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プロローグ
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「姉さん、まさかその格好で行くつもり?」
「そうよ、おかしいかしら?」
私は自分の姿を鏡で確認しながら弟に尋ねた。
「おかしいに決まってるじゃないか? なんでそんなに胸が空いてるのさ」
「あら、これが今の流行よ。みんな今はこのようなドレスを着ているのよ」
「みんなはみんな。姉さん姉さんだろう? そのドレスは似合わないよ。それを脱いでこっちにしなよ」
弟は私に有無を言わさず別のドレスを差し出した。
今日は婚約者のジョージと夜会に出席する約束をしていた。とても楽しみにしていたからドレスも化粧もアクセサリーも自分なりに頑張ったつもりだったのに……弟のマックスに全否定され私はすっかりしょげ返ってしまった。
私はマックスが差し出した露出度をかなり控えたドレスに着替えた。屋敷に迎えに来たジョージは私のドレスを見てにっこりと微笑んで言ったわ。
「とても似合ってるよ」って。
私はその言葉を素直に信じて彼に微笑み返した。弟には感謝しなくちゃね。
夜会に行く途中の馬車の中でも会話は大いに弾み、私たちはそっと手を重ねあった。
それから今夜の夜会の会場に着くと、私は友人達とおしゃべりをしシャンパンを飲んで幸せな気分に浸る。
けれどバルコニーから聞こえてくるひそやかな声に私の幸せな気分は一気にしぼんだ。
「なんであんな冴えない子と婚約をしたの?今日のあのドレスを見たでしょう? あんなに流行おくれのドレスなんて今どき誰も着ていないわ」
「だってあいつの家は金持ちだからさぁ。持参金をたっぷり持って僕のところに嫁いでくるんだぜ」
私はバルコニーの奥をそっと覗き込み、そこに私の婚約者の姿を見る。隣にいるのは私の親友だった。そのうち彼らの顔は次第に近づき唇を重ねあわせた。
ーーうそでしょう……これは夢よ。きっと夢だわ。
私は彼らに気づかれないようにそっとその場を去り夜会の会場を後にした。
屋敷に戻ると弟が不思議そうに眉をつり上げた。
「姉さん、やけに早く帰って来たね」
「……」
「何かあったのかい?」
「何もないわよ。ただ私の婚約者がいなくなっただけよ」
「それはめでたいね! 心から祝福するよ!」
弟は私を抱きしめて嬉しそうに笑った。
私は怒りのあまり弟の頰を叩こうと右手を挙げ、その手を掴まれて引き寄せられた。そしてゆっくりと弟のキスが私の額の上に落とされるのだった。
「そうよ、おかしいかしら?」
私は自分の姿を鏡で確認しながら弟に尋ねた。
「おかしいに決まってるじゃないか? なんでそんなに胸が空いてるのさ」
「あら、これが今の流行よ。みんな今はこのようなドレスを着ているのよ」
「みんなはみんな。姉さん姉さんだろう? そのドレスは似合わないよ。それを脱いでこっちにしなよ」
弟は私に有無を言わさず別のドレスを差し出した。
今日は婚約者のジョージと夜会に出席する約束をしていた。とても楽しみにしていたからドレスも化粧もアクセサリーも自分なりに頑張ったつもりだったのに……弟のマックスに全否定され私はすっかりしょげ返ってしまった。
私はマックスが差し出した露出度をかなり控えたドレスに着替えた。屋敷に迎えに来たジョージは私のドレスを見てにっこりと微笑んで言ったわ。
「とても似合ってるよ」って。
私はその言葉を素直に信じて彼に微笑み返した。弟には感謝しなくちゃね。
夜会に行く途中の馬車の中でも会話は大いに弾み、私たちはそっと手を重ねあった。
それから今夜の夜会の会場に着くと、私は友人達とおしゃべりをしシャンパンを飲んで幸せな気分に浸る。
けれどバルコニーから聞こえてくるひそやかな声に私の幸せな気分は一気にしぼんだ。
「なんであんな冴えない子と婚約をしたの?今日のあのドレスを見たでしょう? あんなに流行おくれのドレスなんて今どき誰も着ていないわ」
「だってあいつの家は金持ちだからさぁ。持参金をたっぷり持って僕のところに嫁いでくるんだぜ」
私はバルコニーの奥をそっと覗き込み、そこに私の婚約者の姿を見る。隣にいるのは私の親友だった。そのうち彼らの顔は次第に近づき唇を重ねあわせた。
ーーうそでしょう……これは夢よ。きっと夢だわ。
私は彼らに気づかれないようにそっとその場を去り夜会の会場を後にした。
屋敷に戻ると弟が不思議そうに眉をつり上げた。
「姉さん、やけに早く帰って来たね」
「……」
「何かあったのかい?」
「何もないわよ。ただ私の婚約者がいなくなっただけよ」
「それはめでたいね! 心から祝福するよ!」
弟は私を抱きしめて嬉しそうに笑った。
私は怒りのあまり弟の頰を叩こうと右手を挙げ、その手を掴まれて引き寄せられた。そしてゆっくりと弟のキスが私の額の上に落とされるのだった。
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