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妹編
5 カリスタ王女の戦闘侍女視点
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カリスタ王女様は、お生れになったときから、魔法が使えた。それほど、凄い魔法ではないけれど、この世界では大変なことだった。初歩的な身代わりの魔法と水が操れるだけだったが、国王夫妻はカリスタ王女様を王家の犠牲にしようと教育し始めた。
賢く美しく産まれた王女は、政治的な意味で利用される。魔法が使えるとなれば、なおさらだ。かわいそうに、幼い頃から、カリスタ王女様は、勉強漬けの毎日だった。別荘では、身体能力を鍛える為に、戦闘侍女達と訓練する日々・・・
カリスタ王女様を危険な敵国に送って、刺客にさせようとしている国王夫妻に、私は憤りを覚えていた。カリスタ王女様は、そんな敵国で殺されるかもしれない人生を、ただ静かに受け止めていた。
身代わりの魔法は、カリスタ王女様によく似た人形にカリスタ様の髪と爪を心臓部分に詰めて、災いを人形に代わってもらうという魔法だ。これは、敵地に赴いている時や就寝時にだけ使われる。確かに、ある程度の危害は防げるものの、人形を狙われれば本体にかえってくるかなり危険な魔法。不死身というわけではないのだ。
カリスタ王女様は、使用人達にも優しく、分け隔てなく接してくださる方だ。このような方を、むざむざ敵国にお連れすることはできない。、まして、イグナ王は剣の達人だ。毒で弱らせても勝ち目は薄い。
冗談じゃないよ! カリスタ王女様に、そんなことはさせられない。私達、専属の戦闘侍女達は、カリスタ王女様を逃がすつもりだった。輿入れの途中の国境付近で、私がカリスタ王女様と入れ替わるつもりだったのだ。
だからこそ、イグナ王側に渡す釣書の写真は、わざと顔が鮮明には写っていないものを用意した。髪の色も、結い上げてベールで包みこんでいるのでわからない。すらりとした細身の女性だが、メリハリのある美しい体型であることだけはわかる写真を選んだ。
私がすり替わるつもりだった計画は、愚かな二番目のお姫様がカリスタ王女様に眠り薬入りのクッキーを食べさせたことで中止になった。戦闘侍女達や他の侍女達も、クリスティン様が、すり替わったことに、みんな気がついていたのだ。でも、見て見ぬふりをした。
止める必要なんてないから・・・我が儘放題で育って、王家の闇の部分も知らずに、暢気に生きて、カリスタ王女様に身勝手なヤキモチをやいたおバカさん。
クリスティン王女様が、遊びで、カリスタ王女様の侍女を突き飛ばして、その侍女が溺れて死にそうになったことを私達は知っている。夜中に忍び込み、カリスタ王女様の髪をざん切りにして喜んでいたことも。猫を森に棄て、宝石を裏庭に埋め、カリスタ王女様の愛読書を破いた。
私達、戦闘侍女は、全て見ていたし、そのようなことに気がつかないようでは、戦闘侍女の資格はない。また、お止めする立場にもなかった。ただ、王妃様には、ありのままご報告してさしあげた。
*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚
夜も更けていき、濁った月のあかりが薄暗い部屋に差し込む。城の侍女が、クリスティン王女様をイグナ王の寝室に連れて行った。
今夜が、クリスティン王女様の最期になるかもしれない・・・自業自得だ。
万が一、クリスティン様がイグナ王に気に入られたとしても・・・このお城にはイグナ王の弟君がイグナ王を暗殺する為に刺客を送り込んでいるという噂もある。イグナ王の二人の愛妾はクリスティン様を狙うだろうし・・・
要するに、このエメラルド王国の王宮のなかは、いつ誰に狙われて死んでもおかしくない、めちゃめちゃハードなサバイバルゲームの場なのだ。
私達が、ここを生きて出られる確率は半々。・・・でも、満足だ・・・大事なカリスタ王女様が、辺境伯のもとで、幸せになれることが、わかっているから・・・
さぁて、クリスティン様の様子でも見てこようかねぇーー。私達、戦闘侍女7人は、動きやすい服に着替えてイグナ王の寝室に外と内から向かう。
クリスティン様には、良い薬だ。もしも、生き延びられたなら、その時には、クリスティン様は今のクリスティン様ではなくなっているだろう。
「ちょっとは、ましな王女になってるだろうさ」
私は、小さな声でつぶやいたのだった。
賢く美しく産まれた王女は、政治的な意味で利用される。魔法が使えるとなれば、なおさらだ。かわいそうに、幼い頃から、カリスタ王女様は、勉強漬けの毎日だった。別荘では、身体能力を鍛える為に、戦闘侍女達と訓練する日々・・・
カリスタ王女様を危険な敵国に送って、刺客にさせようとしている国王夫妻に、私は憤りを覚えていた。カリスタ王女様は、そんな敵国で殺されるかもしれない人生を、ただ静かに受け止めていた。
身代わりの魔法は、カリスタ王女様によく似た人形にカリスタ様の髪と爪を心臓部分に詰めて、災いを人形に代わってもらうという魔法だ。これは、敵地に赴いている時や就寝時にだけ使われる。確かに、ある程度の危害は防げるものの、人形を狙われれば本体にかえってくるかなり危険な魔法。不死身というわけではないのだ。
カリスタ王女様は、使用人達にも優しく、分け隔てなく接してくださる方だ。このような方を、むざむざ敵国にお連れすることはできない。、まして、イグナ王は剣の達人だ。毒で弱らせても勝ち目は薄い。
冗談じゃないよ! カリスタ王女様に、そんなことはさせられない。私達、専属の戦闘侍女達は、カリスタ王女様を逃がすつもりだった。輿入れの途中の国境付近で、私がカリスタ王女様と入れ替わるつもりだったのだ。
だからこそ、イグナ王側に渡す釣書の写真は、わざと顔が鮮明には写っていないものを用意した。髪の色も、結い上げてベールで包みこんでいるのでわからない。すらりとした細身の女性だが、メリハリのある美しい体型であることだけはわかる写真を選んだ。
私がすり替わるつもりだった計画は、愚かな二番目のお姫様がカリスタ王女様に眠り薬入りのクッキーを食べさせたことで中止になった。戦闘侍女達や他の侍女達も、クリスティン様が、すり替わったことに、みんな気がついていたのだ。でも、見て見ぬふりをした。
止める必要なんてないから・・・我が儘放題で育って、王家の闇の部分も知らずに、暢気に生きて、カリスタ王女様に身勝手なヤキモチをやいたおバカさん。
クリスティン王女様が、遊びで、カリスタ王女様の侍女を突き飛ばして、その侍女が溺れて死にそうになったことを私達は知っている。夜中に忍び込み、カリスタ王女様の髪をざん切りにして喜んでいたことも。猫を森に棄て、宝石を裏庭に埋め、カリスタ王女様の愛読書を破いた。
私達、戦闘侍女は、全て見ていたし、そのようなことに気がつかないようでは、戦闘侍女の資格はない。また、お止めする立場にもなかった。ただ、王妃様には、ありのままご報告してさしあげた。
*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚
夜も更けていき、濁った月のあかりが薄暗い部屋に差し込む。城の侍女が、クリスティン王女様をイグナ王の寝室に連れて行った。
今夜が、クリスティン王女様の最期になるかもしれない・・・自業自得だ。
万が一、クリスティン様がイグナ王に気に入られたとしても・・・このお城にはイグナ王の弟君がイグナ王を暗殺する為に刺客を送り込んでいるという噂もある。イグナ王の二人の愛妾はクリスティン様を狙うだろうし・・・
要するに、このエメラルド王国の王宮のなかは、いつ誰に狙われて死んでもおかしくない、めちゃめちゃハードなサバイバルゲームの場なのだ。
私達が、ここを生きて出られる確率は半々。・・・でも、満足だ・・・大事なカリスタ王女様が、辺境伯のもとで、幸せになれることが、わかっているから・・・
さぁて、クリスティン様の様子でも見てこようかねぇーー。私達、戦闘侍女7人は、動きやすい服に着替えてイグナ王の寝室に外と内から向かう。
クリスティン様には、良い薬だ。もしも、生き延びられたなら、その時には、クリスティン様は今のクリスティン様ではなくなっているだろう。
「ちょっとは、ましな王女になってるだろうさ」
私は、小さな声でつぶやいたのだった。
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