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9 退学と追放 sideメルバ
魔獣に襲われた日、屋敷に戻ると、お父様は私を抱きしめ、満面の笑みで褒めてくださった。お母様は感激の涙を浮かべていた。
「学園から報告があったぞ! メルバが聖女様の力に目覚め、魔獣を退治したそうじゃないか。すばらしい!」
「本当に……自慢の娘ですわ。私たちは鼻が高いわ」
「ありがとうございます! 私、みんなを守るために必死でしたの。自分でも信じられないくらいの力を出せたんですわ!」
胸を張りながら答えたけれど、本当は魔獣を消滅させたのはお姉様だ。私はお母様を自室に呼び寄せ、そっと事実を打ち明けた。
「なんですって? スカーレットが? でも、あの子は魔力ゼロだったはずでしょう?」
「そのはずなのに……おかしいのよ。だって、私の光属性の魔法はまったく効かなかったのに、お姉様が私と魔獣の間に立ちはだかって、すさまじい光を放ったの。間違いなく、お姉様の力よ」
「……スカーレットがメルバをかばって魔獣を消滅させた、ということ? でも大丈夫。あの子が事実を説明したところで、誰も信じやしないわ。ゼロ令嬢、出来損ないと呼ばれるスカーレットに、そんな力があるなんて誰も思わないもの」
(まぁ、そうよね。お姉様はおとなしく手柄を全部、私に譲っていればいい。だって、私は選ばれし聖女様。そう呼ばれるのはとても気分がいいわ!)
そう思っていたのに、その数日後、事件が起きた。お姉様が歴史の試験で満点を取ったというのだ。教師が不正を疑っている、という噂はすぐに私の耳にも届いた。
(なんてバカなの! ゼロスカはゼロスカらしく大人しくしていればいいのに。今さら実力を出したところで、誰も認めるはずがないのに。不正を疑われて当然だわ!)
まもなく私は学園長室に呼び出された。そこには学園長と歴史の教師にお姉様。なんと、お父様まで、揃っていた。お父様は怒りで顔を真っ赤にし、肩を震わせている。
「出来損ないのおまえが満点など取れるはずがない! 学園で問題を起こすなと、以前きつく言い渡しただろう!」
「やはり、そうですよね。普段は酷い点数しか取れないスカーレット様が、満点など……おかしすぎます」
学園長も教師も、お父様の言葉に同意した。
「聖女様はどう思われますか? 一応、ご意見を伺いたくて、こちらにお呼びしたのです」
上目遣いの学園長がにっこりと微笑んだ。
(あぁ、そういうことね。なら、答えは決まっている)
「お姉様……私は残念で仕方ありませんわ。なぜこんなことをなさったの? 私が大聖女様のような奇跡の力を持っていたのが悔しかったのでしょう? だから授業でカンニングを……。でもお気持ちはわかりますわ。自分も注目されたい、褒められたい――そう思ったのでしょう? お父様、お姉様は本当にかわいそうな方なのです」
「メルバはなんと優しい子だろう。しかし、家名を汚す恥さらしをこれ以上学園に通わせてはおけん! 学園長、この不肖な娘は退学処分にしてくれ」
屋敷に戻ると、お父様はさらに怒気を露わにし、お姉様を罵倒した。
「おまえのような恥さらしは、カーク侯爵家から出て行け! 離れに住むことすら許さん。荷物をまとめる時間はくれてやる。今日中に出て行けよ! 二度と私の前に姿を見せるな!」
私は笑いをこらえるのに必死だった。お姉様がいなくても、私には何の支障もない。学園に入る前はお姉様の答案用紙が必要だったけれど、今は学年も違う。試験の問題だって別なのだから。
その代わりに、お母様が学園の教師から試験問題を手に入れてくれる。お母様は人の弱みを握るのが得意なのだそう。私は安泰だ。
お姉様は青ざめた顔で、今にも泣き出しそうに見えた。きっと離れに戻って泣いたに違いない。
けれど、トランクひとつでカーク侯爵家を出ていくときには、不思議なほど落ち着いていた。むしろ澄ました顔で、優雅にさえ見えた。
――そういうところが大嫌い。すぐに立ち直ったように振る舞って、まるで私より上だとでも言いたげに見える。
もっと惨めに泣きわめけばいいのに! その方が、ずっと面白いわ!
「学園から報告があったぞ! メルバが聖女様の力に目覚め、魔獣を退治したそうじゃないか。すばらしい!」
「本当に……自慢の娘ですわ。私たちは鼻が高いわ」
「ありがとうございます! 私、みんなを守るために必死でしたの。自分でも信じられないくらいの力を出せたんですわ!」
胸を張りながら答えたけれど、本当は魔獣を消滅させたのはお姉様だ。私はお母様を自室に呼び寄せ、そっと事実を打ち明けた。
「なんですって? スカーレットが? でも、あの子は魔力ゼロだったはずでしょう?」
「そのはずなのに……おかしいのよ。だって、私の光属性の魔法はまったく効かなかったのに、お姉様が私と魔獣の間に立ちはだかって、すさまじい光を放ったの。間違いなく、お姉様の力よ」
「……スカーレットがメルバをかばって魔獣を消滅させた、ということ? でも大丈夫。あの子が事実を説明したところで、誰も信じやしないわ。ゼロ令嬢、出来損ないと呼ばれるスカーレットに、そんな力があるなんて誰も思わないもの」
(まぁ、そうよね。お姉様はおとなしく手柄を全部、私に譲っていればいい。だって、私は選ばれし聖女様。そう呼ばれるのはとても気分がいいわ!)
そう思っていたのに、その数日後、事件が起きた。お姉様が歴史の試験で満点を取ったというのだ。教師が不正を疑っている、という噂はすぐに私の耳にも届いた。
(なんてバカなの! ゼロスカはゼロスカらしく大人しくしていればいいのに。今さら実力を出したところで、誰も認めるはずがないのに。不正を疑われて当然だわ!)
まもなく私は学園長室に呼び出された。そこには学園長と歴史の教師にお姉様。なんと、お父様まで、揃っていた。お父様は怒りで顔を真っ赤にし、肩を震わせている。
「出来損ないのおまえが満点など取れるはずがない! 学園で問題を起こすなと、以前きつく言い渡しただろう!」
「やはり、そうですよね。普段は酷い点数しか取れないスカーレット様が、満点など……おかしすぎます」
学園長も教師も、お父様の言葉に同意した。
「聖女様はどう思われますか? 一応、ご意見を伺いたくて、こちらにお呼びしたのです」
上目遣いの学園長がにっこりと微笑んだ。
(あぁ、そういうことね。なら、答えは決まっている)
「お姉様……私は残念で仕方ありませんわ。なぜこんなことをなさったの? 私が大聖女様のような奇跡の力を持っていたのが悔しかったのでしょう? だから授業でカンニングを……。でもお気持ちはわかりますわ。自分も注目されたい、褒められたい――そう思ったのでしょう? お父様、お姉様は本当にかわいそうな方なのです」
「メルバはなんと優しい子だろう。しかし、家名を汚す恥さらしをこれ以上学園に通わせてはおけん! 学園長、この不肖な娘は退学処分にしてくれ」
屋敷に戻ると、お父様はさらに怒気を露わにし、お姉様を罵倒した。
「おまえのような恥さらしは、カーク侯爵家から出て行け! 離れに住むことすら許さん。荷物をまとめる時間はくれてやる。今日中に出て行けよ! 二度と私の前に姿を見せるな!」
私は笑いをこらえるのに必死だった。お姉様がいなくても、私には何の支障もない。学園に入る前はお姉様の答案用紙が必要だったけれど、今は学年も違う。試験の問題だって別なのだから。
その代わりに、お母様が学園の教師から試験問題を手に入れてくれる。お母様は人の弱みを握るのが得意なのだそう。私は安泰だ。
お姉様は青ざめた顔で、今にも泣き出しそうに見えた。きっと離れに戻って泣いたに違いない。
けれど、トランクひとつでカーク侯爵家を出ていくときには、不思議なほど落ち着いていた。むしろ澄ました顔で、優雅にさえ見えた。
――そういうところが大嫌い。すぐに立ち直ったように振る舞って、まるで私より上だとでも言いたげに見える。
もっと惨めに泣きわめけばいいのに! その方が、ずっと面白いわ!
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