(完結)私の婚約者はあなたではありません(全5話)

青空一夏

文字の大きさ
4 / 5

4

「ゴルカ兄上、サパテロ伯爵家を継ぐのはあなたではありません。今まで当主になる為の勉強をサボっていたのを忘れたのですか?」
 エルピディオ様が冷笑していた。

「そうですよ。父上はいつもゴルカ兄上が領地経営の説明中に何度も居眠りをすると愚痴っていらっしゃいました。跡継ぎとして努力もしてこなかったゴルカ兄上がサパテロ伯爵になることはありません」
 とラフィタ様。

「じゃぁ、誰が継ぐのだよ? この国では長子が継ぐのが慣習だろう?」

「それは慣習ではあるかもしれませんが法律ではありません。サパテロ伯爵家は次男のわたしが継ぎます。父上からそう命じられ、もう1年も前から領地経営を勉強しております」

「へ? そ、そんなぁー。嘘だろう?」

  学園のカフェテリアで、このような会話をするのはいかがなものかと思うけれど、まだゴルカ様の口は閉じないわ。跡継ぎには相応しくない、というサパテロ伯爵の判断は間違っていないと思う。

「じゃぁ、両家が安泰って話は? わたしは数日前に父上とアウローラ侯爵閣下の執務室での会話をたまたま聞いてしまったんだ」

「きっと提携事業のことだと思います。そのことならわたしも父上から直接お聞きしていますからね」

 エルピディオ様はパクパクとお弁当を平らげて、さっさと2年生の教室へと戻って行った。とても効率的な考えの持ち主みたいで、ランチの食事時間は20分までと決めているのですって。

(慌ただしいわね。あの方が婚約者でなくて良かったわ。食事はゆっくり楽しんで頂きたいものよね)

「でも本当に提携事業の話だけなのかな? ところで、アウローラ侯爵家は長男のエリセオ様が継ぐのですよね?」
 
 まだなにかを諦めきれないゴルカ様は、私にもまだしつこく聞いてくる。
 
「いいえ、お兄様はムンギア公爵家に婿入りが決まったばかりですのよ。私がアウローラ侯爵家を継ぎます」
 
 面倒くさいけれど、私はゴルカ様の間違いを訂正して差し上げた。

「あぁ、だったら納得です。プリシラ様、お料理の件は手作りでなくても我慢して差し上げます。次期当主なら領地経営も勉強しなければならないですからね。でもアウローラ侯爵家のコックには、わたしの好き嫌いをちゃんと伝えておいてくださいね。それから、やはりこうして毎日お弁当を持ってくるべきです。倹約は美徳ですからね。それにわたしに嫌われたら困るでしょう?」

「なぜ、うちのコックにゴルカ様の好き嫌いを教えなければならないのですか?」
 私がゴルカ様に尋ねる。

「鈍いなぁ。わたしがプリシラ様の婿になるからですよ。これで辻褄が合います。両家は安泰で皆が幸せになります。ところで、このお弁当に入っている魚をそちらの肉と取り替えてください」

「きゃ、ちょっと。私のお肉!」

「肉ぐらいで卑しいですよ」
 私のお肉をさっと横からかすめとったゴルカ様は、かじり終わった魚の皮をポイッと私のお弁当の中に放り投げた。

(信じられないわ。なんて男なの!)

「プリシラ様、わたしのお弁当からお好きな物を取ってください」

 ラフィタ様がまだ食べていないお肉を指して私に微笑んだ。

「ありがとう」
 もちろんラフィタ様のお肉を奪うなんて、はしたないことはしないけれどそのような心遣いは嬉しい。

「ラフィタ! わたしの婚約者に慣れ慣れしいぞ! 三男の厄介者のくせに」

 またもやこの迷惑男が口を挟んできて、鬱陶しいったらこのうえないのよ。

「あなたは私の婚約者ではありません! 勘違いもいい加減にしてくださらない!」

「そうですとも。プリシラ様の婚約者はこのわたしです」

 そうおっしゃったのはラフィタ様だった。

「え? そうなのですか? お父様からなにも聞いていませんわよ?」

「わたしも父上に先日、言われたばかりです。それから兄上の婚約者も決まったそうですよ。それは・・・・・・」

感想 26

あなたにおすすめの小説

あなたのことを忘れない日はなかった。

仏白目
恋愛
ノウス子爵家には2人の娘がいる しっかり者の20歳の長女サエラが入婿をとり子爵家を継いだ、 相手はトーリー伯爵家の三男、ウィルテル20歳 学園では同級生だつた とはいえ恋愛結婚ではなく、立派な政略結婚お互いに恋心はまだ存在していないが、お互いに夫婦として仲良くやって行けると思っていた。 結婚するまでは・・・ ノウス子爵家で一緒に生活する様になると ウィルテルはサエラの妹のリリアンに気があるようで・・・ *作者ご都合主義の世界観でのフィクションでございます。

あなたに何されたって驚かない

こもろう
恋愛
相手の方が爵位が下で、幼馴染で、気心が知れている。 そりゃあ、愛のない結婚相手には申し分ないわよね。 そんな訳で、私ことサラ・リーンシー男爵令嬢はブレンダン・カモローノ伯爵子息の婚約者になった。

婚約者を寝取った妹に……

tartan321
恋愛
タイトル通りです。復讐劇です。明日完結します。

刺繍妻

拓海のり
恋愛
男爵令嬢メアリーは魔力も無くて、十五歳で寄り親の侯爵家に侍女見習いとして奉公に上がった。二十歳まで務めた後、同じ寄り子の子爵家に嫁に行ったが。九千字ぐらいのお話です。

王太子の愚行

よーこ
恋愛
学園に入学してきたばかりの男爵令嬢がいる。 彼女は何人もの高位貴族子息たちを誑かし、手玉にとっているという。 婚約者を男爵令嬢に奪われた伯爵令嬢から相談を受けた公爵令嬢アリアンヌは、このまま放ってはおけないと自分の婚約者である王太子に男爵令嬢のことを相談することにした。 さて、男爵令嬢をどうするか。 王太子の判断は?

あなたの幸せを祈ってる

あんど もあ
ファンタジー
ルイーゼは、双子の妹ローゼリアが病弱に生まれたために、「お前は丈夫だから」と15年間あらゆる事を我慢させられて来た。……のだが、本人は我慢させられていると言う自覚が全く無い。とうとう我慢のしすぎで命の危機となってしまい、意図せぬざまぁを招くのだった。 ドアマットだと自覚してないドアマット令嬢のお話。

お姉さまは最愛の人と結ばれない。

りつ
恋愛
 ――なぜならわたしが奪うから。  正妻を追い出して伯爵家の後妻になったのがクロエの母である。愛人の娘という立場で生まれてきた自分。伯爵家の他の兄弟たちに疎まれ、毎日泣いていたクロエに手を差し伸べたのが姉のエリーヌである。彼女だけは他の人間と違ってクロエに優しくしてくれる。だからクロエは姉のために必死にいい子になろうと努力した。姉に婚約者ができた時も、心から上手くいくよう願った。けれど彼はクロエのことが好きだと言い出して――

【完結済み】妹の婚約者に、恋をした

鈴蘭
恋愛
妹を溺愛する母親と、仕事ばかりしている父親。 刺繍やレース編みが好きなマーガレットは、両親にプレゼントしようとするが、何時も妹に横取りされてしまう。 可愛がって貰えず、愛情に飢えていたマーガレットは、気遣ってくれた妹の婚約者に恋をしてしまった。 無事完結しました。