22 / 29
21 復学
しおりを挟む
お父様たちの断罪が終わり、再び荘厳な空気が大聖堂を包んだ。国王陛下は堂々とした足取りで私の前に進むと、静かに、けれど揺るぎない威厳を漂わせながら手を差し伸べた。
「スカーレットよ。ここに正式に、そなたを我が王国の聖女たる者として認定する。そなたの偉大なる力は、国と民を導く光であり、決して汚されることのないものとする」
その瞬間、聖堂内に控えていた貴族たちの間から、自然と拍手と賛同の声が湧き上がった。
「メルバ嬢が聖女に認定される前で、本当に良かったわ」
「真の聖女様に、聖印の首飾りが与えられるとは、喜ばしい限りです」
「今まで虐げられてきて、本当にお可哀想でしたわ。それにしてもお美しいこと……」
拍手はやがて聖堂全体に広がり、まるで柔らかな波のように私の心を包んだ。人々の祝福と期待が一つになり、その場は言葉にできないほどの温かさに満ちていた。
。゚☆: .☽ . :☆゚
認定式が終わり貴族たちも帰った後、私は国王陛下の私的応接室で、今後のことを話していた。その場にはスチュアート様も同席した。
「今までさぞ苦労したことでしょう。もう何も心配することはありません。今後は、聖女として神殿に住み、多くの聖女付きの侍女に傅かれて暮らすように」
王妃殿下が優しくおっしゃった。
「申し訳ありません。それはできません。宿屋の女将さんには、子供が生まれるまでは手伝うと約束しています。途中で放り出すわけにはいきません」
私は必死に、今までの経緯を説明する。
「そなたの気持ちはわかる。だが、民たちには、そなたが聖女に認定されたことを発表せねばなるまい。聖女と認定されたスカーレットが、宿屋に寝泊まりし手伝いに入るなどしていれば、思わぬ危険が生じよう。今後また、誘拐されるような事件が起きるかもしれぬのだぞ」
国王陛下は渋い顔で頭を悩ませておられた。
(わがままを言っているのはわかっている。でも、困っていたときに親切にしてくれた女将さんを裏切りたくない・・・・・・)
「だとしたら、この指輪が役立つかもしれません。 私がこの指輪を使うのは、昼間の学園に通っている時だけです。 スカーレットは夕方から混み合う宿屋の食堂を手伝う。その間、この指輪を貸しましょう。この指輪は髪の色や瞳の色を自由に変える魔道具です。女将さんには正体を明かし、目立たない髪と瞳に変えれば、周囲には気づかれないでしょう」
「なるほど。それなら、別人のふりをして宿屋の夕食時の混雑を手伝うということだな。ならば、昼間は学園に復学し、のびのびと学園生活を楽しむと良いのではないか? もう、わざと間違えた答案用紙を提出する必要もない」
国王陛下がそうおっしゃると、王妃殿下も深く頷かれた。
「継母や妹のせいで、学園生活が辛かったと聞いています。せめて、いい思い出を作らせてあげたいわ。聖女としての仕事は人々を癒すことですが、学園が休みの祝祭日の午前中に回せば十分でしょう。一度に多くの人数を癒す必要はありません。スカーレットの健康が第一ですから」
お二人の言葉は、宿屋の女将さんやアテナさん達が見せてくれた温かさを思い起こさせ、思わず胸が熱くなった。
昼間は学園で学び、夕方からは変装して宿屋を手伝う。住まいは聖騎士に守られた神殿で、スチュアート様率いる近衛兵も特別に護衛に当たることとなった。
「何しろ 私はスカーレットを未来の妃として考えていますから。 彼女の身の安全が何よりも心配です」
そうおっしゃりながら、スチュアート様は私の髪の一房をそっと取り、軽く口づけをして微笑んだ。
「我が国の聖女が、大国ゴールドバーグの正妃に迎えられるのは大変喜ばしい」
国王夫妻は ニコニコと その様子を見守りおっしゃった。
「 ・・・・・・私は、まだお返事をしていません」
顔を真っ赤にして告げると、王妃殿下はにっこり微笑みながら、「もちろん、スカーレットの気持ちが一番大事です」とおっしゃった。
(でも・・・・・・外堀がどんどん埋められていくような気がするのは、気のせいかしら?)
ちらりとスチュアート様の方を見ると、蕩けるような笑顔が眩しくて、思わず目を逸らした。胸が高鳴り、心臓が苦しいほどよ。
(もう私はこの方が好きなのかも・・・・・・)
甘い恋の予感とともに、私は再び学園に戻ることになるのだった。
❀┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈❀
学園で、かなり意地悪なことを言っていた女生徒もいましたね。さて、彼女たちはいったいどのような反応を見せるのでしょうか。次回のお話を、どうぞお楽しみに!
「スカーレットよ。ここに正式に、そなたを我が王国の聖女たる者として認定する。そなたの偉大なる力は、国と民を導く光であり、決して汚されることのないものとする」
その瞬間、聖堂内に控えていた貴族たちの間から、自然と拍手と賛同の声が湧き上がった。
「メルバ嬢が聖女に認定される前で、本当に良かったわ」
「真の聖女様に、聖印の首飾りが与えられるとは、喜ばしい限りです」
「今まで虐げられてきて、本当にお可哀想でしたわ。それにしてもお美しいこと……」
拍手はやがて聖堂全体に広がり、まるで柔らかな波のように私の心を包んだ。人々の祝福と期待が一つになり、その場は言葉にできないほどの温かさに満ちていた。
。゚☆: .☽ . :☆゚
認定式が終わり貴族たちも帰った後、私は国王陛下の私的応接室で、今後のことを話していた。その場にはスチュアート様も同席した。
「今までさぞ苦労したことでしょう。もう何も心配することはありません。今後は、聖女として神殿に住み、多くの聖女付きの侍女に傅かれて暮らすように」
王妃殿下が優しくおっしゃった。
「申し訳ありません。それはできません。宿屋の女将さんには、子供が生まれるまでは手伝うと約束しています。途中で放り出すわけにはいきません」
私は必死に、今までの経緯を説明する。
「そなたの気持ちはわかる。だが、民たちには、そなたが聖女に認定されたことを発表せねばなるまい。聖女と認定されたスカーレットが、宿屋に寝泊まりし手伝いに入るなどしていれば、思わぬ危険が生じよう。今後また、誘拐されるような事件が起きるかもしれぬのだぞ」
国王陛下は渋い顔で頭を悩ませておられた。
(わがままを言っているのはわかっている。でも、困っていたときに親切にしてくれた女将さんを裏切りたくない・・・・・・)
「だとしたら、この指輪が役立つかもしれません。 私がこの指輪を使うのは、昼間の学園に通っている時だけです。 スカーレットは夕方から混み合う宿屋の食堂を手伝う。その間、この指輪を貸しましょう。この指輪は髪の色や瞳の色を自由に変える魔道具です。女将さんには正体を明かし、目立たない髪と瞳に変えれば、周囲には気づかれないでしょう」
「なるほど。それなら、別人のふりをして宿屋の夕食時の混雑を手伝うということだな。ならば、昼間は学園に復学し、のびのびと学園生活を楽しむと良いのではないか? もう、わざと間違えた答案用紙を提出する必要もない」
国王陛下がそうおっしゃると、王妃殿下も深く頷かれた。
「継母や妹のせいで、学園生活が辛かったと聞いています。せめて、いい思い出を作らせてあげたいわ。聖女としての仕事は人々を癒すことですが、学園が休みの祝祭日の午前中に回せば十分でしょう。一度に多くの人数を癒す必要はありません。スカーレットの健康が第一ですから」
お二人の言葉は、宿屋の女将さんやアテナさん達が見せてくれた温かさを思い起こさせ、思わず胸が熱くなった。
昼間は学園で学び、夕方からは変装して宿屋を手伝う。住まいは聖騎士に守られた神殿で、スチュアート様率いる近衛兵も特別に護衛に当たることとなった。
「何しろ 私はスカーレットを未来の妃として考えていますから。 彼女の身の安全が何よりも心配です」
そうおっしゃりながら、スチュアート様は私の髪の一房をそっと取り、軽く口づけをして微笑んだ。
「我が国の聖女が、大国ゴールドバーグの正妃に迎えられるのは大変喜ばしい」
国王夫妻は ニコニコと その様子を見守りおっしゃった。
「 ・・・・・・私は、まだお返事をしていません」
顔を真っ赤にして告げると、王妃殿下はにっこり微笑みながら、「もちろん、スカーレットの気持ちが一番大事です」とおっしゃった。
(でも・・・・・・外堀がどんどん埋められていくような気がするのは、気のせいかしら?)
ちらりとスチュアート様の方を見ると、蕩けるような笑顔が眩しくて、思わず目を逸らした。胸が高鳴り、心臓が苦しいほどよ。
(もう私はこの方が好きなのかも・・・・・・)
甘い恋の予感とともに、私は再び学園に戻ることになるのだった。
❀┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈❀
学園で、かなり意地悪なことを言っていた女生徒もいましたね。さて、彼女たちはいったいどのような反応を見せるのでしょうか。次回のお話を、どうぞお楽しみに!
1,536
あなたにおすすめの小説
【完結】「お前に聖女の資格はない!」→じゃあ隣国で王妃になりますね
ぽんぽこ@3/28新作発売!!
恋愛
【全7話完結保証!】
聖王国の誇り高き聖女リリエルは、突如として婚約者であるルヴェール王国のルシアン王子から「偽聖女」の烙印を押され追放されてしまう。傷つきながらも母国へ帰ろうとするが、運命のいたずらで隣国エストレア新王国の策士と名高いエリオット王子と出会う。
「僕が君を守る代わりに、その力で僕を助けてほしい」
甘く微笑む彼に導かれ、戸惑いながらも新しい人生を歩み始めたリリエル。けれど、彼女を追い詰めた隣国の陰謀が再び迫り――!?
追放された聖女と策略家の王子が織りなす、甘く切ない逆転ロマンス・ファンタジー。
異母妹に婚約者の王太子を奪われ追放されました。国の守護龍がついて来てくれました。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
「モドイド公爵家令嬢シャロン、不敬罪に婚約を破棄し追放刑とする」王太子は冷酷非情に言い放った。モドイド公爵家長女のシャロンは、半妹ジェスナに陥れられた。いや、家族全員に裏切られた。シャロンは先妻ロージーの子供だったが、ロージーはモドイド公爵の愛人だったイザベルに毒殺されていた。本当ならシャロンも殺されている所だったが、王家を乗っ取る心算だったモドイド公爵の手駒、道具として生かされていた。王太子だった第一王子ウイケルの婚約者にジェスナが、第二王子のエドワドにはシャロンが婚約者に選ばれていた。ウイケル王太子が毒殺されなければ、モドイド公爵の思い通りになっていた。だがウイケル王太子が毒殺されてしまった。どうしても王妃に成りたかったジェスナは、身体を張ってエドワドを籠絡し、エドワドにシャロンとの婚約を破棄させ、自分を婚約者に選ばせた。
プリン食べたい!婚約者が王女殿下に夢中でまったく相手にされない伯爵令嬢ベアトリス!前世を思いだした。え?乙女ゲームの世界、わたしは悪役令嬢!
山田 バルス
恋愛
王都の中央にそびえる黄金の魔塔――その頂には、選ばれし者のみが入ることを許された「王都学院」が存在する。魔法と剣の才を持つ貴族の子弟たちが集い、王国の未来を担う人材が育つこの学院に、一人の少女が通っていた。
名はベアトリス=ローデリア。金糸を編んだような髪と、透き通るような青い瞳を持つ、美しき伯爵令嬢。気品と誇りを備えた彼女は、その立ち居振る舞いひとつで周囲の目を奪う、まさに「王都の金の薔薇」と謳われる存在であった。
だが、彼女には胸に秘めた切ない想いがあった。
――婚約者、シャルル=フォンティーヌ。
同じ伯爵家の息子であり、王都学院でも才気あふれる青年として知られる彼は、ベアトリスの幼馴染であり、未来を誓い合った相手でもある。だが、学院に入ってからというもの、シャルルは王女殿下と共に生徒会での活動に没頭するようになり、ベアトリスの前に姿を見せることすら稀になっていった。
そんなある日、ベアトリスは前世を思い出した。この世界はかつて病院に入院していた時の乙女ゲームの世界だと。
そして、自分は悪役令嬢だと。ゲームのシナリオをぶち壊すために、ベアトリスは立ち上がった。
レベルを上げに励み、頂点を極めた。これでゲームシナリオはぶち壊せる。
そう思ったベアトリスに真の目的が見つかった。前世では病院食ばかりだった。好きなものを食べられずに死んでしまった。だから、この世界では美味しいものを食べたい。ベアトリスの食への欲求を満たす旅が始まろうとしていた。
初恋の人を思い出して辛いから、俺の前で声を出すなと言われました
柚木ゆず
恋愛
「俺の前で声を出すな!!」
マトート子爵令嬢シャルリーの婚約者であるレロッズ伯爵令息エタンには、隣国に嫁いでしまった初恋の人がいました。
シャルリーの声はその女性とそっくりで、聞いていると恋人になれなかったその人のことを思い出してしまう――。そんな理由でエタンは立場を利用してマトート家に圧力をかけ、自分の前はもちろんのこと不自然にならないよう人前で声を出すことさえも禁じてしまったのです。
自分の都合で好き放題するエタン、そんな彼はまだ知りません。
その傍若無人な振る舞いと自己中心的な性格が、あまりにも大きな災難をもたらしてしまうことを。
※11月18日、本編完結。時期は未定ではありますが、シャルリーのその後などの番外編の投稿を予定しております。
※体調の影響により一時的に、最新作以外の感想欄を閉じさせていただいております。
【完結】完璧令嬢の『誰にでも優しい婚約者様』
恋せよ恋
恋愛
名門で富豪のレーヴェン伯爵家の跡取り
リリアーナ・レーヴェン(17)
容姿端麗、頭脳明晰、誰もが憧れる
完璧な令嬢と評される“白薔薇の令嬢”
エルンスト侯爵家三男で騎士課三年生
ユリウス・エルンスト(17)
誰にでも優しいが故に令嬢たちに囲まれる”白薔薇の婚約者“
祖父たちが、親しい学友であった縁から
エルンスト侯爵家への経済支援をきっかけに
5歳の頃、家族に祝福され結ばれた婚約。
果たして、この婚約は”政略“なのか?
幼かった二人は悩み、すれ違っていくーー
今日もリリアーナの胸はざわつく…
🔶登場人物・設定は作者の創作によるものです。
🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。
🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。
🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。
🔶 いいね❤️励みになります!ありがとうございます✨
辺境は独自路線で進みます! ~見下され搾取され続けるのは御免なので~
紫月 由良
恋愛
辺境に領地を持つマリエ・オリオール伯爵令嬢は、貴族学院の食堂で婚約者であるジョルジュ・ミラボーから婚約破棄をつきつけられた。二人の仲は険悪で修復不可能だったこともあり、マリエは快諾すると学院を早退して婚約者の家に向かい、その日のうちに婚約が破棄された。辺境=田舎者という風潮によって居心地が悪くなっていたため、これを機に学院を退学して領地に引き籠ることにした。
魔法契約によりオリオール伯爵家やフォートレル辺境伯家は国から離反できないが、関わり合いを最低限にして独自路線を歩むことに――。
※小説家になろう、カクヨムにも投稿しています
醜い私は妹の恋人に騙され恥をかかされたので、好きな人と旅立つことにしました
つばめ
恋愛
幼い頃に妹により火傷をおわされた私はとても醜い。だから両親は妹ばかりをかわいがってきた。伯爵家の長女だけれど、こんな私に婿は来てくれないと思い、領地運営を手伝っている。
けれど婚約者を見つけるデェビュタントに参加できるのは今年が最後。どうしようか迷っていると、公爵家の次男の男性と出会い、火傷痕なんて気にしないで参加しようと誘われる。思い切って参加すると、その男性はなんと妹をエスコートしてきて……どうやら妹の恋人だったらしく、周りからお前ごときが略奪できると思ったのかと責められる。
会場から逃げ出し失意のどん底の私は、当てもなく王都をさ迷った。ぼろぼろになり路地裏にうずくまっていると、小さい頃に虐げられていたのをかばってくれた、商家の男性が現れて……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる