19 / 19
愛よ、永遠に!
しおりを挟む「諸外国の王族方から結婚式に参列したいと書状が届いております」
執事のアンダーソンがパンパンに膨らんだ白い大袋を担いで持ってきた。
「こんなに、王族っているのかしら?」
エリーゼが首をかしげている。
「まるでサンタが担いでいるプレゼントがぎっしり詰まった大袋みたいだな」
ロベルトは苦笑しながら、前世での赤い服を着たお馴染みのサンタクロースを思い出していた。
「何ですか?そのサンタって?」
エリーゼは書状を丁寧に開いて、読みながら尋ねる。
サンタクロース、クリスマス、それはロベルトがいた前世では当たり前だったけれど、この世界にはないものだった。
その日は誰も彼もがウキウキしてステップを踏みたくなる日だ。
子供達はプレゼントをもらってケーキを食べ、恋人達も肩を抱き合いながら、華やかに飾られたツリーを眺める。
イルミネーションは町を赤や青、金、銀と彩り、クリスマスソングが夢心地に気分を高揚させる。
「ねぇ、エリーゼ、ちょっとこっちに来て」
ロベルトはエリーゼをソファに引き寄せると、たくましい腕で抱き上げて膝の上にのせた。
唇を近づけ、ささやくと、エリーゼはにっこりした。
「とても素敵なお考えですわ!」
二人はそれから見つめ合って、唇を何度も重ね合わせる。
アンヌは、仲睦まじい二人を見て、満足そうに頷いて気の利かないアンダーソンをズルズルと引きずりながら部屋を出ていった。
◆◆☆
エリーゼとロベルトの結婚式当日。
トリスタン王国のすべての教会と、参列を希望した諸外国のすべての教会が、そこに住む子供達にプレゼントを用意しケーキをふるまった。
大人達にも料理と酒がふるまわれ、素晴らしい音楽を奏でる無料の音楽会がそこかしこで開かれた。
メイン通りの木々はピカピカ光る魔法の光が注がれ七色に輝く。
ロベルトが試行錯誤した魔石によるイルミネーションは、道行く人たちを幸せな気分にした。
ロベルトは、参列を希望した諸外国には、式に参加してくださるお気持ちだけ頂戴したいと返事を書いたのだった。
遠い国からトリスタン王国までの移動費用や道中の宿泊費、用意するお祝いの品など、多大な費用がエリーゼとロベルトの結婚式に参列するためだけにかかる。
王族が移動するには国力も誇示するため多くの召使いや従者を伴いパレードのように華々しく移動しなければならない。
その莫大な費用は、どうか、自国の庶民たちに料理や酒をふるまい、子供達にはプレゼントとケーキを配り、楽しい音楽を聞けるようにするために使って欲しい。
その日は祭日として、その国で一番大事な人と楽しんでもらいたい。それがフェルナンド公爵家への最上のお祝いになり、最もロベルトとエリーゼが感謝する行いであるとも。
この書状を見た王族達は、ロベルトの意をくみ取り、この日を、愛する人と過ごす日とした。
多くの民は感謝し歓喜し、フェルナンド公爵家を称えた。
◆◆☆
小さな教会でエリーゼはロベルトと誓いの言葉を交わしていた。
「未来永劫、永遠の愛を‥‥」
柔らかい陽光はエリーゼの銀髪をキラキラと輝かせ、青空ほどこまでも澄んでいて雲ひとつない。
二人だけの結婚式の誓いの口づけは、永遠に続くかと思われるほど繰り返され、甘い甘い公爵夫妻の時間が始まるのだった。
完
50
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
寵愛の花嫁は毒を愛でる~いじわる義母の陰謀を華麗にスルーして、最愛の公爵様と幸せになります~
紅葉山参
恋愛
アエナは貧しい子爵家から、国の英雄と名高いルーカス公爵の元へと嫁いだ。彼との政略結婚は、彼の底なしの優しさと、情熱的な寵愛によって、アエナにとってかけがえのない幸福となった。しかし、その幸福を妬み、毎日のように粘着質ないじめを繰り返す者が一人、それは夫の継母であるユーカ夫人である。
「たかが子爵の娘が、公爵家の奥様面など」 ユーカ様はそう言って、私に次から次へと理不尽な嫌がらせを仕掛けてくる。大切な食器を隠したり、ルーカス様に嘘の告げ口をしたり、社交界で恥をかかせようとしたり。
だが、私は決して挫けない。愛する公爵様との穏やかな日々を守るため、そして何より、彼が大切な家族と信じているユーカ様を悲しませないためにも、私はこの毒を静かに受け流すことに決めたのだ。
誰も気づかないほど巧妙に、いじめを優雅にスルーするアエナ。公爵であるあなたに心配をかけまいと、彼女は今日も微笑みを絶やさない。しかし、毒は徐々に、確実に、その濃度を増していく。ついに義母は、アエナの命に関わるような、取り返しのつかない大罪に手を染めてしまう。
愛と策略、そして運命の結末。この溺愛系ヒロインが、華麗なるスルー術で、最愛の公爵様との未来を掴み取る、痛快でロマンティックな物語の幕開けです。
【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた
22時完結
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。
私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~
あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。
「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?
ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない
魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。
そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。
ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。
イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。
ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。
いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。
離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。
「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」
予想外の溺愛が始まってしまう!
(世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!
叶えられた前世の願い
レクフル
ファンタジー
「私が貴女を愛することはない」初めて会った日にリュシアンにそう告げられたシオン。生まれる前からの婚約者であるリュシアンは、前世で支え合うようにして共に生きた人だった。しかしシオンは悪女と名高く、しかもリュシアンが憎む相手の娘として生まれ変わってしまったのだ。想う人を守る為に強くなったリュシアン。想う人を守る為に自らが代わりとなる事を望んだシオン。前世の願いは叶ったのに、思うようにいかない二人の想いはーーー
悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。
槙村まき
恋愛
スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。
それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。
挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。
そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……!
第二章以降は、11時と23時に更新予定です。
他サイトにも掲載しています。
よろしくお願いします。
25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!
魔法学園の悪役令嬢、破局の未来を知って推し変したら捨てた王子が溺愛に目覚めたようで!?
朱音ゆうひ@11/5受賞作が発売されます
恋愛
『完璧な王太子』アトレインの婚約者パメラは、自分が小説の悪役令嬢に転生していると気づく。
このままでは破滅まっしぐら。アトレインとは破局する。でも最推しは別にいる!
それは、悪役教授ネクロセフ。
顔が良くて、知性紳士で、献身的で愛情深い人物だ。
「アトレイン殿下とは円満に別れて、推し活して幸せになります!」
……のはずが。
「夢小説とは何だ?」
「殿下、私の夢小説を読まないでください!」
完璧を演じ続けてきた王太子×悪役を押し付けられた推し活令嬢。
破滅回避から始まる、魔法学園・溺愛・逆転ラブコメディ!
小説家になろうでも同時更新しています(https://ncode.syosetu.com/n5963lh/)。
悪役令嬢、記憶をなくして辺境でカフェを開きます〜お忍びで通ってくる元婚約者の王子様、私はあなたのことなど知りません〜
咲月ねむと
恋愛
王子の婚約者だった公爵令嬢セレスティーナは、断罪イベントの最中、興奮のあまり階段から転げ落ち、頭を打ってしまう。目覚めた彼女は、なんと「悪役令嬢として生きてきた数年間」の記憶をすっぽりと失い、動物を愛する心優しくおっとりした本来の性格に戻っていた。
もはや王宮に居場所はないと、自ら婚約破棄を申し出て辺境の領地へ。そこで動物たちに異常に好かれる体質を活かし、もふもふの聖獣たちが集まるカフェを開店し、穏やかな日々を送り始める。
一方、セレスティーナの豹変ぶりが気になって仕方ない元婚約者の王子・アルフレッドは、身分を隠してお忍びでカフェを訪れる。別人になったかのような彼女に戸惑いながらも、次第に本当の彼女に惹かれていくが、セレスティーナは彼のことを全く覚えておらず…?
※これはかなり人を選ぶ作品です。
感想欄にもある通り、私自身も再度読み返してみて、皆様のおっしゃる通りもう少しプロットをしっかりしてればと。
それでも大丈夫って方は、ぜひ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
/ノ\ λ__λ Ψ
/ノ\(*┏д┓*)|
⌒⌒ (∪大魔王つ
←し―J |
・・・あれ?(´・-・`)
〇
o
°
┳┳ ∩∩
┃┃(・∀・)☆ ★
┏┻┻┷━O┏┷┓┏┷┓
┃はろぉ↬┠┨★┠┨☆┃
┗◎━━◎┛┗◎┛┗◎┛
このような
昔の小説のところに
来てくれて
|∧,,,∧
| ・ω・) あ
|⊂ノ
|∧,,,∧
| ・ω・) り
|⊂ノ
|∧,,,∧
| ・ω・) が
|⊂ノ
|∧,,,∧
| ・ω・) と
|⊂ノ
|∧,,,∧
| ・ω・) ♡
|⊂ノ
今日も暑いねーー
😎
☀️ ☀️ ☀️
☀️ ☀️ ☀️
👇 ☀️☀️ 👇
☀️ ☀️
☀️ ☀️
👞 👞