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5 浮気相手に遭遇!
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馬車に乗ると、ジャクスティン殿下の専属騎士、ハリソン卿がいた。
この方、マガート伯爵家の次男で、爵位は兄が継いでいる。でも兄弟仲はめちゃくちゃ良いらしい。甘党で、私のお菓子の大ファンでもある。
それにしてもデカい。クマかと思うくらいデカい。分厚い胸板、ムキムキの腕、圧倒的な存在感!
これぞ男!って感じだけど、私みたいな華奢(※当社比)な人間にはちょっと圧が強すぎる。
そんなハリソン卿が、涙を拭けとハンカチを差し出してきた。
「クリスティ嬢。せっかくの可愛い顔が台無しですよ」
「ふぇ? 誰のことをおっしゃっていますか?」
「ここに女性はクリスティしかいないでしょう? クリスティのことに決まっているよ」
私たちの会話を聞きながら、クスクスと笑うジャクスティン殿下。
……いやいやいやいや! 私、可愛いなんて言われたことないんですけど!?
髪も瞳も地味な茶色、特別美人でもない、いたって平凡な女なんですけど!?
「ハリソン卿、目が悪いですか?」
「いいえ、目はいいほうです。人相は悪いですが」
うん、そこは確かに当たっているかも。
でも、よく見たらハリソン卿の顔って、強面だけど意外と人懐っこさもある。猛禽みたいな鋭い目つきをしてるけど、口元はどこか優しい。
「人相、そんなに悪くないですよ。騎士ならそれくらい強面のほうが頼りがいがあります」
とか話してるうちに、涙もすっかり乾いた。泣いていた経緯も話しちゃったしね。人に話すと、なんだかすっきりするもんだ。
モリスの浮気話で場がやや沈みかけたその瞬間、ジャクスティン殿下が絶妙なタイミングで空気を切り替えた。まるで『待ってました』と言わんばかりに、さらりと話題を転じる。
「これからハリソンの屋敷に行くんだ。通いの侍女に急用ができたとかで、少しの間だけどブロッサムがひとりぼっちになってしまうのさ」
ああ、ハリソン卿の娘さんね。まだひとりでお留守番させるには幼いのだろう。確か、ハリソン卿は奥様とは死別だったはずよ……。
「大変ですよね。奥様を亡くされて、男手ひとつで子育ては」
そこでなぜかジャクスティン殿下が笑いをこらえ、ハリソン卿が気まずそうな顔に。
ん? 何かおかしい?
「クリスティ。ハリソンの元奥さん、ピンピンしてるよ。しかもハリソンの部下と再婚したんだ。ずっと部下と浮気していたんだって」
「……え?」
ええええええ!?
私、しっかり勘違いしてた!
「ところで、クリスティも来る? ブロッサムと僕にお菓子作ってほしいな」
金髪碧眼の美少年のお願いは断れない。しかも第三王子で、王妃殿下はめちゃくちゃこの方を可愛がっている。
「承知しました。では、私の家に寄っていただけませんか? 材料や道具を持ってきますので」
「うん、いいよ。偶然クリスティに会えて良かったよ。涙も乾いたみたいだし。クリスティは夫の浮気なんかで泣く必要ないよ。だって、クリスティは超有名な菓子職人なんだもん! そんな男、捨てちゃえばいいんだよ。困るのは向こうだからね!」
8歳児とは思えない発言が飛び出した。
ませてる、ませてるよジャクスティン殿下!
でも、正論。
私、夫を捨てても生活には困らない。むしろ金食い虫がいなくなって、収支が大幅に改善されるんですけど!?
──決定。私、モリスをポイします。
こうして私は、ジャクスティン殿下とハリソン卿とともに、ハリソン卿の屋敷へ。
ブロッサム様は金髪緑瞳の可愛い女の子。ブロッサム様もお菓子作りを手伝いたがり、軽食のサンドイッチなども二人で作る。
あぁ、愛らしい笑顔に癒やされる!
私にもこんな娘がいたらなぁ。
お菓子作りの時間も楽しかったし、談笑しながらサンドイッチやお菓子を食べて、まったり過ごしていた。
そして、通いの侍女が姿を現す時間になると……
……ん?
なんか、見覚えがあるぞ?
どこで……?
あっ!
モリスとベタベタしてた女ぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!
この方、マガート伯爵家の次男で、爵位は兄が継いでいる。でも兄弟仲はめちゃくちゃ良いらしい。甘党で、私のお菓子の大ファンでもある。
それにしてもデカい。クマかと思うくらいデカい。分厚い胸板、ムキムキの腕、圧倒的な存在感!
これぞ男!って感じだけど、私みたいな華奢(※当社比)な人間にはちょっと圧が強すぎる。
そんなハリソン卿が、涙を拭けとハンカチを差し出してきた。
「クリスティ嬢。せっかくの可愛い顔が台無しですよ」
「ふぇ? 誰のことをおっしゃっていますか?」
「ここに女性はクリスティしかいないでしょう? クリスティのことに決まっているよ」
私たちの会話を聞きながら、クスクスと笑うジャクスティン殿下。
……いやいやいやいや! 私、可愛いなんて言われたことないんですけど!?
髪も瞳も地味な茶色、特別美人でもない、いたって平凡な女なんですけど!?
「ハリソン卿、目が悪いですか?」
「いいえ、目はいいほうです。人相は悪いですが」
うん、そこは確かに当たっているかも。
でも、よく見たらハリソン卿の顔って、強面だけど意外と人懐っこさもある。猛禽みたいな鋭い目つきをしてるけど、口元はどこか優しい。
「人相、そんなに悪くないですよ。騎士ならそれくらい強面のほうが頼りがいがあります」
とか話してるうちに、涙もすっかり乾いた。泣いていた経緯も話しちゃったしね。人に話すと、なんだかすっきりするもんだ。
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「これからハリソンの屋敷に行くんだ。通いの侍女に急用ができたとかで、少しの間だけどブロッサムがひとりぼっちになってしまうのさ」
ああ、ハリソン卿の娘さんね。まだひとりでお留守番させるには幼いのだろう。確か、ハリソン卿は奥様とは死別だったはずよ……。
「大変ですよね。奥様を亡くされて、男手ひとつで子育ては」
そこでなぜかジャクスティン殿下が笑いをこらえ、ハリソン卿が気まずそうな顔に。
ん? 何かおかしい?
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「……え?」
ええええええ!?
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「ところで、クリスティも来る? ブロッサムと僕にお菓子作ってほしいな」
金髪碧眼の美少年のお願いは断れない。しかも第三王子で、王妃殿下はめちゃくちゃこの方を可愛がっている。
「承知しました。では、私の家に寄っていただけませんか? 材料や道具を持ってきますので」
「うん、いいよ。偶然クリスティに会えて良かったよ。涙も乾いたみたいだし。クリスティは夫の浮気なんかで泣く必要ないよ。だって、クリスティは超有名な菓子職人なんだもん! そんな男、捨てちゃえばいいんだよ。困るのは向こうだからね!」
8歳児とは思えない発言が飛び出した。
ませてる、ませてるよジャクスティン殿下!
でも、正論。
私、夫を捨てても生活には困らない。むしろ金食い虫がいなくなって、収支が大幅に改善されるんですけど!?
──決定。私、モリスをポイします。
こうして私は、ジャクスティン殿下とハリソン卿とともに、ハリソン卿の屋敷へ。
ブロッサム様は金髪緑瞳の可愛い女の子。ブロッサム様もお菓子作りを手伝いたがり、軽食のサンドイッチなども二人で作る。
あぁ、愛らしい笑顔に癒やされる!
私にもこんな娘がいたらなぁ。
お菓子作りの時間も楽しかったし、談笑しながらサンドイッチやお菓子を食べて、まったり過ごしていた。
そして、通いの侍女が姿を現す時間になると……
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