12 / 19
高飛車なルアンド帝国の使者&悪知恵の働くズルイーヨ王子
しおりを挟むトリスタン王国の国王の前にはルアンド帝国の使者が横柄な態度でソファに座っていた。
ルアンド帝国がいかにトリスタン王国より国力が上かがわかる光景である。
「ルアンド帝国の使者殿よ、そちらの姫を誰に輿入れさせたいと言うのですか?」
「フェルナンド公爵家の当主ロベルト様です」
「残念だがロベルト卿はエリーゼ嬢と婚約したばかりだ」
「え?エリーゼ嬢は妹ではないのですか?まぁ、そんなことは婚約破棄すればよいでしょう。エリーゼ嬢は、ルアンド帝国のマリオ王が正妃にと望まれております。
これにより両国はかつてないほど繁栄することでしょう。ルアンド帝国の申し入れをよもや、断るなどあり得ませんでしょう?」
トリスタン王国の王はすっかり顔を青ざめさせ、薄い唇を、アワアワと震わせた。
さて、困ったことになった。
ルアンド帝国は広大な領土によく訓練された最強の軍隊をもつと言われる大国だ。
逆らうことはできん。
だが、フェルナンド公爵家のロベルトも恐ろしい。
口の堅い公爵家なので、その詳細までは漏れてはこないが、短期間で莫大な資産を築いたのは魔法の力があったからだと言われている。
ロベルトを怒らせることは王家の基盤も揺るがせかねない。
前にルアンド帝国のマリオ王、後ろに天才魔法使い。
一方にいい顔をすれば、他方に潰される。
どうしたらよいか?
王は自嘲気味に虚ろな笑いを浮かべた。
トリスタン王国の今世代の王家にまともに魔法を使える者は一人もいなかったし、剣や武道に秀でた者もいないのだった。
◆◆☆
「父上!それならば、マリオ王と天才魔法使いを正面から戦わせるように仕向ければいいのです。どちらも強いが、真っ向から戦えば両者も無傷ではすまないでしょう。
うまくいけば、フェルナンド公爵家の莫大な資産も利権も、ルアンド帝国の広大な領土も全て手中の納められるかも‥」
第一王子ズルイーヨが頬の歪んだ笑みを浮かべていた。
「おぉ、妙案よのぅー」
「そのためには、多少汚い方法も致し方ないでしょう。おいそこの衛兵!妹を東の棟に幽閉しろ!」
「む?ソフィアをどうしようというのだ?」
「ソフィアはルアンド帝国に誘拐されたことにしましょう。エリーゼ嬢にはそのように伝えます。エリーゼとソフィアは仲がいい。僕にいい考えがあります」
ロベルトの弱点は溺愛するエリーゼだ。マリオ王に奪われたのなら、さぁ、どーする?
第一王子は、あのロベルトの癪に触るぐらい冷静な完璧な美貌が心痛や苦痛でゆがむことを想像してたまらなく愉快な気分になった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
151
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる