(完)妹の婚約者を誘惑したと言うけれど、その彼にそんな価値がありますか?

青空一夏

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妹の婚約者に迫られて・・・・・・勘当された私

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 私、ジョセフィーヌはフレーク家のメイドです。なぁーーんて、ことは嘘でれっきとしたこの家の娘なのですがね。メイドみたいな扱いになっております。

 私のお母様が7歳の時に亡くなり、すぐに後妻のオードリーがやって来てその子供のエラが生まれると状況が一変しましたね。お父様も、私に見向きもしなくなりました。まぁ、いいのですけれどね。 

「お姉様、このドレスの裾を繕っておいてよ」

「はい、はい。わかりましたよ」

 私は、そのドレスを綺麗に繕います。お裁縫は好きだから特に苦にはなりません。

「ジョセ! このジャガイモ剥いておきなさい。コックが怪我をして当分来れないらしいからね。お前が代わりにお料理しなさい」
オードリーが私に命令します。

「はい、はい。わかりましたよ」

 私は、機嫌よく返事をしました。お料理は好きです。今日は何を作りましょうかねぇ。私は鼻歌を歌いながらじゃがいもを剥きます。

「お姉様はメイドみたい。ついでに、お洗濯もしておいて?」

「はい、はい。わかりましたよ」

私は、軽く返事をします。お洗濯は、最近は楽なのですよ。機械が開発されましたからね。絞るだけのものですけれど、洗うだけやっておけばその機械が絞ってくれます。ありがたいことですね?

 そのようなかたちで、フレーク男爵家で私はけっこう楽しく暮らしていました。それが、覆されたのはエラの婚約者のライアン様のせいでした。

「ジョセ!君って、ほんとうはすごい美人だね? ねぇ、僕の愛人になってよ?」

「へ? なぜですか?」

「だって、ジョセはなんでも、『はい、はい。わかりましたよ』といって、裁縫も料理もするのだろう?なら、僕の愛人にもなれるよね?」

 一瞬、私の脳みそが凍った音がしましたよ。えぇ、ピシリという音が確かに聞こえましたとも!

 「ねぇ、だからさ、キスさせてよ。あ、ついでに胸も触っていいだろ?」

 ライアン様は、私を押し倒すのです。

 なんで、そうなるのでしょうか?いいわけが、ありません。私はもちろん抵抗しました。

「おとなしくしろ!厄介者のくせに!お前なんて、誰も、気にかけていないぞ!死んだって誰も悲しまないな」

 やれやれ、酷いことをおっしゃいますね。人を傷つけて喜ぶ人間は最低ですよ。私は、彼の将来のためにも、横っ面を思いっきり叩きました。ついでに、蹴りもいれようかという時に運悪くエラに見つかりました。

「こんなところで、なにをしているの?」

 エラは不審な顔をしています。ここは、台所の隅に掘った穴蔵のような所で、ひんやりとした冷気が籠もるので野菜の貯蔵庫になっています。そして、今の私はライアン様に押し倒されているのです。

「あぁ、助かったよ、エラ!この性悪女が俺を誘惑したのだ。エラが来てくれて本当に良かった」

 なにを大嘘を、おっしゃっているのでしょうか。ムカムカした私は、ライアン様の急所を思いっきり蹴り上げました。

「ぎゃぁーー。痛い! おっ、おっ、お前ぇーー、使い物にならなくなったらどうするのだぁーー?」

 いや、そんなことは私の知ったことではありませんね。むしろ、いっそ、一生使えなくなったほうがいいのではないでしょうか?私は、心の底から思いましたよ。

「ちょっと、お姉様! ライアン様を誘惑するなんて最低! しかも、そのようなところを蹴り上げて!」

 二人で私を責めますが、私はそもそも誘惑などしていませんよ? エラやオードリーに言っても信じてはくれません。

「そんなに男を誘惑するのが好きなら、そういう場所で働くといいわ」

 オードリーが、憎々しげに私を睨んで来ました。

「今まで、育ててやった恩も忘れて妹の婚約者を誘惑する娘はうちの子ではないな。もう、16歳なら立派な大人だ。ここから出て行き、自分で働いて暮らすといい」

 お父様がそうおっしゃるので、私はフレーク男爵家を出ていくことになりました。

 翌日、お父様は仕事先の紹介状とわずかなお金を私に持たせて「二度と戻ってくるなよ」とおっしゃいました。

 もちろん、言われなくても、戻ってくる気はありません。なぜ、そのようなことをわざわざおっしゃるのでしょうか?

「貴女の母親が亡くなったあたりから、変な手紙が毎月来ていたけれど、渡すのを忘れていたわ。ほら、これを持ってさっさと消えな!」

 オードリーがそう言いながら、たくさんの質素な茶封筒に入った手紙を投げてきました。私はそれを拾い上げると紹介状を持って、その場所に行きました。・・・・・・そこは、私でもわかるいかがわしい場所でした。いわゆる娼館といわれているところですね。さすがに、私のお父様には呆れましたよ。いわゆる、鬼畜ですね?いつか、このお返しはしたいものです。

 私は、その場を離れて、先ほど投げつけられた手紙を開封してみました。すると、茶封筒の中から綺麗な淡いピンクの封筒が現れました。なぜ、二重になっているのでしょう?表の質素な封筒には「ルドレア侯爵邸門番 マリオ」とありますが、中のピンクの封筒には「ルドレア侯爵 カトリーヌ」とあります。

  
  私の姪のジョセフィーヌ、なにか辛いことがあったなら、すぐにいらっしゃい。


どのお手紙も、この一文だけが書かれていたのでした。



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