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16 レオナード視点-1
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レオナード視点
❀┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈❀
最近、ファッションの聖地サンテリオ侯爵領で、驚くべき才能を持つ若き女性デザイナーが評判になっているらしい。いったいどんな人物なんだろうと気になるが、僕が気になっていることはもっと他にある。
実は、マリアの妹と結婚したことが大失敗だったんじゃないかと思うからだ。なぜかといえば……
結婚してまもなくのことだった。
ソフィアは「ルクレール女学園の友人とお茶をしてくるわ」と言って、流行りのカフェへと出かけていった。
上機嫌で家を出ていったのに、帰ってきたときにはすっかり浮かない顔になっていた。
「お友達のひとりがね、私よりずっと素敵な靴を履いていたの。私の靴が見劣りして、とても恥ずかしかったわ。だから、私もその人と同じ靴屋さんで、新しい靴を作ってもらいたいの」
正直、靴の一足くらいどうということはない。僕は苦笑しながら言った。
「だったら、その靴屋で新しい靴を注文すればいい」
それから数日後、ソフィアはまた「ルクレール女学園の友人と観劇に行くわ!」と言い出した。
僕は、カフェは手伝わなくていいのか、と尋ねた。
「店員を雇えばいいじゃない? 私はせっかくレオナード様と結婚したんですもの。もう働かないわ」
ソフィアはあっさりと言い放つ。
それからというもの、彼女は毎日のように誰かしらと出かけるようになった。ルクレール女学園の卒業生には、裕福な家の娘が大勢いる。
今日はこの友人、明日は別の友人――そんなふうに、日を替えて出かければ、いくらでも遊ぶ相手がいるのだ。
それだけなら、まだ微笑ましい話だったかもしれない。 だが、ソフィアは遊びに行くたびに相手の持ち物を羨ましがり、同じものを欲しがるようになった。
靴、バッグ、宝飾品、時計、化粧品……。
友人が持っている物を、自分も手に入れないと気が済まない。家の中が、日に日にソフィアの物で埋まっていった。靴箱もクローゼットも、どこもかしこも、とっくに限界を超えている。
「なんでそんなにバッグや靴がいるんだ? 靴なんてものは、足が二本しかないんだぞ。
そんなにたくさんあって、一体いつ履くんだい!」
思わず声を荒げると、ソフィアは眉をつり上げて言い返した。
「服によって靴もバッグも変えなきゃ、おかしいでしょう? だってレオナード様は、オッキーニ男爵領で一番のブロック服飾工房を構えているのよ。お金持ちなら、ケチケチしないでよ!」
最後は金切り声だった。
「オッキーニ男爵領は、それほど広い領地じゃない。国全体で見れば田舎だし、生活水準も決して高くない。本当のお金持ちっていうのは、貴族の方々や、お隣のサンテリオ侯爵領で大きな商会を構えているような人たちのことを言うんだよ!」
思わず声が大きくなったが、ソフィアは怯むどころか、むしろ不機嫌そうに腕を組む。
「君のお金の使い方は、まるで大商会の夫人みたいだ。友人と会って遊ぶのは構わないが、会うたびに相手の高価な持ち物を欲しがるのは、どう考えても分不相応だ!」
僕は当たり前のことを言っているつもりだった。だが、ソフィアはふくれっ面のまま、ぷいと顔をそむけた。
マリアだったら、きっとこんな行動はしなかった。
彼女は靴もバッグも、ほんの数点しか持っていなかった。
同じ家族でありながら、ソフィアがあれほど着飾るのに、どうしてマリアはあんなにも質素だったんだ?
両親に給料を全て渡していたことが嘘だったのなら、もっと身ぎれいにして装飾品のひとつぐらいあっても不思議じゃないのに・・・・・・
胸の奥で、嫌な予感が膨らんだ。
そしてそれを裏付けるように、いつのまにか奇妙な噂が広まっていった。
「ピナベーカリーの夫婦は、長女からずっとお金をせびっていたらしい」
「妹の嫁入り道具まで、姉に支払わせようとしたんだって」
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最近、ファッションの聖地サンテリオ侯爵領で、驚くべき才能を持つ若き女性デザイナーが評判になっているらしい。いったいどんな人物なんだろうと気になるが、僕が気になっていることはもっと他にある。
実は、マリアの妹と結婚したことが大失敗だったんじゃないかと思うからだ。なぜかといえば……
結婚してまもなくのことだった。
ソフィアは「ルクレール女学園の友人とお茶をしてくるわ」と言って、流行りのカフェへと出かけていった。
上機嫌で家を出ていったのに、帰ってきたときにはすっかり浮かない顔になっていた。
「お友達のひとりがね、私よりずっと素敵な靴を履いていたの。私の靴が見劣りして、とても恥ずかしかったわ。だから、私もその人と同じ靴屋さんで、新しい靴を作ってもらいたいの」
正直、靴の一足くらいどうということはない。僕は苦笑しながら言った。
「だったら、その靴屋で新しい靴を注文すればいい」
それから数日後、ソフィアはまた「ルクレール女学園の友人と観劇に行くわ!」と言い出した。
僕は、カフェは手伝わなくていいのか、と尋ねた。
「店員を雇えばいいじゃない? 私はせっかくレオナード様と結婚したんですもの。もう働かないわ」
ソフィアはあっさりと言い放つ。
それからというもの、彼女は毎日のように誰かしらと出かけるようになった。ルクレール女学園の卒業生には、裕福な家の娘が大勢いる。
今日はこの友人、明日は別の友人――そんなふうに、日を替えて出かければ、いくらでも遊ぶ相手がいるのだ。
それだけなら、まだ微笑ましい話だったかもしれない。 だが、ソフィアは遊びに行くたびに相手の持ち物を羨ましがり、同じものを欲しがるようになった。
靴、バッグ、宝飾品、時計、化粧品……。
友人が持っている物を、自分も手に入れないと気が済まない。家の中が、日に日にソフィアの物で埋まっていった。靴箱もクローゼットも、どこもかしこも、とっくに限界を超えている。
「なんでそんなにバッグや靴がいるんだ? 靴なんてものは、足が二本しかないんだぞ。
そんなにたくさんあって、一体いつ履くんだい!」
思わず声を荒げると、ソフィアは眉をつり上げて言い返した。
「服によって靴もバッグも変えなきゃ、おかしいでしょう? だってレオナード様は、オッキーニ男爵領で一番のブロック服飾工房を構えているのよ。お金持ちなら、ケチケチしないでよ!」
最後は金切り声だった。
「オッキーニ男爵領は、それほど広い領地じゃない。国全体で見れば田舎だし、生活水準も決して高くない。本当のお金持ちっていうのは、貴族の方々や、お隣のサンテリオ侯爵領で大きな商会を構えているような人たちのことを言うんだよ!」
思わず声が大きくなったが、ソフィアは怯むどころか、むしろ不機嫌そうに腕を組む。
「君のお金の使い方は、まるで大商会の夫人みたいだ。友人と会って遊ぶのは構わないが、会うたびに相手の高価な持ち物を欲しがるのは、どう考えても分不相応だ!」
僕は当たり前のことを言っているつもりだった。だが、ソフィアはふくれっ面のまま、ぷいと顔をそむけた。
マリアだったら、きっとこんな行動はしなかった。
彼女は靴もバッグも、ほんの数点しか持っていなかった。
同じ家族でありながら、ソフィアがあれほど着飾るのに、どうしてマリアはあんなにも質素だったんだ?
両親に給料を全て渡していたことが嘘だったのなら、もっと身ぎれいにして装飾品のひとつぐらいあっても不思議じゃないのに・・・・・・
胸の奥で、嫌な予感が膨らんだ。
そしてそれを裏付けるように、いつのまにか奇妙な噂が広まっていった。
「ピナベーカリーの夫婦は、長女からずっとお金をせびっていたらしい」
「妹の嫁入り道具まで、姉に支払わせようとしたんだって」
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