリアス侯爵を助けながらも溺愛されていくというありがちなストーリーだった。恋愛ゲームが流行った頃に一度やってみたけれど、あの時は料理長ルートでハッピーエンドになったと思う。もちろんゲームの主人公はメイドなので、私はメイド側の体験しかしていない。
私、悪役令嬢に転生しちゃったみたい!
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