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自由になったエラ
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ルドレア侯爵家の馬車が娼館の前に止り、私はそれに乗り込んだ。
豪奢な馬車は、貴族の中でも高位の財力を誇る大貴族のものだ。
ここに置かれているクッション一つに、いくらの価値があるのだろう。多分、私の一ヶ月のお給料でも手は届かないのかもしれない。私は、もうお姉様とは別世界の人間なんだと思い知らされたが、嫉妬の気持ちはまるでなかった。
外の天気はうららかで、柔らかな陽射しはとても気持ちが良い。馬車が着いた先は、とても大きな門構えの屋敷だ。敷地が広大すぎて、門のあたりからは屋敷の半分も見えない。
ここは、まさに天上人が住む屋敷だ。娼婦に落ちてから、先輩達が高位貴族様のことを天上人とかお雲さんと呼んでいたのを思い出した。お雲さんは、雲の上の人という意味だった。
「お姉様はお雲さん。私は地ベタに這いつくばっている名もない虫だなぁ」
独り言を呟き、そうして虫は虫なりに、頑張ってお雲さんに挨拶しようと思うのだった。
*:.。 。.:*・゚✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*
大きな客間に通され、しばらく待たされていると、かつての婚約者がやって来た。
顔の輪郭は別人のようにシャープだ。以前はスラリとして細いだけだった身体が、今は鋼のように引き締まって、過酷な任務に就いていたのがわかる。辺境地の兵士になったと聞いていたが、よく生きていたなと感心した。
お互いがお互いを認識したが、話す言葉はなかった。なぜなら、私達はきっとこの瞬間しか会うことはないからだ。このお目通りが終われば、また別々なところに行き、お互いの人生がまた始まる。
「エラさん。どうぞ、お嬢様がいらっしゃいました」
客間から、また別な客間に案内される。この屋敷は、客間がいくつあるのだろう?
今度は、少しこじんまりした部屋に通された。お姉様は、つやつやの金髪を優雅にハーフアップにして複雑に編み込んでいた。ドレスは上品なベージュだ。薄化粧をして、微笑んでいるように見えた。
「エラ。お久しぶりね?」
お姉様の声はこんなに上品で綺麗だったのか。なにもかもが、別世界で手が震えた。
「お時間を割いてくださって、ありがとうございます。ただ、おねえ・・・・・・いいえ、ジョセフィーヌ様にお会いして今までのことをお詫びしたかったのです。大変、申し訳ありませんでした。それと、両親の話も聞きました。どうやって、お詫びをしたらいいのかわからないほど酷い話でした・・・・・・」
「そう、わざわざ、ありがとう。最初のお詫びだけ、いただいておきます。貴女の両親の罪はエラには関係ないわ。ところで、エラの目標は最も成功した娼婦になって贅沢することだったわね? 今でも、そうなのかしら?」
お姉様の顔は穏やかで、考えていらっしゃることがわからない。どんな答えを期待されているのかも・・・・・・
「いいえ。あれから、私も変わりました。娼婦で一番になって、たくさんのお金に埋もれることがあっても、きっと私は裕福ではなくとも本当に愛する男性から大事にされている女性を一生羨ましいと思うでしょう」
「そう、貴女の望みはきっと叶うでしょう」
お姉様は私にそうおっしゃった。私は、それから、先輩娼婦に約束通りお土産を買い娼館に戻った。
「お帰りぃーー。楽しかったかい?」先輩娼婦達はなぜか、泣いていた。
「おめでとう! あんたは、今から自由だってさ! それと、今まで働いた分の給料は全部、支給されるらしいよ。しっかり、お生きよ。二度とここには戻ってくるんじゃないよっ!」
一番の売れっ子先輩から抱きしめられて、私は泣いたのだった。
豪奢な馬車は、貴族の中でも高位の財力を誇る大貴族のものだ。
ここに置かれているクッション一つに、いくらの価値があるのだろう。多分、私の一ヶ月のお給料でも手は届かないのかもしれない。私は、もうお姉様とは別世界の人間なんだと思い知らされたが、嫉妬の気持ちはまるでなかった。
外の天気はうららかで、柔らかな陽射しはとても気持ちが良い。馬車が着いた先は、とても大きな門構えの屋敷だ。敷地が広大すぎて、門のあたりからは屋敷の半分も見えない。
ここは、まさに天上人が住む屋敷だ。娼婦に落ちてから、先輩達が高位貴族様のことを天上人とかお雲さんと呼んでいたのを思い出した。お雲さんは、雲の上の人という意味だった。
「お姉様はお雲さん。私は地ベタに這いつくばっている名もない虫だなぁ」
独り言を呟き、そうして虫は虫なりに、頑張ってお雲さんに挨拶しようと思うのだった。
*:.。 。.:*・゚✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*
大きな客間に通され、しばらく待たされていると、かつての婚約者がやって来た。
顔の輪郭は別人のようにシャープだ。以前はスラリとして細いだけだった身体が、今は鋼のように引き締まって、過酷な任務に就いていたのがわかる。辺境地の兵士になったと聞いていたが、よく生きていたなと感心した。
お互いがお互いを認識したが、話す言葉はなかった。なぜなら、私達はきっとこの瞬間しか会うことはないからだ。このお目通りが終われば、また別々なところに行き、お互いの人生がまた始まる。
「エラさん。どうぞ、お嬢様がいらっしゃいました」
客間から、また別な客間に案内される。この屋敷は、客間がいくつあるのだろう?
今度は、少しこじんまりした部屋に通された。お姉様は、つやつやの金髪を優雅にハーフアップにして複雑に編み込んでいた。ドレスは上品なベージュだ。薄化粧をして、微笑んでいるように見えた。
「エラ。お久しぶりね?」
お姉様の声はこんなに上品で綺麗だったのか。なにもかもが、別世界で手が震えた。
「お時間を割いてくださって、ありがとうございます。ただ、おねえ・・・・・・いいえ、ジョセフィーヌ様にお会いして今までのことをお詫びしたかったのです。大変、申し訳ありませんでした。それと、両親の話も聞きました。どうやって、お詫びをしたらいいのかわからないほど酷い話でした・・・・・・」
「そう、わざわざ、ありがとう。最初のお詫びだけ、いただいておきます。貴女の両親の罪はエラには関係ないわ。ところで、エラの目標は最も成功した娼婦になって贅沢することだったわね? 今でも、そうなのかしら?」
お姉様の顔は穏やかで、考えていらっしゃることがわからない。どんな答えを期待されているのかも・・・・・・
「いいえ。あれから、私も変わりました。娼婦で一番になって、たくさんのお金に埋もれることがあっても、きっと私は裕福ではなくとも本当に愛する男性から大事にされている女性を一生羨ましいと思うでしょう」
「そう、貴女の望みはきっと叶うでしょう」
お姉様は私にそうおっしゃった。私は、それから、先輩娼婦に約束通りお土産を買い娼館に戻った。
「お帰りぃーー。楽しかったかい?」先輩娼婦達はなぜか、泣いていた。
「おめでとう! あんたは、今から自由だってさ! それと、今まで働いた分の給料は全部、支給されるらしいよ。しっかり、お生きよ。二度とここには戻ってくるんじゃないよっ!」
一番の売れっ子先輩から抱きしめられて、私は泣いたのだった。
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