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10 アリッサに自信をもたらすライン
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「だって、アリッサ嬢の姿がよく見えていないようでしたからね。これだけ清楚な美しさを持つアリッサ嬢を褒めないなんて、目が見えているとは思えません。私の目に映るアリッサ嬢は上品で綺麗で最高の女性ですからね」
ギャロウェイ伯爵夫妻とニッキーが驚きに目を白黒させて戸惑う様子に、アリッサとプレシャスは思わず微笑んだ。ラインは屈託のない笑顔で、遠慮なく率直に自分の考えを述べる。その姿を見たアリッサは、ラインが頼もしい存在であると感じ、次第に好意を抱き始めた。
「ライン卿。庭園をご案内しますわね。庭園とはいっても、ギャロウェイ伯爵家では花を植えませんから、あまり楽しくはないかもしれませんが」
アリッサはラインを庭園へと連れだそうとする。ギャロウェイ伯爵はラインから言われた言葉にどう返していいのか悩んでいたので、この場の雰囲気を変えるためにも、アリッサの提案を後押しすることにした。
「アリッサ、ぜひ、そうしなさい。ギャロウェイ家の庭園は人工的な秩序と美学を追求した庭園でしてね。無駄なものは一切ありません」
ギャロウェイ伯爵は、表向きはにこやかに微笑んでいたが、内心ではラインに対して苦々しく思っていた。「優秀な医者を紹介しましょう」という彼の発言は、失礼極まりないものであり、本来ならば怒って当然の場面だ。しかし、同時に娘のアリッサを「綺麗で清楚で美しくて最高の女性」と褒めてくれたことには、感謝すべき点がある。さらに、朗らかで悪意のまったく感じられない笑顔でその言葉が告げられたため、ここで怒ってしまえば、かえって自分が子供じみた愚か者と見なされかねないのだ。
アリッサとラインはギャロウェイ伯爵家の庭園を並んで歩き始めた。まず、アリッサはニッキーの発言を謝罪することにした。
「お兄様の無礼な発言を許してくださいませ。私の家族は典型的な貴族なのですわ。ギャロウェイ伯爵家の繁栄しか考えていないのです」
「私は気にしていませんよ。結婚するのはアリッサ嬢とであって、ニッキー卿とではありませんからね。ギャロウェイ伯爵家の人々の間違った意見を鵜呑みにしてはいけませんよ。ウィルコックス伯爵夫妻は平気で人を裏切り簡単に嘘をつける邪悪な性格なのです。悪いのはあの二人で、アリッサ嬢にはなんの落ち度もありません。女性としての魅力だってアリッサ嬢のほうがずっと勝っていますからね」
「慰めてくださって、ありがとうございます。でも、お父様たちは、私の魅力不足だと言います。私もお兄様のような金髪碧眼で華やかな容姿だったらと、何度も思ってしまいます」
「金髪碧眼? 髪や瞳の色なんてどうでもいいと、私は思いますよ。アリッサ嬢はとても綺麗だし、清楚で凜とした美しさがある。ギャロウェイ伯爵家の人たちは見る目がないのです。私にはアリッサ嬢が素晴らしい女性だとわかっています」
アリッサは救われた気がした。頭の良さや努力家だという評価は家族も認めてくれていたけれど、容姿のことは褒めてもらった覚えはない。むしろ華やかさや愛らしさに欠けていると、ずっと言われてきたのだ。サミーにも容姿を褒められたことはなかった。
「褒めすぎだと思いますけれど、嬉しいです。ライン卿はとても優しいですね」
「思ったままを申し上げただけです。ところで、わたしのことは、正式な敬称なしに呼んでください。これから、いろいろな場所へ一緒に行きましょう。今から、楽しみだ」
「はい、ではライン様とお呼びしますね。私のことは、呼び捨てで構いません。ライン様といると、自分に自信が持てそうですわ」
「それは良かった。自信を持っていいですよ。それだけの価値がアリッサにはあるのだから」
ラインの言葉が、いつまでも、アリッサの耳に残った。
(私には価値がある。私には魅力がある。自信を持っていいのね?)
アリッサはとてもいい気分だった。ラインの瞳は真っ直ぐで、その口から紡ぎ出される言葉に嘘はない。ラインは思ったままを素直に口にしている。
(信頼できる方だと思うわ。ライン様とお付き合いすることになって本当に良かった)
ギャロウェイ伯爵家のタウンハウスの庭園はそれほど広い敷地ではない。花々の彩りがない代わりに、緻密に手入れをされた木々が芸術的な形に刈り込まれ、整然と配置されていた。花の咲き乱れる自然の美しさを避け、あくまで人工的な秩序と美学を追求した庭園だ。中央には優雅な噴水が設置され、水の流れが静かに響き、庭全体に洗練された雰囲気を漂わせている。無駄なものが一切ない計算しつくされた庭であった。
「私は森のような自然な緑にあふれている場所が好きですが、お父様たちはこのような人工的な庭園がいいと言います。あまりにも形が作られた木ばかりだし、整然と配置されすぎていて、私は苦手なのですけれどね。花もないですし・・・・・・」
「だったら、ワイマーク伯爵領は四方を森に囲まれていますから、絶対に気に入ると思います。それに、ワイマーク伯爵家のマナーハウスやタウンハウスの庭園は花と薬草であふれていますよ。ワイマーク伯爵家は薬草を研究する家柄ですからね。良かったら、今度ご招待しますよ」
「まぁ、素敵。とても、楽しみです。ご自分で薬草も育てるのですか? すごいです」
「趣味が仕事になっているようなものです。緑は人間に大きな幸せをもたらしてくれると思うのですよ。ワイマーク伯爵家は森の良さをそのままに、薬草を無理なく育てていますから、そこに住む小動物たちも共存しあえる環境です」
「小動物? ウサギはいますか? 子供の頃に飼いたかった動物です」
アリッサはラインとの会話が楽しくて、話題が尽きないと思った。
次の週、アリッサは有名な歌劇場で行われる特別公演に誘われた。この歌劇場は美しい石造りの建物に囲まれ中庭には噴水があり、色とりどりの花が咲き乱れていた。上流階級の人々が集まる華やかな場所として知られている。
歌劇を楽しんだ後に、歌劇場の外に出たアリッサたちを待っていたのは、予期せぬ小雨だった。馬車が停めてある距離まではほんの少しだったけれど、ラインは一瞬のためらいもなく、自分の肩にかけていた豪華なマントをはずし、アリッサにそっとかけた。
「傘もありますから、大丈夫ですわ。こんな高価なマントを貸していただく必要はないですのに」
「大事なアリッサを雨にさらしたくないですからね。傘をさしていても、風で小雨が身体に降りかかります。風邪などひいたら大変だ」
ラインはアリッサの肩をしっかりと抱き寄せ、マントで包みながら、濡れないように自分の傘をアリッサの方へと傾けて歩いた。自分よりもアリッサのほうが大事だと言わんばかりに。
(優しい・・・・・・ライン様はとっても優しいわ)
これがサミーだったら、各自別々の傘を無言でさしていたはずだ。マントや上着を貸してくれたことは一度もなかった。大事にされる気分は、自分に価値があるのだと信じさせてくれる。ラインはアリッサに自信を与える男性だった。セリーナとサミーに傷つけられた気持ちが、少しづつ癒やされていくのを、アリッサは感じることができた。
別の日に出席した王家主催の舞踏会でも、ラインのエスコートは素晴らしかった。舞踏会でラインが他の女性たちと挨拶を交わす場面では丁寧に対応しつつも、すぐにアリッサの方へと視線が戻ってきたし、アリッサを独りぼっちで放っておくことなど一度もなかった。
ダンスの時間になると、誰よりも早くアリッサに手を差し出し、優雅にリードして彼女を楽しませた。ラインがアリッサを見つめる目には特別な優しさと愛情が溢れており、他の女性たちには見せない一面をアリッサにだけ向けていることがはっきりとわかる。アリッサは常に、大事にされ守られていると感じることができた。
「ライン様は他の女性と踊らないのですね? 私のことは気にせず、踊っていただいても構わないのですよ」
「どうしても必要な場合は踊りますが、基本はアリッサの側にいますよ。当たり前のことです。アリッサは私の大事な女性なのだから」
「舞踏会の際、サミー卿は舞踏会の時間の半分を他の女性と踊ったり会話したりで、忙しそうでした」
「あぁ、サミー卿は女性に大人気ですからね。ほら、今も、夫人を放っておいて他の女性に夢中です。私は他の女性の機嫌を取るよりも、大切な女性の側にいることのほうが重要だと思っていますから、彼の行動は理解できませんね。サミー卿は、どんな女性よりも自分自身が一番好きなのでしょう」
アリッサはラインの言葉に、共感できる部分があることに気付いた。確かに、サミー卿は自分が大好きだったと思う。彼はいつも馬車に備え付けられた鏡で自分の姿を確認していたものだ――アリッサは懐かしくその姿を思い出した。
しかし、その瞬間、これまでなら胸がチクリと痛んだはずなのに、今は全く何も感じないことに気づく。以前なら恋しさや悲しさが胸に残っていたのに、今はもう何も感じなくなっていた。
「ライン様といると、安心できます。とても大事にしてくださいますから」
「ごく普通のことだと思いますよ。もう一曲、踊りましょうか? アリッサが軽やかに踊る姿はとても可愛らしいですからね」
「はい、ライン様。喜んで! 私ってライン様の目には可愛らしく映っているのですね?」
「そう、とても可愛らしく見えていますし、綺麗です。私の目だけではなく、ここにいる大半の男性はアリッサを綺麗だなと思っていますよ。私にはわかります」
「そうでしょうか? 私はダンスにもあまり誘われたことがないのですよ。でも、ライン様に綺麗で可愛いと思っていただけて嬉しいです」
「それは、アリッサ嬢が非常に賢く、優秀だという評判に加え、近寄りがたいほどの品格を持っているからでしょう。だからこそ、気軽に声をかけにくいのです。多くの男性にとって、あなたは『高嶺の花』なのですよ。ギャロウェイ伯爵家は家格も高く、国内外に広がる貿易ネットワークを持っている。そのため、家柄や頭脳、経済力に自信がない者には、自分が到底相手にされないと思い込んでしまうのでしょう」
ラインの意見にアリッサはコテンと首を傾げたのだった。
ギャロウェイ伯爵夫妻とニッキーが驚きに目を白黒させて戸惑う様子に、アリッサとプレシャスは思わず微笑んだ。ラインは屈託のない笑顔で、遠慮なく率直に自分の考えを述べる。その姿を見たアリッサは、ラインが頼もしい存在であると感じ、次第に好意を抱き始めた。
「ライン卿。庭園をご案内しますわね。庭園とはいっても、ギャロウェイ伯爵家では花を植えませんから、あまり楽しくはないかもしれませんが」
アリッサはラインを庭園へと連れだそうとする。ギャロウェイ伯爵はラインから言われた言葉にどう返していいのか悩んでいたので、この場の雰囲気を変えるためにも、アリッサの提案を後押しすることにした。
「アリッサ、ぜひ、そうしなさい。ギャロウェイ家の庭園は人工的な秩序と美学を追求した庭園でしてね。無駄なものは一切ありません」
ギャロウェイ伯爵は、表向きはにこやかに微笑んでいたが、内心ではラインに対して苦々しく思っていた。「優秀な医者を紹介しましょう」という彼の発言は、失礼極まりないものであり、本来ならば怒って当然の場面だ。しかし、同時に娘のアリッサを「綺麗で清楚で美しくて最高の女性」と褒めてくれたことには、感謝すべき点がある。さらに、朗らかで悪意のまったく感じられない笑顔でその言葉が告げられたため、ここで怒ってしまえば、かえって自分が子供じみた愚か者と見なされかねないのだ。
アリッサとラインはギャロウェイ伯爵家の庭園を並んで歩き始めた。まず、アリッサはニッキーの発言を謝罪することにした。
「お兄様の無礼な発言を許してくださいませ。私の家族は典型的な貴族なのですわ。ギャロウェイ伯爵家の繁栄しか考えていないのです」
「私は気にしていませんよ。結婚するのはアリッサ嬢とであって、ニッキー卿とではありませんからね。ギャロウェイ伯爵家の人々の間違った意見を鵜呑みにしてはいけませんよ。ウィルコックス伯爵夫妻は平気で人を裏切り簡単に嘘をつける邪悪な性格なのです。悪いのはあの二人で、アリッサ嬢にはなんの落ち度もありません。女性としての魅力だってアリッサ嬢のほうがずっと勝っていますからね」
「慰めてくださって、ありがとうございます。でも、お父様たちは、私の魅力不足だと言います。私もお兄様のような金髪碧眼で華やかな容姿だったらと、何度も思ってしまいます」
「金髪碧眼? 髪や瞳の色なんてどうでもいいと、私は思いますよ。アリッサ嬢はとても綺麗だし、清楚で凜とした美しさがある。ギャロウェイ伯爵家の人たちは見る目がないのです。私にはアリッサ嬢が素晴らしい女性だとわかっています」
アリッサは救われた気がした。頭の良さや努力家だという評価は家族も認めてくれていたけれど、容姿のことは褒めてもらった覚えはない。むしろ華やかさや愛らしさに欠けていると、ずっと言われてきたのだ。サミーにも容姿を褒められたことはなかった。
「褒めすぎだと思いますけれど、嬉しいです。ライン卿はとても優しいですね」
「思ったままを申し上げただけです。ところで、わたしのことは、正式な敬称なしに呼んでください。これから、いろいろな場所へ一緒に行きましょう。今から、楽しみだ」
「はい、ではライン様とお呼びしますね。私のことは、呼び捨てで構いません。ライン様といると、自分に自信が持てそうですわ」
「それは良かった。自信を持っていいですよ。それだけの価値がアリッサにはあるのだから」
ラインの言葉が、いつまでも、アリッサの耳に残った。
(私には価値がある。私には魅力がある。自信を持っていいのね?)
アリッサはとてもいい気分だった。ラインの瞳は真っ直ぐで、その口から紡ぎ出される言葉に嘘はない。ラインは思ったままを素直に口にしている。
(信頼できる方だと思うわ。ライン様とお付き合いすることになって本当に良かった)
ギャロウェイ伯爵家のタウンハウスの庭園はそれほど広い敷地ではない。花々の彩りがない代わりに、緻密に手入れをされた木々が芸術的な形に刈り込まれ、整然と配置されていた。花の咲き乱れる自然の美しさを避け、あくまで人工的な秩序と美学を追求した庭園だ。中央には優雅な噴水が設置され、水の流れが静かに響き、庭全体に洗練された雰囲気を漂わせている。無駄なものが一切ない計算しつくされた庭であった。
「私は森のような自然な緑にあふれている場所が好きですが、お父様たちはこのような人工的な庭園がいいと言います。あまりにも形が作られた木ばかりだし、整然と配置されすぎていて、私は苦手なのですけれどね。花もないですし・・・・・・」
「だったら、ワイマーク伯爵領は四方を森に囲まれていますから、絶対に気に入ると思います。それに、ワイマーク伯爵家のマナーハウスやタウンハウスの庭園は花と薬草であふれていますよ。ワイマーク伯爵家は薬草を研究する家柄ですからね。良かったら、今度ご招待しますよ」
「まぁ、素敵。とても、楽しみです。ご自分で薬草も育てるのですか? すごいです」
「趣味が仕事になっているようなものです。緑は人間に大きな幸せをもたらしてくれると思うのですよ。ワイマーク伯爵家は森の良さをそのままに、薬草を無理なく育てていますから、そこに住む小動物たちも共存しあえる環境です」
「小動物? ウサギはいますか? 子供の頃に飼いたかった動物です」
アリッサはラインとの会話が楽しくて、話題が尽きないと思った。
次の週、アリッサは有名な歌劇場で行われる特別公演に誘われた。この歌劇場は美しい石造りの建物に囲まれ中庭には噴水があり、色とりどりの花が咲き乱れていた。上流階級の人々が集まる華やかな場所として知られている。
歌劇を楽しんだ後に、歌劇場の外に出たアリッサたちを待っていたのは、予期せぬ小雨だった。馬車が停めてある距離まではほんの少しだったけれど、ラインは一瞬のためらいもなく、自分の肩にかけていた豪華なマントをはずし、アリッサにそっとかけた。
「傘もありますから、大丈夫ですわ。こんな高価なマントを貸していただく必要はないですのに」
「大事なアリッサを雨にさらしたくないですからね。傘をさしていても、風で小雨が身体に降りかかります。風邪などひいたら大変だ」
ラインはアリッサの肩をしっかりと抱き寄せ、マントで包みながら、濡れないように自分の傘をアリッサの方へと傾けて歩いた。自分よりもアリッサのほうが大事だと言わんばかりに。
(優しい・・・・・・ライン様はとっても優しいわ)
これがサミーだったら、各自別々の傘を無言でさしていたはずだ。マントや上着を貸してくれたことは一度もなかった。大事にされる気分は、自分に価値があるのだと信じさせてくれる。ラインはアリッサに自信を与える男性だった。セリーナとサミーに傷つけられた気持ちが、少しづつ癒やされていくのを、アリッサは感じることができた。
別の日に出席した王家主催の舞踏会でも、ラインのエスコートは素晴らしかった。舞踏会でラインが他の女性たちと挨拶を交わす場面では丁寧に対応しつつも、すぐにアリッサの方へと視線が戻ってきたし、アリッサを独りぼっちで放っておくことなど一度もなかった。
ダンスの時間になると、誰よりも早くアリッサに手を差し出し、優雅にリードして彼女を楽しませた。ラインがアリッサを見つめる目には特別な優しさと愛情が溢れており、他の女性たちには見せない一面をアリッサにだけ向けていることがはっきりとわかる。アリッサは常に、大事にされ守られていると感じることができた。
「ライン様は他の女性と踊らないのですね? 私のことは気にせず、踊っていただいても構わないのですよ」
「どうしても必要な場合は踊りますが、基本はアリッサの側にいますよ。当たり前のことです。アリッサは私の大事な女性なのだから」
「舞踏会の際、サミー卿は舞踏会の時間の半分を他の女性と踊ったり会話したりで、忙しそうでした」
「あぁ、サミー卿は女性に大人気ですからね。ほら、今も、夫人を放っておいて他の女性に夢中です。私は他の女性の機嫌を取るよりも、大切な女性の側にいることのほうが重要だと思っていますから、彼の行動は理解できませんね。サミー卿は、どんな女性よりも自分自身が一番好きなのでしょう」
アリッサはラインの言葉に、共感できる部分があることに気付いた。確かに、サミー卿は自分が大好きだったと思う。彼はいつも馬車に備え付けられた鏡で自分の姿を確認していたものだ――アリッサは懐かしくその姿を思い出した。
しかし、その瞬間、これまでなら胸がチクリと痛んだはずなのに、今は全く何も感じないことに気づく。以前なら恋しさや悲しさが胸に残っていたのに、今はもう何も感じなくなっていた。
「ライン様といると、安心できます。とても大事にしてくださいますから」
「ごく普通のことだと思いますよ。もう一曲、踊りましょうか? アリッサが軽やかに踊る姿はとても可愛らしいですからね」
「はい、ライン様。喜んで! 私ってライン様の目には可愛らしく映っているのですね?」
「そう、とても可愛らしく見えていますし、綺麗です。私の目だけではなく、ここにいる大半の男性はアリッサを綺麗だなと思っていますよ。私にはわかります」
「そうでしょうか? 私はダンスにもあまり誘われたことがないのですよ。でも、ライン様に綺麗で可愛いと思っていただけて嬉しいです」
「それは、アリッサ嬢が非常に賢く、優秀だという評判に加え、近寄りがたいほどの品格を持っているからでしょう。だからこそ、気軽に声をかけにくいのです。多くの男性にとって、あなたは『高嶺の花』なのですよ。ギャロウェイ伯爵家は家格も高く、国内外に広がる貿易ネットワークを持っている。そのため、家柄や頭脳、経済力に自信がない者には、自分が到底相手にされないと思い込んでしまうのでしょう」
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