（完）美貌の王に恋するお姫様（前７話）

7 タキス王のプロポーズ （アイヤナ視点）

私は、悲しい気分で海を見つめていた。失恋って、何日で忘れられるのかわからないけれど、10日間ぐらいじゃぁ忘れられないみたいだわ。

でも、そうね、最初の3日間がすごく辛かったけれど、だんだんと気持ちは落ち着いてきた。だって、いくら考えても、好きな男性は私のものにはならない。

「諦めよう・・・私は両親の決めた相手に嫁いで、ときめくような恋愛とは無縁な世界で生きることにするわ」

そう呟きながら、王宮に戻ろうと立ち上げりかけた時、逞しく引き締まった腕が私を後ろから抱きしめた。

指にはオタリス帝国の紋章の指輪が輝いている。この腕は、泣きたくなるほど恋しい男性のものだ。

「貴女の母上が決めた相手は俺だよ。ときめくような恋愛とは無縁かもしれないが、美味しい料理を一緒に食べて、いつも穏やかに心から微笑んでいられるようにしてあげるよ」

タキス王が、深みのある声で耳元で、そっと囁いた。あぁ、これこそが、ときめくような恋愛だわ！

私は、愛する男性を手に入れた。彼が、庭師に紛れ込んでいてくれて本当に良かった。



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おまけ


「ねぇ、おかぁちゃま！　なぜ、庭師や執事をじっと見ちぇいるのぉ？」

「うふふ。もしかしたら、秘密の王子様が紛れ込んでいるかもしれないでしょう？」

オタリス王国の庭園ではアイヤナ王妃が、タキス王に寄りかかり、新緑からの木漏れ日を浴びて寛いでいた。

これ以降、王子様達のあいだでは、求婚先の王女様の宮殿で庭師を数日するのが、流行ったらしいです。

ちなみに、愛妾達は、全て降嫁されたそうです。



完