(完)お姉様、婚約者を取り替えて?ーあんなガリガリの幽霊みたいな男は嫌です(全10話)

青空一夏

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8 カエラの断罪

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 一方、魔女様はケーシーに魔法をかけたことをすっかり忘れていた。魔法をかけた余波で一部の銀食器達に命が宿り、ケーシーの様子をじっと見ていたことも知らないでいた。銀食器達は夜中になると、そっと起きて会議を始めるのだった。


「魔女様もそろそろ、こちらに来てケーシー様の魔法をお解きになればいいのに」

「あの方は、気まぐれだからねぇ。魔法をかけたことも忘れているよ。ケーシー様はすっかり反省して、領地を立派におさめているのだから、あの呪いはもう不必要だよね」

「うんうん」
 銀の皿とカップとティースプーンがおしゃべりをしている。カチャカチャ、ガチャガチャ。

「あら、地震かしら? カチャカチャする音がうるさいわねぇーー。今回も失敗したわ。ケーシー様が急にお帰りにならないなんて聞いてないわよ。あのバカ娘がキャンディス様の寝室に潜り込むことも予想外だったわ……愚かな子ね……そんな幼稚な手を使うなんて」

 一人の侍女がブツブツいうのを、銀食器達は慌てて動きを止めて静かに聞いていたのだった。



ꕤ୭*姉視点




 午後になってお戻りになったケーシー様は、まっさきにまず私を抱きしめる。

「ただいま、私の留守中に変わりはなかったかい? ん? 目の下にクマがあるぞ。昨日は私が隣にいなくて寂しかった?」

「えぇ、寂しかったですわ」
 私はしっかりと抱きしめられて、つい幸せな笑みがもれたけれど、すぐに真剣な顔になった。

 私が昨夜の出来事を全てケーシー様に報告すると、ケーシー様は怒りで顔を真っ赤にしていた。

 ケーシー様と連れだって地下牢に行くと、カエラが瞳を輝かせてケーシー様をすがるように見つめた。
「ケーシー様、助けてください! 以前は私の婚約者だったでしょう? お姉様よりよほど私のほうが貴方のお役に立ちます」

「まだ、そんなことを言っているのか? なんていうか……これは本当に賢いキャンディスの実の妹なのか? 愚か者というだけでは足りない……」
 ケーシー様は頭を抱えた。

「通常なら死刑でもいいぐらいだ。宝石の窃盗罪と当主を嵌めて夫人の座におさまることをもくろみ、このキンバリー伯爵家を乗っ取ろうとした重罪人だからね。カエラの死を望むかい?」

「いいえ、命だけは助けてあげて。こんな子でも妹なんです」

「だと思ったよ。グレタ侯爵にも来てもらうしかないね。ちょっと話し合ってこの二人の処置を決めたい」

「それなら、もうすぐ着くはずです。知らせておきましたから」


 まもなくすっかり太ったコーリー様が、ふぅふぅ言いながら到着した。
「カエラとは離縁します。この女の顔も見たくない。慰謝料は少なくて構いませんから、この女自身から払わせてください。どこかで働かせて少しづつでいいんです。まっとうな人間になることがあればそれが一番いい」

「まっとうな人間に……まぁ、一番むずかしいかもしれないですねぇ……ではカエラはこちらで適切に処置しておきますよ」
 ケーシー様はため息をつきながらそうおっしゃった。

 私とケーシー様は、カエラを戒律の厳しい修道院にいれることにした。そこでは労働を科され、働いた分のお給金に相当する部分をコーリー様への慰謝料として送るようにした。

 アーサックは薬草士の腕を認められキンバリー伯爵家のお抱えの薬士になった。もともと、このアーサックの話を聞くと私に憧れているだけで、危害を加えるつもりは毛頭なかったようだ。

 私が『今はとても幸せでこの生活に満足している』と伝えると、とても良かったねと泣いていた。アーサックはいつまでも子供のようだ。彼はその後、すっかりスリムになり顔つきもすっきりしてテキパキと働くようになった。屋敷に出入りする商人の娘と結婚し、幸せになるのはもう少し後のことだ。

 今の疑問はいまだに大事な宝石がなくなることだ。高価なものではないが、ケーシー様から似合うね、と褒められたものばかりがなくなるのはおかしい。

 妹は宝石をほんの少ししか盗っていないと言っていた。だとすれば、今まで妹が盗っていたと思っていた一部はこの犯人の仕業かもしれない。

 誰なの? アーサックを誘導し、私の宝石を盗む女は? ……待って、これは本当に女なの? 

 私はケーシー様と相談してある作戦をたてた。


 食器棚の高価な銀食器がカタカタと鳴った。なにかしら? たまに銀食器達がカタカタいうことがある。あとで、綺麗に磨いてあげましょう。




ꕤ୭*



「その犯人ならそこにいるよぉ」銀皿が声をあげて、ティースプーンがうなづいた。

「キャンディス、気がついてよぉーー」

 銀のティーカップも叫んだがカタコトと音がしただけで、人間には伝わらない。

 ただ、魔女様には伝わったようだ。

「あら? なにか地上で私の魔法の余波が作用しているみたいねぇ。んーー、そういえば、あの幼い子に魔法をかけていたのをすっかり忘れていたわねぇ。そろそろ見にいこうかしらぁーー」

 魔女様は伸びをして、地上を見下ろしたのだった。






▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃

読者の方からのリクエストで、美女と野獣のポット夫人みたいなものが登場したらいいなというご意見を参考に銀食器に命を吹き込みました •ʚ• ピヨ💜
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