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妹編

3 拷問のような晩餐会

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 城の侍女が持ってきたお茶とお菓子は、全て遠ざけられて、あたしの戦闘侍女は、城の厨房に行き、新しいお茶を用意した。使用人が食べる素朴なおやつも、一緒に持ってきてくれる。

「こんなの、全然可愛いお菓子じゃないけど、しようがないから食べるね」

 あたしは、その型を抜いたパイ生地の残りを焼いたものをかじった。形は不格好だったけれど、チーズが振ってあって、美味しかった。こんなの、アーメッド王国のお城では、使用人だって食べないよ。でも、毒が入っていない確かな物だって戦闘侍女が言ってた。

 はぁーー、なんで、こんなことになっちゃったの?


*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚

ーーその夜の晩餐会の大広間にて、エメラルド王国の高位貴族も同席ーー


 一応、あたしが嫁いできたことを歓迎する意味で晩餐会が開かれた。エメラルド王国の高位貴族達の、あたしを品定めするかのような視線が痛い。

「あれが、”聖女さま”と讃えられるカリスタ王女様? 思ったよりも美しくないわね。あまりにも、噂と違うわね」

「あれが、アーメッド王国が誇る第一王女? 輝くような美貌に、素晴らしい英知と謳われる姫君? 会話もせずに、うつむいているばかりじゃないか・・・」

 ひそひそと、話す声と嘲笑が、容赦なく飛び交う。お姉様とあたしでは、できが違うもん。しようがないよ・・・

 晩餐会では、美味しそうなお料理が、所狭しと並んでいたけれど、全て食べるのは禁止だ。なんの拷問なの?

「カリスタ王女は、少しも食べないが、我が国の料理がお口に合わないのかな?」

 私は、そんなふうにイグナ王に責められたけれど、お部屋で見た虫がお腹を向けてひっくり返っていた様子を思い出す。ここで、食べたらひっくり返るのは、あたしかもしれないもん。食べられるわけがないよ。

「少し、体調がよくないようでして、食欲がないのです。申し訳ありません」

 あたしは、そう言いながら、ワインもなにもかも、口をつけたふりをし、常にお姉様のようにほのかに微笑んでいなければならない。顔の表情筋が引きつって、ピクピクしてくると、少し真顔に戻して、また笑顔を浮かべる。

 こんなことをお姉様は、いつもしていたんだ。そんなに意味もなく笑顔なんて浮かべていられないよ。常に人の目を意識するって大変なんだ・・・

 
*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚

ーーエメラルド王国のクリスティンの部屋にてーー

 あたしは、疲れてドレスも脱がずにベッドに転がると、途端に背中にチクリと痛みが。

「いたぁい!」
 
 びっくりして起き上がると、小さなピンが背中に刺さっていた。小さな物だから、たいした怪我ではないけれど・・・これが、もっと大きい物だったら・・・そう思うと、ぞっとした。

「姫様! ここは、でございます! 油断してはいけません!」

 ほぇ? ここは? なにを言っているのよ? 私は、この侍女の言う意味が、少しもわからないよ。

 ここは、愛されて大事にされるために嫁いできた、私とイグナ王の愛の巣だよね?
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