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「ゴルカ兄上、サパテロ伯爵家を継ぐのはあなたではありません。今まで当主になる為の勉強をサボっていたのを忘れたのですか?」
エルピディオ様が冷笑していた。
「そうですよ。父上はいつもゴルカ兄上が領地経営の説明中に何度も居眠りをすると愚痴っていらっしゃいました。跡継ぎとして努力もしてこなかったゴルカ兄上がサパテロ伯爵になることはありません」
とラフィタ様。
「じゃぁ、誰が継ぐのだよ? この国では長子が継ぐのが慣習だろう?」
「それは慣習ではあるかもしれませんが法律ではありません。サパテロ伯爵家は次男のわたしが継ぎます。父上からそう命じられ、もう1年も前から領地経営を勉強しております」
「へ? そ、そんなぁー。嘘だろう?」
学園のカフェテリアで、このような会話をするのはいかがなものかと思うけれど、まだゴルカ様の口は閉じないわ。跡継ぎには相応しくない、というサパテロ伯爵の判断は間違っていないと思う。
「じゃぁ、両家が安泰って話は? わたしは数日前に父上とアウローラ侯爵閣下の執務室での会話をたまたま聞いてしまったんだ」
「きっと提携事業のことだと思います。そのことならわたしも父上から直接お聞きしていますからね」
エルピディオ様はパクパクとお弁当を平らげて、さっさと2年生の教室へと戻って行った。とても効率的な考えの持ち主みたいで、ランチの食事時間は20分までと決めているのですって。
(慌ただしいわね。あの方が婚約者でなくて良かったわ。食事はゆっくり楽しんで頂きたいものよね)
「でも本当に提携事業の話だけなのかな? ところで、アウローラ侯爵家は長男のエリセオ様が継ぐのですよね?」
まだなにかを諦めきれないゴルカ様は、私にもまだしつこく聞いてくる。
「いいえ、お兄様はムンギア公爵家に婿入りが決まったばかりですのよ。私がアウローラ侯爵家を継ぎます」
面倒くさいけれど、私はゴルカ様の間違いを訂正して差し上げた。
「あぁ、だったら納得です。プリシラ様、お料理の件は手作りでなくても我慢して差し上げます。次期当主なら領地経営も勉強しなければならないですからね。でもアウローラ侯爵家のコックには、わたしの好き嫌いをちゃんと伝えておいてくださいね。それから、やはりこうして毎日お弁当を持ってくるべきです。倹約は美徳ですからね。それにわたしに嫌われたら困るでしょう?」
「なぜ、うちのコックにゴルカ様の好き嫌いを教えなければならないのですか?」
私がゴルカ様に尋ねる。
「鈍いなぁ。わたしがプリシラ様の婿になるからですよ。これで辻褄が合います。両家は安泰で皆が幸せになります。ところで、このお弁当に入っている魚をそちらの肉と取り替えてください」
「きゃ、ちょっと。私のお肉!」
「肉ぐらいで卑しいですよ」
私のお肉をさっと横からかすめとったゴルカ様は、かじり終わった魚の皮をポイッと私のお弁当の中に放り投げた。
(信じられないわ。なんて男なの!)
「プリシラ様、わたしのお弁当からお好きな物を取ってください」
ラフィタ様がまだ食べていないお肉を指して私に微笑んだ。
「ありがとう」
もちろんラフィタ様のお肉を奪うなんて、はしたないことはしないけれどそのような心遣いは嬉しい。
「ラフィタ! わたしの婚約者に慣れ慣れしいぞ! 三男の厄介者のくせに」
またもやこの迷惑男が口を挟んできて、鬱陶しいったらこのうえないのよ。
「あなたは私の婚約者ではありません! 勘違いもいい加減にしてくださらない!」
「そうですとも。プリシラ様の婚約者はこのわたしです」
そうおっしゃったのはラフィタ様だった。
「え? そうなのですか? お父様からなにも聞いていませんわよ?」
「わたしも父上に先日、言われたばかりです。それから兄上の婚約者も決まったそうですよ。それは・・・・・・」
エルピディオ様が冷笑していた。
「そうですよ。父上はいつもゴルカ兄上が領地経営の説明中に何度も居眠りをすると愚痴っていらっしゃいました。跡継ぎとして努力もしてこなかったゴルカ兄上がサパテロ伯爵になることはありません」
とラフィタ様。
「じゃぁ、誰が継ぐのだよ? この国では長子が継ぐのが慣習だろう?」
「それは慣習ではあるかもしれませんが法律ではありません。サパテロ伯爵家は次男のわたしが継ぎます。父上からそう命じられ、もう1年も前から領地経営を勉強しております」
「へ? そ、そんなぁー。嘘だろう?」
学園のカフェテリアで、このような会話をするのはいかがなものかと思うけれど、まだゴルカ様の口は閉じないわ。跡継ぎには相応しくない、というサパテロ伯爵の判断は間違っていないと思う。
「じゃぁ、両家が安泰って話は? わたしは数日前に父上とアウローラ侯爵閣下の執務室での会話をたまたま聞いてしまったんだ」
「きっと提携事業のことだと思います。そのことならわたしも父上から直接お聞きしていますからね」
エルピディオ様はパクパクとお弁当を平らげて、さっさと2年生の教室へと戻って行った。とても効率的な考えの持ち主みたいで、ランチの食事時間は20分までと決めているのですって。
(慌ただしいわね。あの方が婚約者でなくて良かったわ。食事はゆっくり楽しんで頂きたいものよね)
「でも本当に提携事業の話だけなのかな? ところで、アウローラ侯爵家は長男のエリセオ様が継ぐのですよね?」
まだなにかを諦めきれないゴルカ様は、私にもまだしつこく聞いてくる。
「いいえ、お兄様はムンギア公爵家に婿入りが決まったばかりですのよ。私がアウローラ侯爵家を継ぎます」
面倒くさいけれど、私はゴルカ様の間違いを訂正して差し上げた。
「あぁ、だったら納得です。プリシラ様、お料理の件は手作りでなくても我慢して差し上げます。次期当主なら領地経営も勉強しなければならないですからね。でもアウローラ侯爵家のコックには、わたしの好き嫌いをちゃんと伝えておいてくださいね。それから、やはりこうして毎日お弁当を持ってくるべきです。倹約は美徳ですからね。それにわたしに嫌われたら困るでしょう?」
「なぜ、うちのコックにゴルカ様の好き嫌いを教えなければならないのですか?」
私がゴルカ様に尋ねる。
「鈍いなぁ。わたしがプリシラ様の婿になるからですよ。これで辻褄が合います。両家は安泰で皆が幸せになります。ところで、このお弁当に入っている魚をそちらの肉と取り替えてください」
「きゃ、ちょっと。私のお肉!」
「肉ぐらいで卑しいですよ」
私のお肉をさっと横からかすめとったゴルカ様は、かじり終わった魚の皮をポイッと私のお弁当の中に放り投げた。
(信じられないわ。なんて男なの!)
「プリシラ様、わたしのお弁当からお好きな物を取ってください」
ラフィタ様がまだ食べていないお肉を指して私に微笑んだ。
「ありがとう」
もちろんラフィタ様のお肉を奪うなんて、はしたないことはしないけれどそのような心遣いは嬉しい。
「ラフィタ! わたしの婚約者に慣れ慣れしいぞ! 三男の厄介者のくせに」
またもやこの迷惑男が口を挟んできて、鬱陶しいったらこのうえないのよ。
「あなたは私の婚約者ではありません! 勘違いもいい加減にしてくださらない!」
「そうですとも。プリシラ様の婚約者はこのわたしです」
そうおっしゃったのはラフィタ様だった。
「え? そうなのですか? お父様からなにも聞いていませんわよ?」
「わたしも父上に先日、言われたばかりです。それから兄上の婚約者も決まったそうですよ。それは・・・・・・」
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